とある情景 短編集

とある情景 （衝動）

「続いてのニュースです。
大阪府堺市で連続殺人事件が発生し、今だ犯人の行方はわかっておりません」

殺人現場であろう場所でアナウンサーが真剣な面持ちで事件のあらましを説明している。

切迫した声がより、事件の恐ろしさを物語っている。

世間はあらゆる悪によって恐怖に脅かされていても、みんな自分は無関係だとどこかで思い込んでいる。
事件の傍観者として眺めているのだろう。

そんな僕も今、朝食を取りながら他人事のようにニュースを観ているわけだが。

「防犯カメラに写っている男は"勝堂　勝"という男で以前にも殺人で逮捕されたことがあるようです」

どうやら防犯カメラで男の名前は特定できたようだ。

これなら逮捕されるのも時間の問題だろう。

きっとみんなそうおもっているはずだ。

朝食を食べ終え、食器をシンクへ持っていこうとしたときインターホンがなった。

「ゆうびんでーす！」

と外から声をかけられる。

僕は玄関に向かい、チェーンを外し鍵を明け扉を開いた。

「こちらにサインをお願いします！」

配達員のお兄さんは爽やかに言った。

僕はそんなお兄さんに好感を持った。
きっとこの人は善人と言われる部類の人であり、さっきのニュースの容疑者とは全くの正反対の性格なのだろうと思った。

そんなことを思いながら僕は受取サインを書いた。

勝堂と書いた。

配達員のお兄さんはありがとうございますといって去っていった。

やはり世の中平和ボケしていると僕は思う。