オッドアイの守り人

小鷹りく

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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

フェリー

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次の日、昼まで各々の捜索は続け、ホテルに戻って報告会を終え、早目の夕食を済ますと着替えてロビーに集まることにした。

 マカオのカジノに入るにはドレスコードはほぼないと言っていい。欧米のカジノには一定のドレスコードがあるのが普通だが、マカオは普段着の人でも入れるそうだ。ドレスコードがないと言っても春成様に会うのだからと、私はタキシードを着た。

 フロントに近いエレベーターが開き、誰かが下りるとフロアに少しのどよめきが起こる。見てみるとそれは東と石原だった。

 東は黒のベアトップのロングドレスを着て、髪を全て括り頭の上で止めて、ダイヤのネックレスとピアスを付けて、いつもの眼鏡はコンタクトにしていた。普段隠している秀麗な顔を惜しげもなく晒し、美しい凜としたその姿に誰もが見とれている。まるで有名モデルのようだ。石原もタキシードを着ており彼女を誇らしげにエスコートしている。

 石「染谷様、お待たせしました。」

 染「石原、鼻の下が伸びてるぞ。」

 石「そんなことありません!嘘です!」

 石原は素直に鼻の下を触った。

 染「ふふっ、冗談だよ。東、綺麗だな。」

 東「ありがとうございます。こんなときしか着飾るとき無いので。」

 そう言ってにこりとすると、石原は横で顔を真っ赤にした。

 フェリー乗り場までタクシーで移動し、出国手続きをしてから船に乗り込む。

 人が多く、雑多な感じがするが、またそれが異国情緒があっていいんだろう。楽しそうな日本人客も多く見受けられる。その中でも石原と東は目立っていた。カップルでこんなに着飾っている人は周りに余りいないからだ。私も悪目立ちしているんだろうな…。どうせならマカオのホテルで着替えればよかったか。

 三人でいると声を掛けられた。「芸能人の方ですか?」「モデルの方ですか?」「日本人?」中国人・香港人・日本人誰彼構わず話しかけてくる。こうなると殊更現地で着替えるべきだったと後悔せざるを得なかったが、東は一人楽しそうだった。

 染「楽しそうだな、東…。」

 東「はい。こんなにちやほやされるの初めてです。」

 石「現地で着替えるべきでしたね。」

 染「あぁ…。まぁ勝手が分からなかったから仕方ないさ。」

「写真とってもいいですか?」

 そう言って現地人らしき人が高そうなカメラを構える。
 染「いえ、困ります。」
 断ったがパシャリパシャリと何枚か撮って去っていった。

 染「無法地帯だな…。」

 東「いいじゃないですか、旅の恥は掻き捨てっていうし。」

 染「どこでも恥はかきたくないもんだ。どうした、石原?」

 石「…何でもありません。」

 石原はどこか怒っているように見えた。

 フェリーの中は冷房がキンキンに効いていて寒いほどだった。肩を出している東が寒がる。

 石「ほら、そんなに肌出してるから寒いんだろう?」

 石原が自分の着ていたタキシードの上着を彼女にかける。

 東「ありがとう…。」

 素直に上着を借りて彼女は見えないように上着の下からそっと石原の手を握った。石原はまた顔を赤らめていたので、私はそ知らぬ顔をして一時間の船旅の間、仮眠をすることにした。
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