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毎食、オーリスの飯を作るのはめんどくさいから料理人に頼んだ。
ついでに。
「どうやら夢を見て反省されたそうです。人を鞭打つ愚かさを反省して断食されてたと。」
夢占いや迷信がみんな好きだ。
オーリスは分かってないが、啓示や予言なんかそういった類いがまかり通る。
昔からこの手は使っていた。
今も半信半疑ながら実際に長いこと食事をとっていなかったから、みんな信じた。
1週間近く食べてなかったようで水も取ったかどうか分からないと。
良く生きてたな、あいつ。
ついでになんで私を雇ったのか聞かれて。
「私の出生は皆さんがご存じの通りです。オーリスお嬢様が今までの償いとして身分の低い私を手元に置くことにしたと聞いております。」
適当に言っといた。
種は巻いたと、さっさと部屋に戻る。
ずっと寝てなかったんだろう。
日がな1日ぐっすり寝てる。
トイレはムクッと起きてくる。
ご飯は聞くと食べると言って起き上がる。
空腹からまだ吸い込むように食べるのでひとくちずつ食べさせた。
「ああ、そうだ。学園だけど旦那様から一年通えって言われたよ。」
「え!だめ!」
青ざめて震えだした。
「…シナリオ?」
ポタポタ泣いて頷いた。
「元からシナリオおかしくね?半年の予定だったのに。」
「そんなぁ、じゃあ、無駄だったの?!うええん!」
「また泣いた。」
突っ伏して泣くから食器をよける。
「でも、私はオーリスお嬢様の侍女として通うんだよ。側を離れないよ。」
高位貴族の侍女になるなら一年は必須だ。
「大丈夫だって。色々考えてるから。今は泣き止んで飯を食べな?体力ないとシナリオより先にまいっちまう。」
「死にたくないいい!うわぁぁん!」
「だーかーら、泣くなって。泣いてもどうにもならんっての。」
テーブルからも崩れて泣くから床に座って抱っこしてやる。
マジでガキだ。
「私が味方になってやるから。良い子だから泣くな。ほら、いいこいいこ。」
子守りの仕事の時にしたように、抱き締めてつむじやこめかまにキスをする。
「泣き止め。いいこ。私がいるから怖くない。」
「う、うえ、ふう、」
「どうする?私がいない方がいいならどこか遠くに行くか?」
公爵家の伝なら他国にも働き口があるだろう。
ふるふると頭を振って否定する。
また、シナリオって言うのかな。
危険なものは手元で管理したい気持ちも分かるけど。
「ごめん、私泣いてばっかりで。」
「いいよ。慣れてきた。あんた、前世はいくつ?」
「え?よく覚えてないけど成人してた。」
「15か。」
この国の成人は15だ。
私らは14。
デビューの1年前に学園がある。
「…ちがう。20と少し越えてた。」
年上か。
「…ガキ。」
「うう。」
「だが、正直でよろしい。」
「…うん。」
ごそごそと手を背中に回すのを捕まえる。
刺されたくない。
隠し持ったナイフでぐっさりとか冗談じゃない。
ふたつの手首を捕まえて、丸ごと抱き込む。
「丸くなっとけ。」
「…うん。」
胡座をかいた真ん中に手足を丸めている。
素直だなぁ、こいつ。
本当に公爵令嬢できるのか。
「泣いたら抱っこしてやる。」
「うん。」
…受け入れるのか。
子供扱いをからかったつもりなのに。
思ってたよりガキなのかもしれない。
「…飯食べな。」
「うん。」
またおかわりをねだられて断った。
取りに行くのがめんどくさい。
今日は湯あみをさせた。
自分で洗うと言うので放っておいた。
オーリスの身分であり得ない。
やはり、妙なんだと確信が強まる。
ついたての裏で待っていたが、途中で転んだような音がした。
体力が落ちてるからしょうがない。
「無理するな。」
「だって、お風呂くらい自分で。」
「病み上がりだからしょうがない。」
スポンジを取り上げて背中を洗う。
骨がごつごつしてる。
