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~拓海~
沈黙
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「… ん-- お腹いっぱい… 拓海君は…?」
「ああ…めっちゃ、食った…ごちそうさま…」
「良かった…ねえねえ、私の特製の豚じゃが、どうだった…?胃袋つかまれた??」
「あ… ああ…普通に、美味しかった…豚じゃがな… 」
「胃袋は…?」瑠衣が、俺の方にいきなり身を乗り出してきて、思わず身体を引いた。
「ああ…まあ、つかまれた…かな…」
「ちぇっ…相変わらず、適当な返しだよね~今日仕事から帰って結構疲れてるにも関わらず、お鍋でコトコト煮込んで作ったんだよ~拓海君におふくろの味食べさせてあげたくてさ~さすがに今夜は月曜だし、いるだろうなって思って…てか私、おふくろじゃないけどね…ふふ…。」
「ん…や…ほんと、美味しかった…味、染みてたし…。」
本当に、美味しかった…。
なんか、やっと、食べ物の…味がしたような感覚だ…。
東京からこっちに戻ってもちろん何度か食事をしたが、美味しいと感じる心の余裕がなかったのかもしれない。
今日の昼なんて…
結局、アイツと行った店の、クリームなんとかのパスタ…
そういえばどんな味がしたっけ…美味かったような、うまくなかったような…
「… … …」
不意に、原田さんの言った言葉が頭をよぎる。
俺を狙っている人がいるから気を付けろ…。
そして、早速ランチに誘われてるし…って…?どういう意味だ…なぜそこで、そんな風に、話をつなぐ…?
ランチに誘って来たのは笠村だ…笠村課長…。
原田さんの話した順番に沿って、文脈だけをたどると、
ちょっと、おかしな結論に…結び付く可能性が数パーセント、あるのは俺の気のせいだろうか…。
男である課長が…笠村課長が、俺を…男である俺のことを、狙っている…?
いやいや、まさかの…BLかよ…俺もそのくらいの言葉は知っているが…
ないない、ないわ~~こんな身近なとこで、それはない…。
やっぱり、違うな…
全ては俺の、読解力のなさ…なのかも、しれない…。
「… … まさか、…だよな… …」思わず表に…そんな言葉が出てしまった。
「は…?何、なに?拓海君…」瑠衣が、目を真ん丸にして俺を見つめる。
「あっ… いや、別に… …」瑠衣に話せる内容じゃない…。
話せばきっと、何おかしな想像してんの、あり得ないだろうって、笑うに違いない。
「…やっぱり今日の拓海君は、最上級におかしいよ…話してよ、瑠衣、何でも聞くからさ…葉月ちゃんと何があったの…?話せばきっと、心が楽になるよ?瑠衣ちゃんにまかせなさい。」
「あ… うん… や、… 」
現実、今この瞬間は、笠村のことを考えていたが、瑠衣は当然俺が葉月のことを思い悩んでいると思ったらしい。
「やじゃない。とっとと話しなさい。さっき言ったじゃん、食べながら話すよってさ…。」
瑠衣が、ぷ~っと、子供のように頬を膨らませる姿を見て、本当に俺より年上かよと思いつつも俺は観念する。
「あ… あ… まあ、そうだな…サラッと聞いてくれよ…深くは聞かないでくれるなら…話すよ。」
「うん、聞かない…。拓海君が話せる範囲で本当にいいから、話して欲しい。」
「わかったよ。あのさ…実は… … … … …」
俺は、瑠衣の目を見て、これまでの葉月との経緯を、順を追って、ついに瑠衣に話すことにした。
もちろん、俺が葉月にしたあの…ひどい行為のことは、避けて…。
だが、あの男がちょうど俺が行った時間に葉月の家に来たことは、一応告げた…。
「… うん … うん… 」
瑠衣は珍しく、俺の発言に一切口を挟むことなく、ただただ頷いていた…。
ついでに、笠村のこともチラッと話して、女である瑠衣の意見を聞いてみようかなんて、ほんの少しだけ頭をよぎったが、なんとなくそれはやめておいた。
「… ま、そんな感じで…俺と葉月は、もう…無理だと、思う…終わったんだと、思う…。」
曖昧だが、そんな他人事のような言い方しかできない自分を不甲斐なく思う…。
カッコ悪いことこの上ないが…本当にそういう感覚なのだ…仕方ない…。
「… そっか… そう、だったんだ…喧嘩じゃなくって…そんな、感じ…へえ… 」
瑠衣は、しばらく…放心状態というかそれきり、不思議なほどに何も話さなくなった…。
どうしたんだろう…俺、瑠衣に、何かしたか…?
