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第二章 学園・冒険者編

第五話 合格発表

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 試験から数日が経ち、合格発表の日を迎えた。

 この日を迎えるにあたって、ここ数日は王城に呼び出され毎日のように説教を受けていた。

 陛下からは、冒険者ギルドがランクAになってことを突っ込まれ、そして国営・・の学園の訓練場を破壊したことを問われた。
 さすがにそれに関しては、カインも反論させてもらった。

「試験官が全力で魔法を打てと言われました。結界が張ってあると言われましたので。さすがに超級や帝級はまずいと思い、初級に下げました。だけど、加護のおかげで威力が増して結界ごと破壊してしまったのです。冒険者ギルドに関しては、本当はCランクで登録の予定でしたが、騎士団長が一言ギルドマスターに言ったおかげでAランクになりました」

 カインはさすがに周りに振り回されて問題が起きてしまっただけで、本人はまったく悪いと思ってない。

「お主の行動で何度頭を抱えたことやら……。その前に! カイン! 帝級と言ったな?あの本に書いてある魔法は使えるのか??」

「はい、理解は出来ましたので使えるかと。ただ、帝級を使ったら辺り一面どうなるか……」

「カイン! 絶対につかうな! ほんと使うなよ!!」

 陛下は焦ったように本気で止めてくる。
 そして思い出したように陛下が話しかけてくる。

「そういや、お主どこで試験受けたのじゃ? テレスティアもシルク嬢も試験で見かけなかったといっておったぞ」

「普通に南門で受付をして、案内された教室で試験を受けましたが?」

「……カイン、なぜ学園が北門と南門があるのか知っておるよな?」

「もちろん。知っております。北門は貴族街側に通じており、平民街側は南門に通じているためです」

「それでお主は、どこの門から入って、どこで受付したのじゃ?」

「もちろん、南もん……あっ!」

「そうじゃ、貴族用に北門にも受付があるのじゃ、そして試験受ける場所もまったく違うとこでやっておるのじゃ! お主、平民達と試験を受けておったのじゃぞ。それなら誰とも会えるはずもない。会えなかったとテレスティアが怒っておったぞ」

「しかもお主、受付で「カイン」のみで登録しおったじゃろ。そのせいで学園が大騒ぎになったのじゃ。学園長が統括管理官のエリックのとこに相談にきたのじゃぞ」

「え、なんでそんなことになったのですか……それにしてもなんで大騒ぎに?」

 カインはわからずに首を傾げるしかなかった。



 ◇◇◇

 時は少し遡る試験の後

 入学試験の採点をしていた教師が、学園長の部屋に飛び込んできた。

「学園長、全員の採点が終わったのですが、問題があるのです。筆記試験で全問正解しているのは一人だけなんですが、その子は平民なのです。その子が主席になってしまうと……。今年は第三王女殿下やエリック公爵令嬢が試験を受けています。筆記試験の結果は次席が王女殿下で三席が公爵令嬢になっているんです」

 採点をした試験官が学園長に話をする。
 学園長は腕を組み悩み始める。

「王女殿下と公爵令嬢は実技での加点で抜かすことはできないのか?さすがにこの国でそんな理由で平民をさげすむことをしたら私が罰せられる」

 エスフォート王国では初代ユウヤ国王時代より、学生は全てにおいて平等であり、勉強する権利は平等に与えるべきと言われ続けている。

「その件ですが、実技においてその平民の子は、魔法ではあの初級魔法で訓練場を破壊し、剣技ではAランクの氷炎のクロード殿とまともに打ち合ったとか。魔法も剣技もSプラス評価です」

「あ、あの子か、それでは変えようがない。これは統括管理官であるエリック公爵にお伺いをする必要があるな。さすがにこのままではまずい」

 そして学園長はエリック公爵を訪ねて行った。

「エリック公爵、お忙しいところ申し訳ありません。今回の入学試験で問題がありましてご相談にきました」

「学園長、どうしたんだい? 結果をそのまま出せばいいのでは」

「それがですね……」

 内容をエリック公爵に説明していった。その平民が筆記で満点をとったこと、もちろん訓練場の破壊やAクラス冒険者とまともに打ち合ってたことを。

 それを聞いて、エリックは笑ってしまう。

「エリック公爵、笑ってはいられませんぞ。平民が主席で王女殿下が次席、ご令嬢が三席になってしまいます」

 学園長は真面目にエリックに話しかける。
 エリックは笑いながら答える。

「そのままでいいんじゃない? その子の名前って「カイン」じゃない?」

「名前はそうですね「カイン」で合ってます。それをなぜ知っているのですか?」

 学園長はエリック公爵に問い掛ける。

「やっぱりカインくんだったか。なら余計そのままにしたほうがいい」

 エリック公爵は相変わらず笑いながら答えてくる。

「それはなぜ?」

 学園長は首を傾げる。

「カインくんはねー、正式な名前は『カイン・フォン・シルフォード男爵』だよ。ガルム辺境伯の息子でね。しかも五歳で叙爵しているから正式な貴族の当主だよ。」



「!!!!!!!!」


 学園長は驚く。

「そんな人がいったいなぜ……」

「多分平民側の南門で受付したんじゃない? カインくんならやりそうだし」

「……そういうことだったのですね。わかりました。それではその順番で発表させていただきます」

 そう言って学園長はエリック公爵に一礼して退出していった。

「カインくん、それにしても派手にやったね~。あとでマグナ宰相が修繕費の見積を見て驚くんじゃないかな」

 一人になった部屋でエリック公爵は呟いた。


 ◇◇◇

 合格者番号が一覧で張り出されているところにきた。
 張り出されている掲示板の前には人だかりが出来ていた。
 掲示板の前では、喜んでいる子も泣いている子もいた。この王都の学園はレベルが高い。1学年につき220名の合学者がでるのだが、成績でクラス分けがされていく。クラスは上位20名がSクラス、次はAからEまであり、各40名のクラスだ。しかも上位20名は受験番号の横に名前も張り出されていた。そこに1000人以上の受験者が受けるのだ。