できるだけ優しく洗った。
「痛くないか?」
「うん。気持ちいい。」
「汚れが落ちてすっきりしたろ?」
「うん。」
髪の毛も丁寧に洗う。
「キツくないか?」
「うん。…なんで、アゼリアは男っぽい話し方なの?」
「ん?ああ。男爵家に入るまで男っぽく過ごしてたからだよ。」
「…なんで?」
ぼんやりして舌ったらずな話し方。
お前こそ本当に公爵令嬢かよ。
「女だと仕事ひとつめんどくさいから。」
人目を惹く顔立ちも考えものだ。
まともな仕事が見つからない。
「そうなんだ?」
「…わかってないだろ?」
「う?うん?えへへ。ごめん。」
「わからなくてもいいよ。大したことじゃない。」
「でも、知りたい。」
「んー、男っぽくしていた方が金回りの良い仕事が多かった。」
「あ、わかった。」
こっちを向いてふわっと笑った。
目元を触る。
少し土色と窪みが減った。
「少し顔色良くなった。」
「そう?」
黙って頷く。
さっさと風呂からあげよう。
まだ無理できる体力じゃなさそうだ。
「忘れてた。胸、見せろ。」
「え!」
「蹴ったところ。」
確認しとかないと。
足形のアザがあった。
だよなぁ。
アザのところを押さえる。
「痛みは?」
「え、え?」
軽くグッグッと押す。
少し顔をしかめて痛がる。
「折れてなさそう。あとで湿布もらってくるよ。」
折れてたらもっと痛いだろう。
「…私が怪我したことにしとこう。オーリスお嬢様もそのつもりで。」
「え?あ、うん。」
ご令嬢の怪我なんて医者を呼ばれる。
この足形はバレる。
メイド達に湿布を貰いたいと伝えると早速やられたのかと同情された。
薬類の管理している家令のもとに行かされ心配される。
ちらっと膝に薄く墨を塗ったところを見せる。
「急いでこちらに窺う途中で転んでしまって。オーリスお嬢様が湿布を貰えと。」
蝋燭の明かりだ。
どうせわからん。
年寄りが興奮し、慌てて上げたスカートの裾を下げた。
はしたないってさ。
安心しろよ。
2度と見せないから。
湿布を多めに貰ってオーリスお嬢様のもとに行く。
薬類は高価だ。
かなり融通されたと判断する。
メイド達にも同じ説明をして、家令と違って裾は捲らなかった。
必要ないから。
オーリスの胸に湿布を貼ったあとは膝の墨を拭いた。
「学園でオーリスお嬢様に張り付くつもりだけどさ。」
「うん。」
「身分違いだから違う授業の日もあるじゃん?」
「…うん。」
「泣くなよ。それより近寄ったらいけない人間を教えとけよ。」
引き出しにメモがあると言うので出して眺める。
文字を読むのはまだ遅い。
2年で何もかも詰め込んだ。
夫人が賢いと誉めたのはあながち間違いじゃない。
暗記は得意だ。
攻略対象
王子ヨスト
宰相の息子ルーカス
騎士団長の息子カリフ
兄ガド
「おい、兄のガドってどういうことだ?」
自分の不勉強だろうか。
だが、この文字は兄だ。
「え?そういう設定。」
「…そっちの世界でそういうの普通なのか。」
もしそうなら羨ましいのは前言撤回だ。
この国で叔父姪の婚姻は許されてるが同父、または同母の子供同士はあり得ない。
恐ろしいわ。
「違うよ。物語を楽しむだけだよ。」
道ならぬ恋がいいんだと。
マジかー。
こわー。
「まあ、現実は兄弟じゃないから。」
「みたいだね。こっちも現実はダメだよ。」
「ふうん。王子ヨスト様ってオーリスお嬢様の婚約者様じゃん。なしだろ、なし。てか全員、身分違いで婚姻無理じゃん。シナリオ通りになるのか?これ。」
「それを乗り越えて結婚するの。」
「へぇー。」
めんどい。
「全員。寄らないようにするよ。あれ、なんだっけ、イベント?だったかな。そのタイミングは一緒にいればいい。あとは何を気を付ける?」
裏を見るとイベントの一覧が書いてある。
あまりの数の多さに引いた。
「こんなに、あるのか?」
「うん。エンドも一杯あるから。私が知らないのもあるよ。」
「…そうかよ。」
めんどい。
