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マリア像の呪縛
(3)
しおりを挟むしかし、心臓のバクバクが少しおさまり、どうにかパニックを回避できそうな気がしてくると、茉莉は恥ずかしさと申し訳なさに襲われ、
「ごめんなさいね、私、取り乱してしまって。
本当にごめんなさい。
すっかり幻滅されてしまったことでしょうね」
「ううん、全然、そんなこと……」
呆然としたまま、首を何度も横に振る美尋に、茉莉はぎこちない笑顔で応え、意を決したように、
「ただ……」
と、続ける。
「私がきちんと説明しておけばよかったんです。
前に、恋愛には興味がない、という話をしましたが、じつは興味がないだけではなく、そういうことが本当に苦手なんです。
だから、そういうことにつながるようなことも一切しないでおこう、と、何年も前から決めていて。
美尋さんはそれを知らないのだから、無理ありませんものね。
本当に、さきほどはごめんなさい」
「ううん、あたしのほうこそ、茉莉さんの気持ちも知らずに、ごめんなさい。
でもさ……ひとつだけ言わせて。
この男子ね、すっごく優しくて、浮わついた感じも全然なくて、この手紙もラブレターとかではないみたいなんだ。
つまり、別につきあわなくても、いいお友達になれるんじゃないかって、そう思わせる人だから、紹介してみたくなって、あたし、よけいなことしちゃったんだけどね」
彼がいい人であることだけは伝えたくて、そのうえで、話をうまく終わらせようとしたのだが……
「お友達?」
筋張った細い首を軽くかしげ、つぶやくようにぽつり。
そして、
「私、お友達は、美尋さんがいてくだされば、それで十分ですから。
男子はもとより、他の女子ともお友達になるつもりはありません」
最近、ますます大きくなった目をさらに見開き、美尋の顔をじっと見つめる。
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