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最悪の審判、それでも…
(9)
しおりを挟む茉莉は身長の伸びが早く、小中学校を通じて、背の順で並ぶときはいつも、後ろのほうだった。
バドミントンを始めてからは、有利に感じるようにもなったが、ないものねだりというのか、小柄な女の子、たとえば、美尋のようなタイプへの羨望がずっとある。
もし私が美尋さんくらいの身長で、ダイエットを頑張れば、この子みたいな体型になれるのかな……
美尋さん、痩せてはいないけど、胸は私より小さそうだし。
そのときふと、バスの中でさっき触った胸の肉の感触がよみがえった。
肋骨の涼しげでカチッとした手触りとは真逆の、生ぬるくプニプニして、気持ち悪い感触が。
やっぱり私、もっと痩せなきゃ。
そりゃ、身長はもう縮められないけど、体重なら減らせる。
あと1キロであの子と同じだし、2キロであの子を追い抜けるんだもの。
そうだ、ダイエットの最終目標、31キロにしよう。
次の受診では、あと1キロ増えたように見せなきゃいけないのだけど、1、2キロの増減なんて、工夫次第でなんとかごまかせるはず。
貧血や肝機能の低下は、先生がおっしゃっていた食事や睡眠での注意点を、できる範囲で気をつければ、改善できるんじゃないかしら。
今のペースで頑張れば、夏休み前に達成できそうだから、ダイエットはそこでひと区切り。
夏休み中は勉強や、続けさせてもらえるなら部活に集中しよう。
よかった、これですべてうまく行くわ。
梅雨空に重くたちこめる灰色の雲みたいなどんよりした気分が、どこかに消え、茉莉は心が晴れ晴れとしてきた。
それから、パラパラと頁をめくるうち、今まで目標にしてきたあの人の姿が。
水着のコーデも載っていたけど、前ほど魅力は感じない。
他の部分の細さに不釣合いな胸のふくらみが、よけいなものに思えて。
今の自分もこんな感じ、いや、きっと、比較にならないほどアンバランスなんだ。
両手で服の上から両胸を押さえ、茉莉は必死に念じてみる。
あと2キロ、頑張って痩せますから、このよけいな肉がすっきりと落ちますように。
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