嫌になってこの日は寝た。
ついでに。
「どうやら夢を見て反省されたそうです。人を鞭打つ愚かさを反省して断食されてたと。」
夢占いや迷信がみんな好きだ。
オーリスは分かってないが、啓示や予言なんかそういった類いがまかり通る。
昔からこの手は使っていた。
今も半信半疑ながら実際に長いこと食事をとっていなかったから、みんな信じた。
1週間近く食べてなかったようで水も取ったかどうか分からないと。
良く生きてたな、あいつ。
ついでになんで私を雇ったのか聞かれて。
「私の出生は皆さんがご存じの通りです。オーリスお嬢様が今までの償いとして身分の低い私を手元に置くことにしたと聞いております。」
適当に言っといた。
種は巻いたと、さっさと部屋に戻る。
ずっと寝てなかったんだろう。
日がな1日ぐっすり寝てる。
トイレはムクッと起きてくる。
ご飯は聞くと食べると言って起き上がる。
空腹からまだ吸い込むように食べるのでひとくちずつ食べさせた。
「ああ、そうだ。学園だけど旦那様から一年通えって言われたよ。」
「え!だめ!」
青ざめて震えだした。
「…シナリオ?」
ポタポタ泣いて頷いた。
「元からシナリオおかしくね?半年の予定だったのに。」
「そんなぁ、じゃあ、無駄だったの?!うええん!」
「また泣いた。」
突っ伏して泣くから食器をよける。
「でも、私はオーリスお嬢様の侍女として通うんだよ。側を離れないよ。」
高位貴族の侍女になるなら一年は必須だ。
「大丈夫だって。色々考えてるから。今は泣き止んで飯を食べな?体力ないとシナリオより先にまいっちまう。」
「死にたくないいい!うわぁぁん!」
「だーかーら、泣くなって。泣いてもどうにもならんっての。」
テーブルからも崩れて泣くから床に座って抱っこしてやる。
マジでガキだ。
「私が味方になってやるから。良い子だから泣くな。ほら、いいこいいこ。」
子守りの仕事の時にしたように、抱き締めてつむじやこめかまにキスをする。
「泣き止め。いいこ。私がいるから怖くない。」
「う、うえ、ふう、」
「どうする?私がいない方がいいならどこか遠くに行くか?」
公爵家の伝なら他国にも働き口があるだろう。
ふるふると頭を振って否定する。
また、シナリオって言うのかな。
危険なものは手元で管理したい気持ちも分かるけど。
「ごめん、私泣いてばっかりで。」
「いいよ。慣れてきた。あんた、前世はいくつ?」
「え?よく覚えてないけど成人してた。」
「15か。」
この国の成人は15だ。
私らは14。
デビューの1年前に学園がある。
「…ちがう。20と少し越えてた。」
年上か。
「…ガキ。」
「うう。」
「だが、正直でよろしい。」
「…うん。」
ごそごそと手を背中に回すのを捕まえる。
刺されたくない。
隠し持ったナイフでぐっさりとか冗談じゃない。
ふたつの手首を捕まえて、丸ごと抱き込む。
「丸くなっとけ。」
「…うん。」
胡座をかいた真ん中に手足を丸めている。
素直だなぁ、こいつ。
本当に公爵令嬢できるのか。
「泣いたら抱っこしてやる。」
「うん。」
…受け入れるのか。
子供扱いをからかったつもりなのに。
思ってたよりガキなのかもしれない。
「…飯食べな。」
「うん。」
またおかわりをねだられて断った。
取りに行くのがめんどくさい。
今日は湯あみをさせた。
自分で洗うと言うので放っておいた。
オーリスの身分であり得ない。
やはり、妙なんだと確信が強まる。
ついたての裏で待っていたが、途中で転んだような音がした。
体力が落ちてるからしょうがない。
「無理するな。」
「だって、お風呂くらい自分で。」
「病み上がりだからしょうがない。」
スポンジを取り上げて背中を洗う。
骨がごつごつしてる。
できるだけ優しく洗った。
「痛くないか?」
「うん。気持ちいい。」
「汚れが落ちてすっきりしたろ?」
「うん。」
髪の毛も丁寧に洗う。
