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しおりを挟むん? なんか、色々と言われている気がする。
『◼️◼️◼️◼️?』
おっと、そんなことよりも今は祈祷の真っ最中。それを疎かにすることは許されない。
『◆◈◇♔♔◈◆▷▼◆◇.▷▫▩◁▫▫』
『◼️◼️◼️◼️◼️』
『アイ!』
精霊にのみ通じる言語、古代精霊語での交信。
発声に魔力を込めることで肉体を持たない相手に声を届けることができるのが、古代言語の特徴であり、その中で精霊に届くように調整されたものが古代精霊語である。
アカデミーでもそこまで話せる人間の少ない、わりとマイナーな言語ではあるが、俺は転生チートなのか、語学の習得が他の人より容易らしい。言語の習得効率が異常なのだ。一週間も勉強すれば普通にしゃべれるぐらいにはなる。
まぁ旅行は現地の言語が話せた方が楽しいもんな。
この御神体である大岩は、現世と霊界、そのどちらにも存在しており、互いの界をつなぐ受話器のようなもの。
交信の相手は、この山の霊地の主である大精霊。
大自然の意思そのものであり、神と称してもけっして過言ではない存在である。
一見普通に会話しているように見えるかもしれないが、本来は古代精霊語を習得していたとしてもここまでスムーズにはならない。
発信が一方通行になったり、ノイズまみれで断片的な情報しか受けとれなかったりする。
教会の神託などもこれと同じ原理だったりする。
今回の場合は、
転生者である俺が神秘受託能力が高いこと。
水属性の素質が強い俺と、この霊地との相性がいいこと。
そして何よりも、アオイの存在である。
生まれたての精霊であるアオイは、この地から株分けされた水のギャル精霊から生まれた存在。
いわば同じルーツの一門みたいな感じだ。
そのため、霊地とのパスがバリバリつながっていて、ノイズとかがほとんどない状態。
まさに通話し放題である。
要するに俺がすごいのではなく、アオイのおかげってわけだ。
そうこうしているうちに、とりあえずのご機嫌伺いの挨拶とアオイの顔見せ的な交信は終わり。
三人を待たせているし、また、この後にちゃんと話をする時間を作るということで一旦、終了する。
『▩○▷◁◆♔:●……。ではまたあとで」
そうして俺は、祈祷を終えた。
■
「お待たせ」
祈祷を終えた俺は、見学していた三人のもとへと戻る。
「どうだったかな? なかなか珍しいものだったでしょ」
「はい、すごかったです」
「ピカーっとひかってた」
「学ばせていただきました」
好評だったようで何より。
三人はこれから神秘に触れることも増えるだろうから、こういうのもあると示せてよかった。
「サイトさんはアレを普通にやるんですか?」
一番やっていることを理解しているだろうナツメが、おずおずと質問する。
「さすがにここまで深くつながれるのは、色々な条件が重ならないと難しいね」
「そうなんですか?」
「ここは前に一度来たこともあって、霊地の空気にも慣れていたし、俺自身の属性と相性がいいのもある。他にも色々重なっての、この結果というわけだ」
そう、こんな神業めいたことを普通にやれる人間がいたら、とっくに教会で祭り上げられて聖人認定されているはずである。
本来は精霊の交信とは、相当難しいものだ。
「でも君たちが真面目に古代精霊語を勉強すれば、そのうち精霊の声を聞くことはできるかもしれない」
「本当ですか?」
「ほんとほんと」
実際、これは嘘じゃない。
その土地の精霊とそこに住まう民は基本的に性質が近くなる。
なのでこのまま、順調に山でも活動するようになれば、より精霊の気配を深くなる。
なので古代精霊語さえ覚えれば、意思の疎通も可能なのだ。
「それが難しいんじゃないですか」
まぁ確かに古代精霊語は、アカデミーぐらいでしか使われない、習得難易度の高い言語ではあるけれど。
「まぁ聖職で、儀式のために必要な一部だけ覚えるって人もいるし、完璧に身に付ける必要は必ずしもないんだけどね」
田舎の聖職で、「こんにちは」と「ありがとう」と「さようなら」しか知らないって人もいるし。
「後は、話せなくても地元のベテラン猟師とかで、自然の意思を何となく感じたりできたりする人とかもいるから、そっちを目指すのもありかも」
特にカリンなんかは、完全にそっち側だろう。
「ん? どうかした?」
目は口ほどにものをいう。みんな同じことを考えたみたいだ。
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