装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―

EPIC

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第4章:「終局への序曲」

4-8:「異には異を 再び」

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 遮蔽を飛び出した会生は、王城城門へと伸びる街路上を押し上げ駆ける。
 向こうよりは矢撃や魔法攻撃などが容赦なく飛び来て掠めるが、会生は怯み臆することなく。応射牽制に10.9mm拳銃を撃ち放ちながら堂々駆け進む。

「ぬッ」

 その会生が、向こうに鎮座する重陸魔竜獣騎――明かせばまた「邪法」をその体に宿す、脅威たる巨大獣の、その顎がかっ開くのを見たのは瞬間。
 それが意味するは明白。
 会生はその巨大獣の顎、首の向きから軌道を即座に予測。そして直後には突っ込む勢いで、近場側方の建物に飛び込み遮蔽。

 巨大獣の顎より、三度目の闇の閃光が吐き出されたのは直後瞬間。飛び来たそれは、数秒前まで会生が居た場所を掠め飛び抜け、そしてその背後の家屋建物に直撃した。

「ッ、冗談にならんな。まだ詰める必要がある」

 先にもそれが見せたように、闇の閃光は直撃した家屋を、ごっそりと掻きこそぐように消滅させていた。
 それを背後に一度見て零した後に。会生はしかし閃光投射後の敵方のインターバルを隙と見て、さらに敵との距離を詰めるべく遮蔽を飛び出す。
 また、敵の矢撃他が飛び来る中を堂々駆け。
 そして王城城門と巨大獣を、目と鼻の先に見るまでの距離まで詰めた所で。再び近場の建造物に飛び込み、太い柱に遮蔽。
 ついでの流れといったように、10.9mm拳銃を突き出し牽制の数発を撃ち放った。

「――狙いは当たったか」

 そして、覗き巨大獣を再び観察しながら零す会生。
 向こうの巨大獣が、その背に座上する指揮官級らしき人影が見せるは、少なからずの躊躇の色。
 闇の閃光の破壊力はとてつもないものだが、それゆえに至近距離での投射は自分にも被害が及ぶ可能性があるのだろう。投射を躊躇っている様子であった。

「――会生ッ!」

 それを観察していた所へ、背後より会生を呼ぶ声が届いたのはその時。
 振り返れば、後方より街路を駆け。今の声の主である寺院を筆頭に、観測遊撃隊の隊員等が掛けて来て、周囲に急ぎ散会からカバーする姿を見せた。
 観測遊撃隊は、一人飛び出して行った会生を放っておけず。会生を追って、そして倣いここまで追い付いてきたのだ。

「ったくッ、どーしてお前さんはいっつも一人でドンドン行っちまうんだッ!」

 背後で、百甘等が装備火器で牽制射撃を始める姿を見せつつ。
 内の寺院は会生の隣に駆け込んで来て遮蔽。指揮官が一人突撃して行ってしまった事に苦言を呈する。

「目測は当たった、やはりアレ(巨大獣)は間近が閃光の死角だ――こちらの航空投射は?」

 しかし会生はそれには答えず、巨大獣はその間近近辺が死角である事実を改めて示し。それからそう尋ねる声を寺院へ向ける。

「もうすぐ来るよッ」

 それに、「まったく」といった様子を見せつつも。寺院は後方上空を振り向き視線で示しながら答える。

 建物で区切られた街路上空のに見える空。
 その一点に、徐々に降下してくる飛行体のシルエットが――こちらに向けて緩降下行動を仕掛けてくる、F-2BEの機影が見えた――


 降下進入を仕掛けて来るのは、火器管制・電子線仕様のF-2BE。
 しかし今回の作戦に在っては、そのF-2BEは少し異なる役割を担っていた。

 その主翼下のハードポイントの一つに、本来の航空自衛隊の保有装備には無い、特異な形状の誘導弾体が見える。
 それは先日に帝国帝都でも用いられた〝反特性ユニット〟の一種。
 やはり日本と異世界の接続と同時に、自衛隊の元に現れ与えられた特殊な〝力〟。

「――捉えた」

 そのコックピットの後席、火器管制員用シートでは、火器管制員が計器類の内にあるモニターに視線を落とし。そこに映る地上の光景と巨大獣の姿に、次には照準のシーカーが表示され合わさる。

「――投射ッ」

 瞬間、火器管制員は操作スティックに備わる発射ボタンを押し。
 直後――主翼下に備わる〝反特性誘導弾〟が、そのロケット推進を吹かして。F-2BEを離れて撃ち出された。


 反特性誘導弾を撃ち出し、F-2BE母機にあっては安全のため機首を上げて上空へと退避していくが。
 反特性誘導弾自体は火器管制員の遠隔操作にて、より進入効果確度を際どくして突き進む。
 弾体は凄まじい進入速度で、地上を伸びる街路に沿って降下。一瞬の後には、地上の巨大獣の目と鼻の先まで迫るが。
 しかし反特性誘導弾の目的は、巨大獣そのものへの直撃打撃ではない。
 それを証明するように、弾体は次には巨大獣の。それを中心とする城門前の帝国軍陣地の真上に飛び込み。
 宙空で炸裂した――


 炸裂は反特性ユニットの持ち体現する、特有の異質な衝撃派と衝撃音を、巨大なそれとして発現させて生んだ。
 電子的なそれとも聞こえる音声が響き。可視化された電子の波のような現象が、宙空を
 起点に放射状に、球形に広がり。巨大獣と帝国軍陣地を包み込んだ。

 正体不明の現象光景が襲来し、狼狽え慌てふためく帝国軍部隊。
 そしてその効果影響は、直後に可視化される。

 巨大獣が、邪法をその巨体に宿す脅威の存在が。
 それまで見せていた暴れ唸り猛る姿を、しかし唐突に鳴り止ませる。

 それに気づいた獣上の指揮官級らしき人物が、激を飛ばす声を巨大獣に降ろすが。
 巨大獣がそれに答える事は無く。巨大獣は直後には――グラ、とその体を傾け。
 そしてその太く巨大を片足を折って崩し、その半身を鈍い音と煙を立てて地面へと沈めた――


「――効果は、大だな」

 遮蔽する建造物の太い柱より、向こうの巨大獣がその体を崩した様子を観測し。一言を零す会生。
 今に観測できたそれこそ、また反特性ユニットの効果が成したもの。
 「邪法」を消滅へと辿らせるその効果効力は、邪法をその体に宿す巨大獣の行動、生命活動に致命的なまでの影響を与え。
 その生命力を消し去り奪い、地面へと足を折らせてみせたのだ。

 脅威は無力化された。
 ここより王城への進路を拒むものは沈み、押し進めるは難くは無い。

「押し上げるッ。向こう周辺を押さえ、王城へと踏み込む――行くぞッ」

 そして、会生は指揮下の観測遊撃隊の各員に張り上げると。遮蔽物を飛び出して全身を開始。
 観測遊撃隊各員も、それに続き押し上げを開始した。
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