長い沈黙が続き過ぎて、
ようやく俺は、いぶかし気に、瑠衣を見つめた…。
「ああ…めっちゃ、食った…ごちそうさま…」
「良かった…ねえねえ、私の特製の豚じゃが、どうだった…?胃袋つかまれた??」
「あ… ああ…普通に、美味しかった…豚じゃがな… 」
「胃袋は…?」瑠衣が、俺の方にいきなり身を乗り出してきて、思わず身体を引いた。
「ああ…まあ、つかまれた…かな…」
「ちぇっ…相変わらず、適当な返しだよね~今日仕事から帰って結構疲れてるにも関わらず、お鍋でコトコト煮込んで作ったんだよ~拓海君におふくろの味食べさせてあげたくてさ~さすがに今夜は月曜だし、いるだろうなって思って…てか私、おふくろじゃないけどね…ふふ…。」
「ん…や…ほんと、美味しかった…味、染みてたし…。」
本当に、美味しかった…。
なんか、やっと、食べ物の…味がしたような感覚だ…。
東京からこっちに戻ってもちろん何度か食事をしたが、美味しいと感じる心の余裕がなかったのかもしれない。
今日の昼なんて…
結局、アイツと行った店の、クリームなんとかのパスタ…
そういえばどんな味がしたっけ…美味かったような、うまくなかったような…
「… … …」
不意に、原田さんの言った言葉が頭をよぎる。
俺を狙っている人がいるから気を付けろ…。
そして、早速ランチに誘われてるし…って…?どういう意味だ…なぜそこで、そんな風に、話をつなぐ…?
ランチに誘って来たのは笠村だ…笠村課長…。
原田さんの話した順番に沿って、文脈だけをたどると、
ちょっと、おかしな結論に…結び付く可能性が数パーセント、あるのは俺の気のせいだろうか…。
男である課長が…笠村課長が、俺を…男である俺のことを、狙っている…?
いやいや、まさかの…BLかよ…俺もそのくらいの言葉は知っているが…
ないない、ないわ~~こんな身近なとこで、それはない…。
やっぱり、違うな…
全ては俺の、読解力のなさ…なのかも、しれない…。
「… … まさか、…だよな… …」思わず表に…そんな言葉が出てしまった。
「は…?何、なに?拓海君…」瑠衣が、目を真ん丸にして俺を見つめる。
「あっ… いや、別に… …」瑠衣に話せる内容じゃない…。
話せばきっと、何おかしな想像してんの、あり得ないだろうって、笑うに違いない。
「…やっぱり今日の拓海君は、最上級におかしいよ…話してよ、瑠衣、何でも聞くからさ…葉月ちゃんと何があったの…?話せばきっと、心が楽になるよ?瑠衣ちゃんにまかせなさい。」
「あ… うん… や、… 」
現実、今この瞬間は、笠村のことを考えていたが、瑠衣は当然俺が葉月のことを思い悩んでいると思ったらしい。
「やじゃない。とっとと話しなさい。さっき言ったじゃん、食べながら話すよってさ…。」
瑠衣が、ぷ~っと、子供のように頬を膨らませる姿を見て、本当に俺より年上かよと思いつつも俺は観念する。
「あ… あ… まあ、そうだな…サラッと聞いてくれよ…深くは聞かないでくれるなら…話すよ。」
「うん、聞かない…。拓海君が話せる範囲で本当にいいから、話して欲しい。」
「わかったよ。あのさ…実は… … … … …」
俺は、瑠衣の目を見て、これまでの葉月との経緯を、順を追って、ついに瑠衣に話すことにした。
もちろん、俺が葉月にしたあの…ひどい行為のことは、避けて…。
だが、あの男がちょうど俺が行った時間に葉月の家に来たことは、一応告げた…。
「… うん … うん… 」
瑠衣は珍しく、俺の発言に一切口を挟むことなく、ただただ頷いていた…。
ついでに、笠村のこともチラッと話して、女である瑠衣の意見を聞いてみようかなんて、ほんの少しだけ頭をよぎったが、なんとなくそれはやめておいた。
「… ま、そんな感じで…俺と葉月は、もう…無理だと、思う…終わったんだと、思う…。」
曖昧だが、そんな他人事のような言い方しかできない自分を不甲斐なく思う…。
カッコ悪いことこの上ないが…本当にそういう感覚なのだ…仕方ない…。
「… そっか… そう、だったんだ…喧嘩じゃなくって…そんな、感じ…へえ… 」
瑠衣は、しばらく…放心状態というかそれきり、不思議なほどに何も話さなくなった…。
どうしたんだろう…俺、瑠衣に、何かしたか…?
長い沈黙が続き過ぎて、
ようやく俺は、いぶかし気に、瑠衣を見つめた…。
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