オッドアイの守り人

小鷹りく

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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

一人で

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部屋に戻ってドアを開けると、カイは机の上に同じ大きさの小さいナイフを三本、結束バンドを一束、それにライターと薄手のオイル缶を並べてそれらを眺めていた。見下ろす冷ややかな視線に少しゾッとする。

「戻ったか。」

 振り向いた彼の目は静かな怒りを孕んでいた。

「ルオ達、不安がってた…。これからどうしようって。俺もだけど…。」

「ああ、代償は払ってもらうさ…。」

 そう言って並べているそれらをもう一度見ると、ゆっくり、一つずつ確かめるようにポケットへ入れていった。何だか怖い。これが本当の"フィクサー”の時のカイなのか。

「——もう出かけるのか?」

「ああ。ジェスを早く連れ戻したい。」

「…準備ってそれだけなのか?」

「ああ。」

 殆ど身一つで戦う気なんだな。この前一緒に行ったクルーズ船の仕事とは訳が違うのに武器は小さなナイフだけだ。あまりの軽装備に驚く。肉弾戦ということなのか…。普段口数の少ないカイは更に無口だった。
 

こんなに早く動くとは思ってなかった。どうしよう…何も準備できてない。気が焦るがカイにばれない様について行かないと。

 時計を見ると時刻はもうすぐ十時になろうとしていた。

 心の孤独を体現するようにカイは一人で「行って来る」とだけ呟いて後ろを振り返りもせず部屋を出た。鉄の階段を降りていく音がする。

 なんだよ、愛想ねぇな…、いや、こんな時に愛想振りまいている場合じゃねぇか。彼の仕事には危険なものもあると聞いたがこんなに淡々と行動するものだとは…。普段の柔らかい雰囲気を持つ彼からは想像できなかった。



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