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レイヴン辺境伯領の息子
#1
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「よし! 今日も大満足のできだな!!」
『大漁♪ 大漁♪ 大漁♪』
『確かにすごいが………
さすがに今日のこれは狩りすぎじゃないのか?』
ここはルナティール国とサンライト皇国の国境付近となるレイヴン辺境伯領。
そこに存在する広大な森。
〔黒月の森〕と呼ばれるこの森には多種多様な精霊や魔物が暮らしている。
人間に好意的・友好的なものもいるが黒月の森に暮らす多くは危険なものが多い。
そんな森で騒いでいるのは少年と真紅の小鳥、藍色で3尾の狐の1人と2匹である。
少年は輝く銀色の髪に漆黒の瞳をしていた。
そして、少年の後ろには狩ったらしい獲物が山となっている。
狩りすぎといえば狩りすぎともいえる。
「だって、しょうがないじゃん!
こいつらが俺が倒したクレイボアを横取りしようとするから!!
俺は撃退しただけだ。
だから、俺、わるくなくね?」
『アシュ………。
おまえはもう少し手加減しろ。
襲ってきたフォレストバードを全滅させてどうする!
この量を我々だけでどうやって持ち帰るつもりだ!!』
『気合い?』
『気合いでなんとかなるとでも?』
『がんばる!』
『ルージュよ………、がんばるとかの問題ではないのだが。』
『???』
真紅の小鳥の的外れな応えに藍色の狐は呆れたように呟く。
そんな2匹の様子を見ながら銀髪の少年は狩った獲物をどうやって運ぶか考えていた。
「どうすっかなぁ。
今日はルームバック持ってくるの忘れたんだよなぁ。
やっぱ、ルーの言う通り気合いでがんばるか!」
『アシュ、絶対、無理だからやろうとするなよ。』
「えー、やってみないとわかんねぇじゃん。
なぁ? ルーもそう思うよな。」
『気合い♪気合い♪気合い♪
気合いでがんばる!!』
少年の言葉に楽しそうに唄うような勢いで真紅の小鳥 ルージュは反応を返す。
『頼むからやめてくれ………』
ノリと勢いで突っ走っていこうとする1人と1匹を必死に止めようとはしてみるものの半ば無理だと思ってもいるため嘆くように言うことしかできなかった。
そんな、苦労臭ただよう藍色の狐に少年たちは、
「レイはそのうち禿げそうだな。
折角のフサフサの毛並みなのに。」
『レイン、はげるの?』
『…………』
レインと呼ばれた藍色の狐はもう言葉もなく、ただただ、諦め、自慢の3本の尾は地面にショゲルようにペタリと伏せられていたのだった。
「アトシュ様ぁー
どちらにいらっしゃいますかーー」
レインが完全諦めムードに陥っていると遠くから声が聞こえくる。
声の主が誰かすぐに分かった。
なぜなら、声の主の探し人は自分の目の前にいるからだ。
『アシュ、呼ばれてるぞ。』
「おっ、この声はサーシャかな?」
『ではないのか?
というかこんなところまでメイドが来て大丈夫か?』
「大丈夫じゃね? サーシャ何気に強いし。」
『サーシャ、強いよねぇ~』
『で、いかんのか?呼ばれてるんだぞ。』
「えっ、いかねぇよ。だって、まだ遊びたいし。
どうせ邸にもどれってことだろ。」
『だろうな。しかし、ちょうどいいのではないか。
伝言を頼んで人手をよこしてもらえばアレらを持ち帰れるだろう。』
「それ名案!じゃっ、さっそく。」
レインの言葉に銀髪の少年 アトシュは自分の名を呼ぶ声の方に向かう。
なぜか木の上を渡りながら。
『なぜ、木の上から行く?』
「すぐに逃げられるようにするためだけど?』
『なるほど。』
『逃げるのぉーーー!』
そんなやりとりをしていると、
「見つけましたよ、アトシュ様!」
「アシュ、またこんなところまで来てたの?
