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殉教と安息と
(3)
しおりを挟むあれ?
あそこに立ってるの、茉莉さんだ。
館内の涼しい場所で、座って待っていてくれればいいのに。
だが、そう思ったのは一瞬だけで、美尋はすぐに心配と恐怖を感じた。
数日ぶりに目にする茉莉の姿は凹凸のない人形のように細く、遠目で見ているせいかと思い直したものの、近づくにつれ、ますます人間離れした痩せ方になっていることを、やはり、認めざるをえなかったから。
が、とりあえず、あいさつが先だと我に返り、
「お待たせしちゃって、ごめんね」
「いえ、まだお約束の時刻の5分も前ですから。
なのに、美尋さんを謝らせるようなことになってしまって、ごめんなさい」
いつもの調子の茉莉にいくぶんホッとしながらも……
今日の服、痩せてるのをわざわざ強調しようとしているかのよう。
ノースリーブ以上の露出度で、右の肩と胸元が完全にあいているから、首筋と鎖骨、肋骨がむき出しになっていて、直視できないよ。
そういえば、前に読んだ本にこんなことが書かれていたっけ。
「拒食症の患者は、目に見えにくい部分に肉がついている、などと言って、痩せを否定するが、むしろその逆で、目に見えにくい部分はさらに痩せていることが多い。
つまり、制服などを着て、痩せすぎに見えるようなら、服に隠されている部分の痩せはいっそう深刻だったりする」
実際、オレンジ色のミニワンピは、かなり細身サイズに見えるのに、それでもぶかぶか。
ハンガーに引っかかっているみたいにひらひらしてる。
美尋は茉莉の腰あたりに目を落とし、この部分も骨がむき出しになっているのだろうか、と想像したが、ふと、言うべきことがあることに気づいた。
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