【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～拓海～

阿呆

「拓海君、私ね…　私…」

俺は、ゴクリと唾を飲む…。

瑠衣は基本的に、いつもおちゃらけているイメージなのだ…。

出会ってからこれまでずっと、
いつも笑いながら、冗談ばっかり言っているイメージ。

その瑠衣が、相当真剣に、俺の顔を…俺の目を真っ直ぐに見つめてくるのでなんとなく怖い…。

「…　な、なん、だよ…瑠衣…」

「私ね…　前からずっと…　いや…途中、からかな…　えっとね…　その…」

もじもじした様子の瑠衣…　
なんなんだ一体と思いつつ、俺は続きを促す。

「…　前から…　？　途中から…？？はあ…？結論は何、瑠衣…はっきり言えよ、気持ち悪い…。」

「…　ひっどっ！…もうさ、そういうとこだよ…多分さ、葉月ちゃんも拓海君のそういうところが嫌…あ…ちがくて…」

「はあっ…！？…なんだよ、瑠衣…　俺に、喧嘩、売ってんのかよ…？」

そういうところがっ…って、なんなんだよ…　
俺のどこが、葉月に嫌がられるってんだ…俺はこれまで全力であいつと…　

「…　ごめん、違う違う、完全に脱線…ごめん、あのね、私は…好きです…あなたが。」

「…　…　は…　？…　」一瞬、何を言われたのか、わからなかった。

「…　は…？じゃ、なくて…私は拓海君が好き。それを、言いたくて…なんかごめん…恥ずかしくなって、ごにょごにょしちゃって…」

「はあ…　そ…　それは、…どうも…　って…はっ…？」

なんだ…　

拓海君が好き…？これって、…人としての告白…？
人間性が好きとか、そういう…

いやいや、瑠衣は正面から、真面目に…俺に、俺が好きだと…伝えたように思う…。

これはまさかの、マジなやつ…　
マジ告白なのか…　いや、でも…

俺は頭の中であれやこれやとせわしなく考えながらも…
困惑して、どうやらぽかんと口を開けたままになっていたようだ…。　

「…はあぁ…　何その、呆然とした顔…。もう、ほんと、さいってー…そもそも、女の子に告白されて、『そりゃどうも』って…はあぁ…なんか、言った途端に、後悔してきた…かも…」　

「…マジ、で…瑠衣　…でも、おまえ…　おまえさ…　前に…」

俺は、セックスフレンドなんだと…前にそう…最初からそう、はっきり言っていたじゃないか…

俺はおまえのその言葉を言い訳に…
その言い分を、自分勝手な理由にして…葉月という彼女がいながらも、おまえに手を出した…。

「…　瑠衣…　…その、…　」

さすがに…多分、マジな告白を受けたこの今の状態で…
セックスフレンドがどうとか、そんな不謹慎な言葉を使う気になれなくて…でも、その次の言葉が浮かばなくて、俺は相変わらず、口をパクパクさせていたらしい…。

「…あ～あ～何その、気の抜けた顔…まだ、全然まだ…言う気じゃなかったんだけどな…調子狂う～だっていきなり、葉月ちゃんとダメになったみたいな話するんだもん…そりゃ…女だもん…少し、今なら隙があるかなって思っちゃうよ…あ～あ～でもやっぱ最悪…忘れて…ううん、忘れちゃダメ…とりあえず、理解して…」

「…今の　マジな、やつってこと…？」

俺は阿呆か…　　そう、思った…。
多分、俺のこれは、一般的に、酷いコメントだ…

　　なのに、気付けば、もう口に出ていた…。