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また婚約破棄?
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「マリア=アナベル。貴方との婚約を、こんどこそ破棄させて貰う!!」
「お断りします」
私は少し呆れたような声音でそう答えました。
いったい今度はどうしたというのでしょうか。
「俺はエリーザ連邦に留学する!」
「また突然どうしてそんなことを?」
北方の国エリーザ連邦。
様々な民族の納める小国群が、いつしか連邦国家となり力を増した新しい国でしたわね。
「先日、王宮に正式に俺を留学生として招きたいという使者がやって来てな。お前から逃げ……いや、新しい国の技術を学んでこようとおもったのだ」
「今、私から逃げると言いましたか?」
「言ってない! 断じて言ってないぞ!」
相変わらず嘘をつくときに目が泳ぎまくっていますね。
「それで、何故留学するのに私との婚約破棄が必要なのですか? 別に婚約したままでも何の問題もございませんでしょう?」
私がそう尋ねると、ガート様はここぞとばかり、その理由をまくし立て始めました。
彼が言うには、留学がどれほどの期間かはわかってない。
現地で学ぶ内容によってはもしかすると十年以上もこの国を離れる可能性もある。
なので、私をその間ずっと婚約者として縛っておく訳にはいかない。
そこで、婚約を解消する事で私が他の者の所に嫁ぐことが出来るだろう。
心苦しいが、私のことを思って決断したことだから、婚約解消を受諾して欲しい。
どうやらガート様は、私に対する言い訳を必死に考えたようですが、相変わらずその内容は穴だらけで呆れるしかありません。
私は笑いをこらえるのに必死で眉根を寄せてうつむきました。
「泣いてるのか……?」
どうやらガード様は私が苦しそうな表情を浮かべているのを見て、泣いているのだと勘違いしたようでした。
その声音は私を心底心配しているようで。
相変わらず本当は優しいお方です。
「いいえ、突然のことに少し驚いてしまって」
私はそう答えると顔を上げて微笑みます。
そして、私はこう答えました。
「ガート様が私のことを心から心配してくれていることを理解しましたわ」
「で、では婚約を解――」
私が素直に婚約解消に応じると思ったのか、ガート様が嬉しそうな声を上げます。
ですが、私が彼を逃がすわけがありません。
「ですので少しの間考えさせてくださいませ」
「少し……とはどのくらいだ?」
今までは速攻でお断りし続けていたので、今回のように「考える」という返答に希望を見いだしたのでしょう。
ガート様は嬉しそうな顔を隠せないままそう尋ねます。
それに対して私は少しだけ考えるそぶりを見せると、こう答えました。
「十日ほどでいいのです。それで決心が付くと思いますので」
私は態とらしく悲しそうな、か弱そうな表情を浮かべガート様を涙で潤んだ目で見つめかえします。
もちろんこの涙は演技です。
私は自由自在に涙を流すことが出来ましてよ。
「……わかった。では先方にもそう伝えておこう」
ガート様はさすがにそんな表情の私に対して罪悪感を覚えたのか、目線をそらしながらそう答えたのです。
「ありがとうございます。それでは失礼させていただきますわ」
私は最後までしおらしい演技を崩さないまま部屋を後にしました。
さて、これから忙しくなりそうですわね。
私は部屋を出た途端にいつもの不敵な表情に戻すとアナベル家の屋敷へ急ぎ戻るのでした。
「お断りします」
私は少し呆れたような声音でそう答えました。
いったい今度はどうしたというのでしょうか。
「俺はエリーザ連邦に留学する!」
「また突然どうしてそんなことを?」
北方の国エリーザ連邦。
様々な民族の納める小国群が、いつしか連邦国家となり力を増した新しい国でしたわね。
「先日、王宮に正式に俺を留学生として招きたいという使者がやって来てな。お前から逃げ……いや、新しい国の技術を学んでこようとおもったのだ」
「今、私から逃げると言いましたか?」
「言ってない! 断じて言ってないぞ!」
相変わらず嘘をつくときに目が泳ぎまくっていますね。
「それで、何故留学するのに私との婚約破棄が必要なのですか? 別に婚約したままでも何の問題もございませんでしょう?」
私がそう尋ねると、ガート様はここぞとばかり、その理由をまくし立て始めました。
彼が言うには、留学がどれほどの期間かはわかってない。
現地で学ぶ内容によってはもしかすると十年以上もこの国を離れる可能性もある。
なので、私をその間ずっと婚約者として縛っておく訳にはいかない。
そこで、婚約を解消する事で私が他の者の所に嫁ぐことが出来るだろう。
心苦しいが、私のことを思って決断したことだから、婚約解消を受諾して欲しい。
どうやらガート様は、私に対する言い訳を必死に考えたようですが、相変わらずその内容は穴だらけで呆れるしかありません。
私は笑いをこらえるのに必死で眉根を寄せてうつむきました。
「泣いてるのか……?」
どうやらガード様は私が苦しそうな表情を浮かべているのを見て、泣いているのだと勘違いしたようでした。
その声音は私を心底心配しているようで。
相変わらず本当は優しいお方です。
「いいえ、突然のことに少し驚いてしまって」
私はそう答えると顔を上げて微笑みます。
そして、私はこう答えました。
「ガート様が私のことを心から心配してくれていることを理解しましたわ」
「で、では婚約を解――」
私が素直に婚約解消に応じると思ったのか、ガート様が嬉しそうな声を上げます。
ですが、私が彼を逃がすわけがありません。
「ですので少しの間考えさせてくださいませ」
「少し……とはどのくらいだ?」
今までは速攻でお断りし続けていたので、今回のように「考える」という返答に希望を見いだしたのでしょう。
ガート様は嬉しそうな顔を隠せないままそう尋ねます。
それに対して私は少しだけ考えるそぶりを見せると、こう答えました。
「十日ほどでいいのです。それで決心が付くと思いますので」
私は態とらしく悲しそうな、か弱そうな表情を浮かべガート様を涙で潤んだ目で見つめかえします。
もちろんこの涙は演技です。
私は自由自在に涙を流すことが出来ましてよ。
「……わかった。では先方にもそう伝えておこう」
ガート様はさすがにそんな表情の私に対して罪悪感を覚えたのか、目線をそらしながらそう答えたのです。
「ありがとうございます。それでは失礼させていただきますわ」
私は最後までしおらしい演技を崩さないまま部屋を後にしました。
さて、これから忙しくなりそうですわね。
私は部屋を出た途端にいつもの不敵な表情に戻すとアナベル家の屋敷へ急ぎ戻るのでした。
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