讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫

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膨れ上がる恐怖

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それからずっと、マッサージやら何やら試してみたものの、改善にはいたらず、茉莉は脚が目立たない着こなしに変更。
図書館の開館時刻に合わせて、家を出た。

美尋との待ち合わせ時刻までの1時間で、いろいろ調べて、浮腫みをすぐにとる方法が見つからないかと期待して。
だが、そんな魔法はどの本にも書かれていない。
それでも、原因を推定することはでき、即効性はなくても、改善するにはそれしかない、という方法にはたどりつくことができた。

普通の人には簡単な、でも、今の茉莉には何よりも困難な方法。

バランスよく食べる、それもたんぱく質をしっかり、なんて、無理だよ。
あぁ、なんでこう、うまくいかないの!

少し前の茉莉なら、炭水化物や脂質ほどには、たんぱく質への恐怖はなかったものの、最近は枝豆ひと粒すら口にできず、そういう意味で、たんぱく質不足は明らかだったが……

どうしたらいいんだろ。
もうすぐ、美尋さんと待ち合わせ時刻なのに。

え、美尋さん。
そうだ。

海で難破して、無人島に取り残された人が、救助してくれるかもしれない船を沖に見つけたように、茉莉はその唯一の友達なら、自分をなんとかしてくれそうな気がした。

そうだ、バイキング、一緒におつきあいしてもらえたら……

茉莉はこの日、先週そうしたように、ディナーバイキングに行き、体重維持のためという名目で、食べて吐くつもりでいたが、それを考え直し、浮腫み改善に効果がありそうなものだけを吐かずに食べる、ということを、すでに思いついてはいた。
しかし、ひとりではほどよく食べる自信などない。

でも、美尋さんと一緒なら……
できるかもしれない。
いや、残された方法はそれしかないのだから、できなきゃダメ。
ただ、美尋さん、おつきあいしてくれるかしら。

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