【本編完結 次の続編始めます】白と金の間〜金色の魔法使い〜

ビーバー父さん

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先代皇帝

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「私が執事として皇宮に入れたのは今の陛下がお生まれになった年でした。
 姉は私を弟だと分かると、皆がいない部屋に呼び、泣き崩れました。
 公国では皇妃になると祝福を受けて送り出してくれたのに、自分では無かった。
 本当の意味での皇妃は側妃なのだと。
 姉と先代陛下は枕を共にした事も無かったと言っていました。
 当然、子に恵まれるはずもなく、どんなに望んでも懇願しても、白い婚姻を続ける先代陛下に、離縁を求められました。
 子まで成したのだから、傀儡はいらないだろう、と」

 自分が、自分だけが良ければそれで良いのか?!

「酷すぎる、酷すぎるよ!」

 我慢ができなかった。
 まるでベオクが僕にした事みたいに思えたからだ。

「本当に酷い話だ」

 グランはこの事を知っていたのだろうか?
 でもこの狼狽ぶりを見る限り、知らなかった事実なのだろう。

「はは、当時姉に味方はいませんでした。
 寵愛を受ける側妃、それに取り巻く寄生虫の様な貴族たち、誰一人、皇妃が求める者を理解しようとしませんでした。
 孤独の中で離縁を求める事が罪でしょうか?
 唯一の方へ愛を求める事が間違っているのでしょうか?
 この皇宮という檻の中に、自由に空を飛んでいた鳥を他の鳥のえさにするために捕まえ、羽根を折られ逃がさないようにされた鳥が、逃げたいと思うのが罪なのでしょうか?
 姉は、十分我慢しました。
 姉はテオドア様が生まれた時、皇太后として一線を退くのではなく、廃位を希望されました。
 この帝国を出て、故郷である公国へ帰りたいと。
 ですがそれを許さなかったのは現皇帝陛下でございます。
 公国の貴族へ堕ちる事を許しませんでした」

 皇妃だったから? 秘密が漏洩するから?
 どうして公国から騙して連れて来たんだ!

「父上は、一度裏切られた公国へ戻られても、その命の保証が無いとお考えになった、と聞いている」

「子も成さず、傀儡の皇妃だと分かって公国は姉を見捨てました。
 もうずっと、姉は壊れているのです。
 憎くて憎くて、愛しい先代陛下を想い、壊してはいけない愛しい方の子の陛下を、憎まないように必死に心を殺して壊れたのです。
 ラグランジュ殿下にはお分かりにならないでしょう?
 狂いそうな程愛しい人が、自分を選んでくれたはずの人が、本当は自分の事など何も考えてもいなくて、利用するためだけに偽りの愛を囁き逃げ出せない場所に連れて来られ、捨て置かれる惨めさを」

 この時自白魔法ではなく、自ら暴露したかった怒りだったのではないだろうか、そう思った。

「だが、それなら先代にその矛先を向けるべきであろう」

「向けてきましたよ。
 姉は、側妃に憎しみの心も向けず、ただ先代陛下に愛を説き解放だけを求めて来ました。
 それが許されなかったから、今があるのです! 
 姉が生きるはずだった、愛される幸せな時間を返してください!
 私が知ってる姉は、バカみたいに声を立てて笑う、それこそ太陽の様な人でした。
 この国に来て、そんな風に笑う姉の姿を見た事がありません!
 笑わないんです! 笑えないんですよ! 貴方たち皇族が姉から笑顔を捨てさせたんだ!」

 慟哭に近い叫びに、僕らは何も言えなくなっていた。
 
 
 
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