オッドアイの守り人

小鷹りく

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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて

イけないキス 4

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「さっき、俺が寝てる間にしただろ!?」

「したけど、お前は寝てた。俺をヨシオミだと思ってしてたんだ。起きてるお前とちゃんとキスしてみたい。このキスを最後にするんだ。今の俺じゃアイツには何も叶わない。でもお前の事簡単に諦められるほど単純に好きになった訳じゃない。だから、最後にずっと欲しかった本気のキスをくれ。そしたらその思い出を胸にきっと俺は前に進めるから。」

「…本当にキスだけか?」

「ああ、キスだけだ。」

「本当だぞ。」

「しつこいなぁ、本当はキス以上の事したいんだけど、我慢しなきゃいけねぇだろ。怯えてないでもう一度だけキスさせてくれ…。キスの後はただの友人に戻るから…。」

 俺はそっと構える彼を抱き寄せた。アイツはカイを守るためなら言葉通り命を張ってカイを守るだろう。アイツに任せていれば安心だ。アイツを追い越すためには俺は色んな意味でカイを守れる人間にならないとダメだ…。俺が本当にカイに相応しい人間になれるまでの間、少しの間アイツに任せてやるんだ…。

 ぎゅっと抱き締めると、怖がるようにびくりと体を動かす。おでこにキスを落とし、頬にもキスをすると固まっていた彼の肩から力が抜けた。それでも一文字に閉じられた唇は開いてくれない。さっきはあんなに素直にキスしてたのに…。

「口開けて…。ちゃんとキスしたい。」

「…ぅん…。」

 恥ずかしそうに口をへの字に一度曲げると、渋々唇がゆっくりと開く。

「集中して見ちゃうから余計にエロいだろ…。煽ってんのかよ。」

「違っんっ…んぅ…。」

 俺だと意識しているキスは、彼の情熱が削がれている分どこかしら物足りなく感じたが、心を許してくれている事が堪らなく嬉しかった。キスをする事は許されている。この先の可能性が無いわけじゃないんだと、そう思えてホッとする。唇を舐め、舌を吸おうとすると今度は舌が逃げた。

「舌出して。」

「…っゃだ。」

「ちゃんとしたキスしてくれないと最後にできない。」

「…お前、性格悪くなったぞ。」

「カイが買被り過ぎてただけだよ。」

 恥ずかしそうに仕方なくおずおずと口を少しだけ開き舌先を出すと顔を真っ赤にした。

「だから余計にエロいんだってば。分かっててやってるのか。」

 俺は差し出されたその甘い甘い舌を柔らかく撫でるように舐める。先端が感じるようで優しく吸うと体を震わせて感じていた。貪るように口の中を蹂躙すると息を荒くして熱を逃がし、縋りたいのに縋ってはならないと自制しているようだった。

 嗚呼、いつまででもこうしていたい。ずっとキスしていたい。延々と繰り返し与えられる刺激に耐え切れずにカイは抗議しだした。

「…っハァッ…もぅ…いいだろ?…もっ…んっ…。」

「厭だ…止めたくない。キスだけなんだから、もうちょっとだけ…。」

「もぅ…舌がじんじんする…。」

「だからそういう事言って俺を煽るんじゃねぇよ、キスしか出来ない俺の身にもなれ。」

「…ぅっ…んんっぅ…また…。」

 潤んだ瞳がもう止めろと訴えかける。だけどそんな目をされると尚更身体に刻み込ませる様に舌を深く絡ませた。俺は満足できるまで一時間ずっと彼の口を貪り続けた。

 一生この甘い官能的なキスを忘れない。次に会うその日まで、待ってろよ、カイ。俺はお前を守れる強い男になって見せるから…。

 長いキスの後、俺は部屋を出た。



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