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真相と永遠の愛
しおりを挟む全身の至る所に赤い花を咲かせ、安心しきった表情で眠る亮太の黒髪を梳きながら、悟はどこかへ電話をかけていた。
二度目のコールで聞こえてきた声は、在学生が聞いたら別人だと思うほど落ち着いた大人の色気漂う低音。
「……――はい、邑瀬です」
繋がった相手は邑瀬智紀(むらせ ともき)
大学時代、二人が所属していたゼミの教授だ。
悟は元生徒であるにもかかわらず、気さくな口調で邑瀬に告げる。
「計画は無事終了した」
「ああ、やっとですか。おめでとうございます。高峰君はそこにいるんですか?」
「俺の横で寝ながら涎垂らしてる」
「それはよかったですね」
邑瀬もとくに気にした様子もなく言葉を返した。会話の雰囲気からも二人の付き合いが長いことが伺える。
「ではこれにて契約満了ということで、保留になっていた残りの報酬よろしくお願いしますね」
「わかってるって、色乗せて振り込んどくよ」
「おや。予定よりもいいことがあったんですか?」
「……まあな」
悟が寝ている亮太の頬を指先で突くと、むずかるように眉を寄せた亮太の口から「悟さん……もう、無理です……」と苦言が漏れた。
あまりにかわいい寝言に悟は熱い溜息を吐く。
「はあ……ブチ犯してぇ……」
「無理やりは駄目ですよ」
「そんなもったいないことしねぇって。ちゃんと亮太の許可取ってからするよ」
「お熱いことで。高峰君もあなたに惚れられたのが運の尽きでしたね」
「死ぬまでベタベタに甘やかすんだから、むしろ幸運だろ」
「ラッキースケベはあなたの方でしたね」
「ははっ、間違いねぇ。お前にもラッキースケベが発動した時は正直殺してやると思ってたが、しなくてよかったよ」
悟の口調こそ穏やかだったが、言葉の端々に本気を感じて邑瀬は一瞬沈黙する。
だが邑瀬もプロだ。
違和感が出ないタイミングでわざと明るい調子でふるまい誤魔化した。
「いやー、まさか儀式の際に私の髪の毛も入ってしまってたとは気がつきませんでした。その説はすみません」
「もういいさ。あれがあったから余裕こいてないで徹底的に手に入れないとって俺も腹括ったしな。お前が責任取って亮太に虫が寄らないよう見張ってくれてたおかげで俺も準備に集中できた。三年で迎えに行けたのは奇跡だ」
「私も驚きましたよ。まさかたった三年で前島コーポレーションの重役にまで上り詰めるとは思いませんでした。愛の力は偉大ですね」
「それだけ亮太がかわいいからな」
「はいはい。では切りますね。もうあなた方とお会いすることもないでしょうが、末永くお幸せに」
「ああ、ご苦労さん」
プツッと切れる音とツー……ツー……と続く機械音を最後に、悟は邑瀬の番号をケータイから消した。
これで亮太が真相に気づく可能性は無くなった。俺がうっかり洩らしてしまわない限りは、永遠に……
「んぅ……」
寒くなったのか、腰回りだけシーツが掛かった亮太が温もりを求めて悟の腰にしがみついた。その際どういう偶然か、亮太の片手が器用に悟の性器を掴んだ。
触り心地に違和感があるようで、確かめるようににぎにぎと指を動かしたり、上下に撫でたりし出す。
これで寝ているんだから、本当に気が狂うほど愛おしい。
このまま意識のない亮太にイカされるのもいいし、射精の直前で起こして顔射するのも興奮する。
「はあ……贅沢な悩みだぜ、まったく」
とりあえず亮太の愛撫を堪能するために後ろに両手をついて、脚を寛げた。
本当にラッキースケベさまさまだ。
「んっ、亮太、はあ……もどかしい……けど、いい……っ」
意思のない動きは決定的な刺激は与えず、ゆるゆると性器を弄ばれているような感覚が逆にエロい。
決めた。このままにしよう。
俺がイクのが先か、亮太が起きるのが先か、試してみるのも一興だ。
ぜんぜん昇り詰める気配のないぬるま湯のような快感を味わいながら、俺は興奮で乾いた唇を舐めた。
ーーゆっくりいこう。焦ることはない。
亮太はもう、俺だけの亮太になったんだから。
これから先、死が二人を分かつまで、たっぷりある時間を想像し、悟は人生最大の幸福を噛み締めて、甘い吐息を吐き出した。
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