本当にすごいわね。」
「あれ? リア姉様もいたんだ。」
「そうよ。
サーシャだけじゃ、あなたすぐに逃げるでしょう。
だから、私も付いてきたのよ。」
「おぉ、よく分かってるね!」
「アトシュ様!!」
「サーシャが怒った!」
『サーシャ、怒った!こわーい!!』
「アトシュ様!ルージュ様!」
『アシュ、ルージュ。あまりからかうな。
また、長時間の説教を受けるハメになるぞ。』
メイドのサーシャは勝手にこんなところまで出かけたアトシュにまったく反省の色がないに対し怒りを露わにする。
そんなサーシャに対し、アトシュとルージュは淡々としていた。
その様子にリア姉様と呼ばれた少女は穏やかな笑みを浮かべ、レインはアトシュが帰る気がないことを知っているため余計な説教は受けたくないため注意だけはしておく。
「とにかく、すぐに邸にお帰りください。」
「やだ!」
「『やだ!』ではありません。
わがまま言わず、即刻、お帰りください。
さもなくば強制連行させていただきます。」
「絶対、いやだ!
あっ、忘れてた、帰るついでにそっちの収穫物持って帰れるように人員よろしく!!」
それだけ言うとアトシュはシュタッと隣の木々に移りながらサーシャから逃げる。
ルージュとレインはアトシュの後に続く。
その様子に、
「あらあら。相変わらずね、アシュは。
でも、残念ながらお父様からも連れてくるように言われてるからわがままはダメよ、アシュ。
メア!!」
リアは逃げるアシュを見ながら叫ぶ。
「うわぁぁ、何これ!
もしかして、メアの糸?いつのまに!!」
『うわわ、べたべたするようーー!!』
『アシュ、諦めた方が良さそうだぞ。』
「えっ、なんで?」
『 下 』
「下? 」
くっつく糸に絡まれながら落下する1人と2匹。
レインに言われ、下にアトシュが視線を向ける。
そこには、とてつもなくいい笑みを浮かべた1人のアトシュより少し年上の少年と真っ黒な黒豹がいた。
アトシュを受けとめる構えをして。
(あっ、やられた………。)
落下しつつも糸から逃れようとジタバタしていたがムリだった。
落下したアトシュは予想通り、笑顔の少年の腕の中に。
ルージュは黒豹がレインはひらりと自身で着地していた。
その様子を見て、今さらながら思った。
(そういえば、魔法、使えばよかった………)
咄嗟のことでそのことに思い至ることができず、
思いついた時にはすでに遅かった。
「はい、アトシュ様、捕まえましたよ。」
少年の捕獲宣言にアトシュはおとなしく諦めるしかなかった。
『大漁♪ 大漁♪ 大漁♪』
『確かにすごいが………
さすがに今日のこれは狩りすぎじゃないのか?』
ここはルナティール国とサンライト皇国の国境付近となるレイヴン辺境伯領。
そこに存在する広大な森。
〔黒月の森〕と呼ばれるこの森には多種多様な精霊や魔物が暮らしている。
人間に好意的・友好的なものもいるが黒月の森に暮らす多くは危険なものが多い。
そんな森で騒いでいるのは少年と真紅の小鳥、藍色で3尾の狐の1人と2匹である。
少年は輝く銀色の髪に漆黒の瞳をしていた。
そして、少年の後ろには狩ったらしい獲物が山となっている。
狩りすぎといえば狩りすぎともいえる。
「だって、しょうがないじゃん!
こいつらが俺が倒したクレイボアを横取りしようとするから!!
俺は撃退しただけだ。
だから、俺、わるくなくね?」
『アシュ………。
おまえはもう少し手加減しろ。
襲ってきたフォレストバードを全滅させてどうする!
この量を我々だけでどうやって持ち帰るつもりだ!!』
『気合い?』
『気合いでなんとかなるとでも?』
『がんばる!』
『ルージュよ………、がんばるとかの問題ではないのだが。』
『???』
真紅の小鳥の的外れな応えに藍色の狐は呆れたように呟く。
そんな2匹の様子を見ながら銀髪の少年は狩った獲物をどうやって運ぶか考えていた。
「どうすっかなぁ。
今日はルームバック持ってくるの忘れたんだよなぁ。
やっぱ、ルーの言う通り気合いでがんばるか!」
『アシュ、絶対、無理だからやろうとするなよ。』
「えー、やってみないとわかんねぇじゃん。
なぁ? ルーもそう思うよな。」
『気合い♪気合い♪気合い♪
気合いでがんばる!!』
少年の言葉に楽しそうに唄うような勢いで真紅の小鳥 ルージュは反応を返す。
『頼むからやめてくれ………』
ノリと勢いで突っ走っていこうとする1人と1匹を必死に止めようとはしてみるものの半ば無理だと思ってもいるため嘆くように言うことしかできなかった。
そんな、苦労臭ただよう藍色の狐に少年たちは、
「レイはそのうち禿げそうだな。
折角のフサフサの毛並みなのに。」
『レイン、はげるの?』
『…………』
レインと呼ばれた藍色の狐はもう言葉もなく、ただただ、諦め、自慢の3本の尾は地面にショゲルようにペタリと伏せられていたのだった。
「アトシュ様ぁー
どちらにいらっしゃいますかーー」
レインが完全諦めムードに陥っていると遠くから声が聞こえくる。
声の主が誰かすぐに分かった。
なぜなら、声の主の探し人は自分の目の前にいるからだ。
『アシュ、呼ばれてるぞ。』
「おっ、この声はサーシャかな?」
『ではないのか?
