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それも、初恋。。
小春日和
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「……って、まくし立てるように叫んで、プチッと電話を切っちゃったの」
「え……てことは、コウタ君からの返事は?」
「聞きそびれちゃった」
えへっと、桜井さんがお茶目に笑う。
このうっかりさんめ。
「本当はね、高校に入る前に、ちゃんとフラれて気持ちに踏ん切りをつけようと思って電話をかけたの。フラれる前提で告白したんだし、ちゃんと『つきあって』まで言って、答えを聞くつもりだったんだけどね。その時になったら、もうテンパっちゃってダメだったわ」と桜井さんが苦笑する。
「私『好き』までは言えるのよ。でも『つきあって』は言えなかったのよねぇ。それを男子に言えるのは、クラスの可愛い女子で、私は残念ながら普通だった。どんなに良く見積もってもモテる男子と付き合うには足りない顔だった。つりあわないから、つきあえるわけがないって、心の底から諦めていたの」
ああほんと、桜井さんの話は、どうしてこうも、わかりみが強いのか。
たとえば……たとえば、さっき橘を笑った自信満々ヤンキー系茶髪&金髪サラサラ女子や、可愛い河合ちゃんたちのようなサラふわリア充系ステキ女子たちなら、橘に「つきあって」と言う権利がある。
でも私は、顔が似てないAIいずねェさんだ。良く見積もって、もこったポメラニアン。
可愛いとはいえ、犬に告白する権利はない。
(でもなー)
1つだけ疑問なのは、桜井さんの……いや、カナエちゃんについてだった。
歳を取った今でもこんなに可愛らしくて素敵な桜井さんの中学生の頃って、結構いい線行ってた気がするけど。
雰囲気可愛い系の女子って、わりとモテる。
つまり、カナエちゃんは「つきあって」を言える側の女子だった気がする。
だとしたら……すごくもったいないな。
ああ、カナエちゃんの隣に私がいたら「もっと自信持ちなって」と、太鼓判をドドンと押しまくったのになぁ。
「結局そのまま春休みは終わって、四月からはコウタ君と別の高校に通い始めたの」と、桜井さんは締めくくった。
「それじゃ、もうコウタ君とつながる手段ないじゃないですか。SNSないですもんね」
「SNSなかったわねぇ」
がっくりする。
「……私、SNSあんま好きじゃないし、繋がり過ぎるのめんどくさって思ってましたけど、桜井さんの話聞いてると、自分は幸せな時代にいるんだなって、ちょっと思います」
少なくとも橘とは、たとえ学校が離れても、疎遠になっても、『元気?』とか気軽にSNSで聞くことができる。
気軽に連絡できる環境がある。
だからといって気軽に告白できるかと言えば、それはまた別の話だけど。
いろいろな嘆きを混ぜ込んだため息を吐きながら、中庭へ続く引き戸を開いた。
ドーム状に囲われた中庭は全館空調のおかげで年中小春日和だ。
芝生の緑も鮮やかで、色とりどりのパンジーが咲き誇っている。
気持ちよい中庭の中でも、最も気持ちよさそうなロケーションのベンチを探して、車いすを転がした。
私が選び抜いたベンチに腰を下ろした桜井さんが、すーっと緑の空気を吸い込んで「お花のいい香りがするわぁ」と微笑む。
私も桜井さんに倣って空気を肺に取り込んでみる。確かに、フローラルな匂いがする。微妙に人工的だけど。
「スマホはなかったけれどね」と、私を振り返った桜井さんが、小花のようにくすっと笑う。
「なんと一緒だったのよ」
「何がですか?」
「通学ので・ん・しゃ」
「え……てことは、コウタ君からの返事は?」
「聞きそびれちゃった」
えへっと、桜井さんがお茶目に笑う。
このうっかりさんめ。
「本当はね、高校に入る前に、ちゃんとフラれて気持ちに踏ん切りをつけようと思って電話をかけたの。フラれる前提で告白したんだし、ちゃんと『つきあって』まで言って、答えを聞くつもりだったんだけどね。その時になったら、もうテンパっちゃってダメだったわ」と桜井さんが苦笑する。
「私『好き』までは言えるのよ。でも『つきあって』は言えなかったのよねぇ。それを男子に言えるのは、クラスの可愛い女子で、私は残念ながら普通だった。どんなに良く見積もってもモテる男子と付き合うには足りない顔だった。つりあわないから、つきあえるわけがないって、心の底から諦めていたの」
ああほんと、桜井さんの話は、どうしてこうも、わかりみが強いのか。
たとえば……たとえば、さっき橘を笑った自信満々ヤンキー系茶髪&金髪サラサラ女子や、可愛い河合ちゃんたちのようなサラふわリア充系ステキ女子たちなら、橘に「つきあって」と言う権利がある。
でも私は、顔が似てないAIいずねェさんだ。良く見積もって、もこったポメラニアン。
可愛いとはいえ、犬に告白する権利はない。
(でもなー)
1つだけ疑問なのは、桜井さんの……いや、カナエちゃんについてだった。
歳を取った今でもこんなに可愛らしくて素敵な桜井さんの中学生の頃って、結構いい線行ってた気がするけど。
雰囲気可愛い系の女子って、わりとモテる。
つまり、カナエちゃんは「つきあって」を言える側の女子だった気がする。
だとしたら……すごくもったいないな。
ああ、カナエちゃんの隣に私がいたら「もっと自信持ちなって」と、太鼓判をドドンと押しまくったのになぁ。
「結局そのまま春休みは終わって、四月からはコウタ君と別の高校に通い始めたの」と、桜井さんは締めくくった。
「それじゃ、もうコウタ君とつながる手段ないじゃないですか。SNSないですもんね」
「SNSなかったわねぇ」
がっくりする。
「……私、SNSあんま好きじゃないし、繋がり過ぎるのめんどくさって思ってましたけど、桜井さんの話聞いてると、自分は幸せな時代にいるんだなって、ちょっと思います」
少なくとも橘とは、たとえ学校が離れても、疎遠になっても、『元気?』とか気軽にSNSで聞くことができる。
気軽に連絡できる環境がある。
だからといって気軽に告白できるかと言えば、それはまた別の話だけど。
いろいろな嘆きを混ぜ込んだため息を吐きながら、中庭へ続く引き戸を開いた。
ドーム状に囲われた中庭は全館空調のおかげで年中小春日和だ。
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私も桜井さんに倣って空気を肺に取り込んでみる。確かに、フローラルな匂いがする。微妙に人工的だけど。
「スマホはなかったけれどね」と、私を振り返った桜井さんが、小花のようにくすっと笑う。
「なんと一緒だったのよ」
「何がですか?」
「通学ので・ん・しゃ」
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