オッドアイの守り人

小鷹りく

文字の大きさ
134 / 231
第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

ルームサービス

しおりを挟む
…―――――トゥルルル・・・・・




 電話の音だ。何だ…。




 ――――――トゥルルル・・・・・





 寝ていたベッドはキングサイズで、ベッド脇のテーブルの室内電話へ手を伸ばそうとも一旦体を起こさないと届かなかった。重たい体を起こして受話器を手に取り耳に当てる。




「…――はい…。」




『おはよう、良臣。…まだ寝ていたか?』




 しまった、寝すぎたか?!

 サイドテーブルにおいてあった腕時計を見たらもう八時半だった。

 この時間まで寝るとは、夕べの緊張が体には相当応えたようだ。




「あ!はい!申し訳御座いません、春成様!」




『いや、構わんが、もう起きているかと思ってな。すまん。』




「いえ、とんでも御座いません――。もう起きねばならない時間でした…。」




『そうか。今使いをやった。情報屋の連絡先を封筒に入れてある。受け取ってくれ。』




「早速ありがとう御座います!恐縮です。」




 電話越しの見えない相手に寝癖頭を下げながら私はお礼を言った。




『幸運を。』




「はい、ありがとう御座います。」




 そう言うと電話は切れた。




 切った途端今度は部屋のチャイムが鳴った。




 ――ビーッ




 バスローブを羽織ながら、鍵を開けてドアを開くと、ホテルのスタッフが大きなワゴンを二台押してルームサービスを持ってきていた。




「おはようございます、ミスターソメヤ。」




「おはよう、ルームサービスは頼んでいないが…。」




「ミスターカナミからです。これを」

そう言って彼は封筒を渡した。情報屋のデータだ。




「――ありがとう。あぁ、ルームサービスも彼から?中へ頼むよ…。」




 私はドアを開き二人のボーイを中へ招いた。




 そして二人はキッチン前にあった丸い円卓の上に白い綿のクロスをさっと広げると、運んできた料理をてきぱきと並べ出した。カトラリーとグラス類を並べ終わると、クロワッサンの入ったバスケットを置き、オムレツとウインナーと野菜のソテーが乗っている皿を三つ準備し、飲み物が入ったポット

を何種類もワゴンの上に乗せ、最後にテーブルの真ん中に赤いバラが一輪入った花瓶をそっと置くと、私にお辞儀をした。




「…、あぁ、ちょっと待ってくれ。」




 チップが必要だ。私は財布からHKDを何枚か取り出し二人に渡すと、二人は空になったワゴンを一つ持ち出し部屋を出た。




「贅沢だな…。」




 一人でポツリと呟く。三つのオムレツを見て思い出した、そうだあの二人も起こさねば。




 ツインルームのドアをノックすると、石原がドア越しに返事をした。




『――あっ!!はいっ!起きました!すいません!。』




 先ほど春成様に返事した私と同じだ。少し前の焦った自分を見ているようで少し笑ってしまいそうだ。




「ルームサービスが来たんだ。朝食にしよう。」




『はい!直ぐ行きます!』




 それを聞いて私は自分の寝ていた部屋のバスルームに向かい、顔を洗い身支度を整えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

fall~獣のような男がぼくに歓びを教える

乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。 強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。 濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。 ※エブリスタで連載していた作品です

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...