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第一章
第8話 おでかけ
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やってきました、ホームセンター!
家具や家電、日用品雑貨からペット用品。様々な物が陳列される中、僕と三笠先輩は収納ボックスがあるコーナーへと向かった。
「へぇ、色々あるんだね」
「三笠先輩、来たことないんですか?」
「うん。必要ないから」
「ははは……」
笑うしかない。
そして、片付けが出来ない人の感覚が分からない。
「とりあえず、洋服入れる引き出しとカラーボックスがあれば大丈夫だと思うんですけど」
僕も収納のプロという訳ではないので、母譲りの収納方法しか知らない。
ちなみに三笠先輩の服は、コインランドリーで洗濯した後、そのまま部屋の端のほうに山積みになっている。着るのは毎回上の方だけなので、下の方にある物は全てシワシワだ。
「智の部屋にも、こういうの置いてあるの?」
「はい。僕のは……」
商品を端から見て歩けば、普段から見慣れた五段の衣類を入れる収納ケースに、何着かハンガーが掛けられる棒が一緒についている家具が見つかった。
「あ、これです。これ使ってますよ」
「へぇ、組み立て式なんだ」
「別料金で組み立ててくれたりもしますけど、勿体無いので僕がやりますよ」
「頼もしいね。でも、これじゃ二人分は入りそうにないね。こっちの大きいのにしよっか」
「二人分?」
「あ、ごめん。何だかデートしてる気分になっちゃって。つい」
慌てる三笠先輩。
その様子を見て胸がざわつく。
三笠先輩は、彼女と同棲ないし家にあげる気なのだろう。だから、二人分の収納スペースを。
今も『デートしてる気分』だなんて言って、彼女との未来予想図が出来上がっているのかもしれない。
「部屋がちょっと狭くなりますけど、これくらいなら良いと思いますよ」
何故か苛立つ気持ちを抑えながら言えば、三笠先輩は困った顔で笑って応えた。
「でも、こんなにスペースあっても使い道ないかも」
「大は小を兼ねますから大丈夫ですよ。別に衣類しか入れれない訳じゃないですし」
「なるほど。じゃあ、うちにいる間は智が下二段使ってね」
「良いんですか?」
「毎回キャリーケースから出すの面倒でしょ?」
「まぁ……じゃあ、有り難く使わせてもらいますね」
見たこともない三笠先輩の彼女より先に使うことに、何だか優越感を抱く。
僕は、一体どうしてしまったのだろうか。
「智、何だか嬉しそうだね」
顔にまで出てしまっていたようだ。恥ずかしい。
「い、いえ。家具を見るの好きなので」
とりあえず、無理のある言い訳をして誤魔化した。誤魔化しついでに、近くにある衣装ケースを手に取った。
「季節モノの服を入れるのは、こんなので良いと思いますよ。使わない間は、押し入れに閉まっときましょう」
「分かった」
「じゃ、次はそっちの裏に回りましょう」
大きなカートに衣装ケースと衣服用の収納ケースを入れ、カートを押そうとすれば——。
「俺が押すよ」
三笠先輩に先を取られてしまった。
急いでカートの主導権を握ろうと、三笠先輩の横から持ち手を握る。
「ダメですよ。これは僕の役目ですから」
「僕のって、俺の買い物でしょ?」
「そうですけど、僕が押します」
そうしないと、周囲の人からマネージャーもといパシリ要因みたいな目で見てもらえないではないか。
道中も三笠先輩は女性からチラチラ見られており、店内に入ってからも、通りすがる人は必ず振り返る。今も陰からこっそり見られているが、ひそひそ声はどれも似たようなものばかり。
やや斜め後ろにいる男は何者か……みたいな内容の会話が聞こえてくるのだ——。
『見て見て! あの人、超イケメン!』
『本当だ。モデルさんかな?』
『あり得るよね。でも、後ろのあれは何だと思う? 友達かな?』
『まさか』
『だよね。マネージャー的な?』
僕の読みは当たっていた。
悲しいが、僕と三笠先輩では釣り合わない。先輩後輩関係、ましてや友人関係なんてなれる存在ではないのだ。
それを思い知らされ、悲しくなる。一緒にいちゃいけないんだって思ってしまう。だから、パシリ要因と思ってもらうことで、自分の心を守っている。
「って、三笠先輩。何を……」
僕の手の上に、琥太郎が手を置いてきた。
「智にばっかり押させる訳にはいかないから。一緒に押そう」
「は?」
想定外の事すぎて、思考が止まる。
そして、長されるままにカートを一緒に押しながら歩く。
「いやいやいや、おかしいですって! 大の男が二人してカート押すなんて!」
「良いじゃん。二人の方が楽チンだし」
三笠先輩の手が上に被さっているので、離すことも出来ない。こんなことなら、三笠先輩に任せておけば良かった。
こちらを覗き見していた人達は、見ちゃいけないものを見たような顔をして散っていく。
「カラーボックスってこれ?」
「……はい」