というかこんなところまでメイドが来て大丈夫か?』
「大丈夫じゃね? サーシャ何気に強いし。」
『サーシャ、強いよねぇ~』
『で、いかんのか?呼ばれてるんだぞ。』
「えっ、いかねぇよ。だって、まだ遊びたいし。
どうせ邸にもどれってことだろ。」
『だろうな。しかし、ちょうどいいのではないか。
伝言を頼んで人手をよこしてもらえばアレらを持ち帰れるだろう。』
「それ名案!じゃっ、さっそく。」
レインの言葉に銀髪の少年 アトシュは自分の名を呼ぶ声の方に向かう。
なぜか木の上を渡りながら。
『なぜ、木の上から行く?』
「すぐに逃げられるようにするためだけど?』
『なるほど。』
『逃げるのぉーーー!』
そんなやりとりをしていると、
「見つけましたよ、アトシュ様!」
「アシュ、またこんなところまで来てたの?
本当にすごいわね。」
「あれ? リア姉様もいたんだ。」
「そうよ。
サーシャだけじゃ、あなたすぐに逃げるでしょう。
だから、私も付いてきたのよ。」
「おぉ、よく分かってるね!」
「アトシュ様!!」
「サーシャが怒った!」
『サーシャ、怒った!こわーい!!』
「アトシュ様!ルージュ様!」
『アシュ、ルージュ。あまりからかうな。
また、長時間の説教を受けるハメになるぞ。』
メイドのサーシャは勝手にこんなところまで出かけたアトシュにまったく反省の色がないに対し怒りを露わにする。
そんなサーシャに対し、アトシュとルージュは淡々としていた。
その様子にリア姉様と呼ばれた少女は穏やかな笑みを浮かべ、レインはアトシュが帰る気がないことを知っているため余計な説教は受けたくないため注意だけはしておく。
「とにかく、すぐに邸にお帰りください。」
「やだ!」
「『やだ!』ではありません。
わがまま言わず、即刻、お帰りください。
さもなくば強制連行させていただきます。」
「絶対、いやだ!
あっ、忘れてた、帰るついでにそっちの収穫物持って帰れるように人員よろしく!!」
それだけ言うとアトシュはシュタッと隣の木々に移りながらサーシャから逃げる。
ルージュとレインはアトシュの後に続く。
その様子に、
「あらあら。相変わらずね、アシュは。
でも、残念ながらお父様からも連れてくるように言われてるからわがままはダメよ、アシュ。
メア!!」
リアは逃げるアシュを見ながら叫ぶ。
「うわぁぁ、何これ!
もしかして、メアの糸?いつのまに!!」
『うわわ、べたべたするようーー!!』
『アシュ、諦めた方が良さそうだぞ。』
「えっ、なんで?」
『 下 』
「下? 」
くっつく糸に絡まれながら落下する1人と2匹。
レインに言われ、下にアトシュが視線を向ける。
そこには、とてつもなくいい笑みを浮かべた1人のアトシュより少し年上の少年と真っ黒な黒豹がいた。
アトシュを受けとめる構えをして。
(あっ、やられた………。)
落下しつつも糸から逃れようとジタバタしていたがムリだった。
落下したアトシュは予想通り、笑顔の少年の腕の中に。
ルージュは黒豹がレインはひらりと自身で着地していた。
その様子を見て、今さらながら思った。
(そういえば、魔法、使えばよかった………)
咄嗟のことでそのことに思い至ることができず、
思いついた時にはすでに遅かった。
「はい、アトシュ様、捕まえましたよ。」
少年の捕獲宣言にアトシュはおとなしく諦めるしかなかった。
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