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第一章 幼少期編

閑話1 沙織

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 せっかく和也誘ったのに、来てくれなかったし。

 本当は女の子三人だけど、和也が来てくれたなら途中で別れて、二人でデートするつもりだったのに。
 和也とは小学生から高校までずっと一緒に育った。
 小学生のときはよく遊んでいたけど、最近遊んでくれなくなった。私としては昔と同じように居たかっただけなのに。
 ずっと好きだったけど、告白は出来ていなかったりする。
 仕方ないから、友達と三人で浴衣を着て花火を見にいった。隣に和也がいてくれたならもっと楽しかったのに。
 三人で浴衣姿の写真をとって和也に送っておいた。

 『浴衣姿見られなくて残念!かわいいだろ』ってメッセージをつけて。
 来年こそは一緒に行ってやる!
 

 花火が終わって、友達とも別れて家に帰ることにした。
 家の前になぜかパトカーが止まっているし。

 何かあったの!?

 浴衣姿だったけど、急いで玄関に入る。
 玄関には、浴衣姿で泣いている愛美と、警察官がいて両親に説明をしている。

「愛美!何があったの??」

 愛美が気づいてこちらを向く。

「和也にいちゃんが・・・・・・」

 そのまま、また泣き崩れた。

 代わりに警察官が説明してくれた。

「実はコンビニ近くで通り魔が発生しまして、眞鍋愛美さんが友人といるところを襲われそうになったとこを、男性がかばってくれて刺されました。その男性が、知り合いという話でして」

「その知り合いっていうのは?もしかして……」

 お母さんが代わりに答えてくれる。お母さんの顔を見ても涙でボロボロになっている。

「沙織、和也君よ。愛美と友達をかばって犯人に立ち向かったの」

「そ、そ、それで和也は?椎名和也は大丈夫なのですか!?」

 ひと呼吸おきながら警察官が残念そうな顔をして話し始めた。

「残念ですが、病院についたときには既に心停止状態でした」

 真っ白になった。

 今日、さっきまでメッセージのやりとりをしていたのに。

「お姉ちゃん・・・・・・ごめんなさい。和也兄ちゃんが「逃げろ!」って言われたけど怖くて動けなかったの。そしたら犯人に向かっていって・・・・・・」

 愛美は泣きながら謝ってくる。
 
 沙織は愛美を抱きしめた。

「和也が助けてくれたんだね。愛美、無事でよかったよ」

 警察官が帰ったあとの記憶はない。
 そのままベッドで泣きすぎて、眠ってしまったようだ。

 ◇◇◇
 学校は夏休み中だったが、臨時集会があり詳細が報告されていた。
 椎名和也君は通り魔から女子中学生を守るために、自ら犯人に立ち向かったとか。
 壇上で校長は、涙を拭きながら説明している。
 教室に戻ると、和也の机には花が飾られていた。
 
 教室でも友達と泣いた。

 数日が経ち、和也の葬儀に行ってきた。

 和也の顔は綺麗だった。
 棺に抱き着いて泣いてしまったが、お母さんに肩を借りてなんとか帰ってきた。
 愛美もずっと泣いていた。

 沙織はベッドに寝ころびながら天井を眺める。

「和也、愛美を救ってくれてありがとう。花火に来てたならもしかしたら、愛美が危なかったかもしれない。告白できなかったけど和也のことずっと好きだよ」

 教室で和也を隠し撮りした写真を眺めながらつぶやいた。
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