「285番はどこかなーっと」

 カインは掲示板を眺めながら自分の番号を探していく。
 そしていきなり肩を叩かれる。振り向くとそこにいたのはシルク嬢だった。

「カインくんおめでとう主席だね!テレスが次席で私が三席だよ。ほら、あそこ、あそこに名前と番号が並んでるでしょ?」

 そう言って指さしたところは、一番目立つところに順位が書いてあり、「主席 285番 カイン」「次席 012番 テレスティア・テラ・エスフォート」「三席 025番 シルク・フォン・サンタナ」と書いてあった。

「ほんとだっ。合格しててよかった」

 カインにとっては主席よりも受かっていることのほうが大事だった。

「それにしても、父様から聞いたよ。南門で受付して平民側の試験会場で試験受けてたんだって?しかも破壊した訓練場も見たよ。あれはひどいね~。実技会場に向かおうとしたらすごい轟音がしてびっくりしたし。あと、今日はテレスは来てないけど、試験会場で会えなかったって怒ってたよ」

「北門に受付あるって知らなかったからね。名前しか書くところがなかったからおかしいなって思ってたんだ」

 シルク嬢と少し雑談をしてから別れた。

「それじゃぁまた入学式でね! 制服楽しみにしててね」

 そういってシルク嬢は走って行ってしまった。
 合格者の受付を済ませたところで、見知った顔がいた。姉のレイネだ。

「レイネ姉さま、お久しぶりです」

 後ろから声をかけたカインに気づき顔を見て満面の笑みを浮かべた。
 レイネも十四歳となり、段々と大人びてきており女性らしい膨らみもでてきていた。
 弟としての贔屓目で見ても美少女だ。

「カインくん! 久しぶり。全然屋敷に来てくれないじゃない。それにしても合格おめでとう。試験どうだったの? どのクラスになった?」

「主席でSクラスになってました。まぁ合格したからよかったです」

 ちょっと自分から主席とは言いづらかったが、正直にレイネに伝えた。

「しゅ、主席……だったのね。さすがだわ。名前見たけど、シルフォードって書いてないからわからなかったわよ。それじゃ入学の時の挨拶頑張らないとね」
 
 さすがにレイネも主席になるとは思っていなかったようで驚いていた。

「入学の挨拶?」

 カインは主席が挨拶することは聞いていなかった。

「知らなかったの? 毎年主席が挨拶をするのよ。説明受けていると思ったけど」

「そうだったのですか……、テレスに変わってもらいたかった」

「もう発表されたからダメよ。それよりも合格したんだから、屋敷の母様にも報告しにきなさいよ」

「うん。今日にでも行くようにしますね」

「私も、もう少ししたら帰る予定だから、屋敷で待ってるわね」

 レイネはそう言って、抱えていた書類を持って校舎へ入っていった。
 
「たまには実家に顔を出さないとな」

 そう言って、カインは学園の門を抜けガルムの屋敷に向かって歩いていった。
 ガルムの屋敷には、兄であるジンとアレクはすでに学園を卒業して、グラシア領に戻っている。もちろん第一夫人であるマリアもだ。
 ガルムの後を継ぐために、ジン兄様は領地経営について学んでいる。アレク兄様も内政官としてグラシア領にある一つの街を見ているらしい。
 今この屋敷に住んでいるのはサラとレイネだけだ。ガルムもこの時期は領地に戻っているし。
 王都のガルム家別邸についたときは、まだレイネは帰ってきてなかった。

「ただいま~。って違うか」

 門番に手を上げ中に入っていく。

「あら、カインじゃない~。試験合格したとは思うけどどうだったのぉ?」

 出迎えてくれたのは母のサラだった。

「主席合格しました。学園でレイネ姉さまに会った時に母様に報告しにいくようにと言われてて」

「あら。主席なんてすごいじゃないっ! グラシア領にいるガルムにも手紙で送っておくわね」

「はい、よろしくお願いします」

「今日はどうするの? この屋敷に泊まっていく?」

 サラから提案してきたけど、家の皆にも報告が残っている。

「家でシルビアも待っていますし、今日は帰りますねっ。また顔を出しにきます」

 そう言って、ガルム邸をあとにした。
 自宅に戻り、執事のコランとシルビアに報告する。

「カイン様さすがです。それにしても主席とは驚きました」
「カイン様なら当然ですねっ!」

 コランは驚いていたが、なぜかシルビアは当たり前のように胸を張っていた。
 二人とも喜んでくれたが。

「ありがとう、学園楽しみだね」

 そして、日数は過ぎ、無事に入学式を迎えることとなった。




 
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