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教理VS病理
(7)
しおりを挟む後輩は声をかける少し前から、茉莉、いや、正確には、自分がこれまで見たこともないほど痩せた女の子、の存在に気づいていた。
手首と変わらないような二の腕、太腿とはとても呼べない貧しい腿、肘や膝は骨が飛び出し、尖っているのが見るからに痛々しい。
同じクラスに160センチで38キロしかない子がいて、モデルより細いのではといつも感じているのだが、それとは次元の違う病的な痩せ方。
しかも、ストレッチのようなことを始めると、あちこちの筋があらわになり、それより何より、そんな体操みたいなことをやる意味がまったくわからない。
だが、その顔が自分のほうにちらっと向いたとき、それがかなりやつれているとはいえ、見覚えのある、憧れの先輩のものだということに、彼女は目を疑った。
どうしちゃったんだろ……
あ、そういえば、あの日、ダイエットしてるって言ってたっけ。
でも、こんなの、いくらなんでも痩せすぎだよ。
「こんにちは。
本当にお久しぶりですね。
お元気でしたか」
そんな後輩の胸のうちなどつゆ知らず、茉莉はいつもの丁寧なあいさつ。
「あ、はい、あたしは全然元気ですけど……」
本来、ハキハキとして、調子がよすぎるくらいなのに、別人のように反応がにぶく、テンションも低いその様子に、どこか体調でも悪いのかと心配になった茉莉は、
「そうですか。
それならいいんですけど、あまり元気そうに見えないものですから」
しかし、後輩は、
「それより、先輩こそ、大丈夫なんですか」
さっきよりも強い、緊迫した語調で言われた茉莉は、ギクリとした。
それは想定外のようで、想定外ではなかったから。
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