僕の心臓は、またもやドキドキさせられている。
そして、三笠先輩との買い物は、またまだ続く————。
家具や家電、日用品雑貨からペット用品。様々な物が陳列される中、僕と三笠先輩は収納ボックスがあるコーナーへと向かった。
「へぇ、色々あるんだね」
「三笠先輩、来たことないんですか?」
「うん。必要ないから」
「ははは……」
笑うしかない。
そして、片付けが出来ない人の感覚が分からない。
「とりあえず、洋服入れる引き出しとカラーボックスがあれば大丈夫だと思うんですけど」
僕も収納のプロという訳ではないので、母譲りの収納方法しか知らない。
ちなみに三笠先輩の服は、コインランドリーで洗濯した後、そのまま部屋の端のほうに山積みになっている。着るのは毎回上の方だけなので、下の方にある物は全てシワシワだ。
「智の部屋にも、こういうの置いてあるの?」
「はい。僕のは……」
商品を端から見て歩けば、普段から見慣れた五段の衣類を入れる収納ケースに、何着かハンガーが掛けられる棒が一緒についている家具が見つかった。
「あ、これです。これ使ってますよ」
「へぇ、組み立て式なんだ」
「別料金で組み立ててくれたりもしますけど、勿体無いので僕がやりますよ」
「頼もしいね。でも、これじゃ二人分は入りそうにないね。こっちの大きいのにしよっか」
「二人分?」
「あ、ごめん。何だかデートしてる気分になっちゃって。つい」
慌てる三笠先輩。
その様子を見て胸がざわつく。
三笠先輩は、彼女と同棲ないし家にあげる気なのだろう。だから、二人分の収納スペースを。
今も『デートしてる気分』だなんて言って、彼女との未来予想図が出来上がっているのかもしれない。
「部屋がちょっと狭くなりますけど、これくらいなら良いと思いますよ」
何故か苛立つ気持ちを抑えながら言えば、三笠先輩は困った顔で笑って応えた。
「でも、こんなにスペースあっても使い道ないかも」
「大は小を兼ねますから大丈夫ですよ。別に衣類しか入れれない訳じゃないですし」
「なるほど。じゃあ、うちにいる間は智が下二段使ってね」
「良いんですか?」
「毎回キャリーケースから出すの面倒でしょ?」
「まぁ……じゃあ、有り難く使わせてもらいますね」
見たこともない三笠先輩の彼女より先に使うことに、何だか優越感を抱く。
僕は、一体どうしてしまったのだろうか。
「智、何だか嬉しそうだね」
顔にまで出てしまっていたようだ。恥ずかしい。
「い、いえ。家具を見るの好きなので」
とりあえず、無理のある言い訳をして誤魔化した。誤魔化しついでに、近くにある衣装ケースを手に取った。
「季節モノの服を入れるのは、こんなので良いと思いますよ。使わない間は、押し入れに閉まっときましょう」
「分かった」
「じゃ、次はそっちの裏に回りましょう」
大きなカートに衣装ケースと衣服用の収納ケースを入れ、カートを押そうとすれば——。
「俺が押すよ」
三笠先輩に先を取られてしまった。
急いでカートの主導権を握ろうと、三笠先輩の横から持ち手を握る。
「ダメですよ。これは僕の役目ですから」
「僕のって、俺の買い物でしょ?」
「そうですけど、僕が押します」
そうしないと、周囲の人からマネージャーもといパシリ要因みたいな目で見てもらえないではないか。
道中も三笠先輩は女性からチラチラ見られており、店内に入ってからも、通りすがる人は必ず振り返る。今も陰からこっそり見られているが、ひそひそ声はどれも似たようなものばかり。
やや斜め後ろにいる男は何者か……みたいな内容の会話が聞こえてくるのだ——。
『見て見て! あの人、超イケメン!』
『本当だ。モデルさんかな?』
『あり得るよね。でも、後ろのあれは何だと思う? 友達かな?』
『まさか』
『だよね。マネージャー的な?』
僕の読みは当たっていた。
悲しいが、僕と三笠先輩では釣り合わない。先輩後輩関係、ましてや友人関係なんてなれる存在ではないのだ。
それを思い知らされ、悲しくなる。一緒にいちゃいけないんだって思ってしまう。だから、パシリ要因と思ってもらうことで、自分の心を守っている。
「って、三笠先輩。何を……」
僕の手の上に、琥太郎が手を置いてきた。
「智にばっかり押させる訳にはいかないから。一緒に押そう」
「は?」
想定外の事すぎて、思考が止まる。
そして、長されるままにカートを一緒に押しながら歩く。
「いやいやいや、おかしいですって! 大の男が二人してカート押すなんて!」
「良いじゃん。二人の方が楽チンだし」
三笠先輩の手が上に被さっているので、離すことも出来ない。こんなことなら、三笠先輩に任せておけば良かった。
こちらを覗き見していた人達は、見ちゃいけないものを見たような顔をして散っていく。
「カラーボックスってこれ?」
「……はい」
僕の心臓は、またもやドキドキさせられている。
そして、三笠先輩との買い物は、またまだ続く————。
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