「キツくないか?」
「うん。…なんで、アゼリアは男っぽい話し方なの?」
「ん?ああ。男爵家に入るまで男っぽく過ごしてたからだよ。」
「…なんで?」
ぼんやりして舌ったらずな話し方。
お前こそ本当に公爵令嬢かよ。
「女だと仕事ひとつめんどくさいから。」
人目を惹く顔立ちも考えものだ。
まともな仕事が見つからない。
「そうなんだ?」
「…わかってないだろ?」
「う?うん?えへへ。ごめん。」
「わからなくてもいいよ。大したことじゃない。」
「でも、知りたい。」
「んー、男っぽくしていた方が金回りの良い仕事が多かった。」
「あ、わかった。」
こっちを向いてふわっと笑った。
目元を触る。
少し土色と窪みが減った。
「少し顔色良くなった。」
「そう?」
黙って頷く。
さっさと風呂からあげよう。
まだ無理できる体力じゃなさそうだ。
「忘れてた。胸、見せろ。」
「え!」
「蹴ったところ。」
確認しとかないと。
足形のアザがあった。
だよなぁ。
アザのところを押さえる。
「痛みは?」
「え、え?」
軽くグッグッと押す。
少し顔をしかめて痛がる。
「折れてなさそう。あとで湿布もらってくるよ。」
折れてたらもっと痛いだろう。
「…私が怪我したことにしとこう。オーリスお嬢様もそのつもりで。」
「え?あ、うん。」
ご令嬢の怪我なんて医者を呼ばれる。
この足形はバレる。
メイド達に湿布を貰いたいと伝えると早速やられたのかと同情された。
薬類の管理している家令のもとに行かされ心配される。
ちらっと膝に薄く墨を塗ったところを見せる。
「急いでこちらに窺う途中で転んでしまって。オーリスお嬢様が湿布を貰えと。」
蝋燭の明かりだ。
どうせわからん。
年寄りが興奮し、慌てて上げたスカートの裾を下げた。
はしたないってさ。
安心しろよ。
2度と見せないから。
湿布を多めに貰ってオーリスお嬢様のもとに行く。
薬類は高価だ。
かなり融通されたと判断する。
メイド達にも同じ説明をして、家令と違って裾は捲らなかった。
必要ないから。
オーリスの胸に湿布を貼ったあとは膝の墨を拭いた。
「学園でオーリスお嬢様に張り付くつもりだけどさ。」
「うん。」
「身分違いだから違う授業の日もあるじゃん?」
「…うん。」
「泣くなよ。それより近寄ったらいけない人間を教えとけよ。」
引き出しにメモがあると言うので出して眺める。
文字を読むのはまだ遅い。
2年で何もかも詰め込んだ。
夫人が賢いと誉めたのはあながち間違いじゃない。
暗記は得意だ。
攻略対象
王子ヨスト
宰相の息子ルーカス
騎士団長の息子カリフ
兄ガド
「おい、兄のガドってどういうことだ?」
自分の不勉強だろうか。
だが、この文字は兄だ。
「え?そういう設定。」
「…そっちの世界でそういうの普通なのか。」
もしそうなら羨ましいのは前言撤回だ。
この国で叔父姪の婚姻は許されてるが同父、または同母の子供同士はあり得ない。
恐ろしいわ。
「違うよ。物語を楽しむだけだよ。」
道ならぬ恋がいいんだと。
マジかー。
こわー。
「まあ、現実は兄弟じゃないから。」
「みたいだね。こっちも現実はダメだよ。」
「ふうん。王子ヨスト様ってオーリスお嬢様の婚約者様じゃん。なしだろ、なし。てか全員、身分違いで婚姻無理じゃん。シナリオ通りになるのか?これ。」
「それを乗り越えて結婚するの。」
「へぇー。」
めんどい。
「全員。寄らないようにするよ。あれ、なんだっけ、イベント?だったかな。そのタイミングは一緒にいればいい。あとは何を気を付ける?」
裏を見るとイベントの一覧が書いてある。
あまりの数の多さに引いた。
「こんなに、あるのか?」
「うん。エンドも一杯あるから。私が知らないのもあるよ。」
「…そうかよ。」
めんどい。
嫌になってこの日は寝た。
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