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第六章
馬には乗ってみよ人には添うてみよ15
しおりを挟むイェンがそんな事を思っている頃。
魔王達はと言うと
「そもそも何故部屋で大人しくしていなかった」
「そーは言ってもずーと部屋に軟禁状態じゃあ外に出たくもなりますよ」
「な、軟禁だと!?」
口喧嘩していた。
「そちらさんは保護のつもりかも知れませんけど外部と接触出来ない、あの部屋から出れない、軟禁じゃないですか、たまに散歩ぐらいしたって罪は当たらないと思いますけど」
「罪が当たる当たらないの問題ではなくてだな、下手に外へ出ると危険だからであって、少しは状況と立場というものを」
「そう言えば、どうして俺達の場所分かったんですか?」
「おいコラ、話を聞け」
この二人、何も始めから喧嘩していた訳ではない。
あの場を離れて最初は木々のさざめきが聞こえる森の中、だまだまと歩いていたのだが、そろそろ気まずくなろうかと言う頃、まず魔王が口を開いた。
「……さっきは、突然大声をだしてすまなかった。驚かせたな」
「いや俺は全然いいんだけど」
「リーベは大丈夫そうか?」
「見ての通り」
あの状態の中、びっくりして起きてしまうこともなく、寧ろ青年の腕の中で幸せそうに寝ていたのだから図太いと言うかなんというか。
「そうか」
魔王がほっと肩を撫で下ろすのが青年へ直に伝わる。
何故なら
「あのーそろそろおろして貰っても?」
魔王に横抱きにされたままだからだ。
「怪我もしてないし歩けますよ俺」
「ダメだ」
「いやなんで?」
「お前は信用できん」
「いやいや何が?」
「前回といい今回といい、考えて見れば初日からだ。また何かあっては困る」
「そんな事ないですってば」
「いやある。今回の件でよく分かった。お前は大人しくしていられるようなたまではない」
勝手に断定されて、青年はやや膨れる。
そもそもイェンが散歩に連れ出してくれると言うのでそれに乗っかっただけだ。
だがイェンが言い出さなくとも自ずと不平不満を漏らして外へ出てはいただろうから結果は同じだったかも知れない。尚且つ自身の普段の行いを思い出すと、あながち魔王が言う事も間違いではない。
「確かにそれは否定出来ませんけど」
「そうかそうか。ぜっったいにおろさんからな」
とまぁこんな感じでだんだんヒートアップし、冒頭のようになった訳だ。
「――そう言えば、どうして俺達の場所分かったんですか?」
「おいコラ、話を聞け」
「そうは言っても気になりますよ。もしかしてこっそり跡つけてたとか? だったらもっと早く助けてくれたって」
魔王は深いため息をつく。
「そうではない。嫌な予感がして部屋に行ったらお前達が見当たらず、気配を探ったらおかしな所にいると気付いて追って来ただけだ。その時たまたまハクイとばったり鉢合わせてな。あれはあれで子供達に何かあったと急いでいた」
「仲いいですね」
「からかうな」
「それで?」
「来てみれば揃って樹海に襲われてるわセルゥがリーベを抱えて逃げているわで、それを見てだいたい何があったのか察しがついてな。どうせお前が外に出たいとイェンに無理を言って散歩に出たら、あの子らがリーベを拐ったもんで、それを二人で追い掛けたらまんまと全員樹海に捕まった。違うか?」
「……まぁ確かにほぼそんな感じです」
「かと思うとお前達が崖の端に追いやられあっと言う間に落ちて行くから本当に肝が冷えたぞ」
ほぼ間違っていない。間違っていないのだが青年の眉がぴくりと痙攣する。
(何故だろうこの釈然としない感じ……)
しかしそうは言っても助けて貰ったのは確かで、もちろん感謝だってしている。これ以上喧嘩したところでなんの意味もない。寧ろ素直に言ってしまった方がいい。
「魔王さま」
「なんだ?」
「助けてくれて、ありがとうございます」
すると急に魔王は二人を抱えたまま崩れるように、だがゆっくりしゃがみこんだ。
「え!? ちょっ何!?」
予想外の動きに、ワタワタとリーベを片手で支えながら魔王にしがみつく。
「それを今言うな、ほっとして足の力が抜けただろう」
「はい?」
「ほんっとうに焦ったんだぞ」
「へ?」
「本当に」
強い力でぎゅっとされて、苦しいからおろせとでかかった言葉を引っ込める。
魔王が気付いて来てくれていなかったら今頃……そう思ったからなのだが。
ぎゅ~~~~
「すみません魔王さま。お気持ちは嬉しいんですけど、いい加減苦しいってば!」
片手で魔王の顎を押し上げた。
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