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日常
第821話 タンドリーチキン
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今日はちょっと早く目が覚めた。こういう時って妙にすっきりしてんだよなあ。
「まだ時間あるな……」
今から学校に行ってもやることないしなあ。あ、そうだ。晩飯の仕込みでもしておこうか。冷蔵庫に何があったかな。
えーっと……野菜はどれもメインに据えるには中途半端な量しか残っていないな。鶏肉は一パックある。からあげ……うーん、絶対に足りない。調味料は一そろいあるし、あとはヨーグルトと……ああ、早く食べないといけないなあ。
そういえばカレールーも残ってたな。じゃあ、カレーにするか。デザートにヨーグルト、って給食みたいだ。
うーん、でもなんか違うもの食べたいような。
あ、そうだ。タンドリーチキンにしよう。カレールーもヨーグルトもちょうど使いきれそうだし。
そしたら、まずはカレールーを刻もう。粉末状のでなければならない、とかってに思い込んでいたが、どうやら、カレールーでも作れるらしいからな。
レトルトのカレールーを刻むこの感覚……独特で癖になる。肉でも野菜でも、他の何を切ってもこの感覚はなかなか味わえない。削る感覚に似ているだろうか。
これをヨーグルトと混ぜる……
「……あれ、おかしいな」
うまく混ざらない。混ぜても混ぜてもジャリッとしている。少しずつ溶けてはいるが、一向に混ざる気配がない。
「温めたらいけるか?」
レンジで温めてみよう。たぶん、うまくいくはず。
程よく温まったヨーグルトとカレー。混ぜてみる。お、さっきよりはうまくいっているんじゃないか。
混ざったらにんにくとしょうがを入れてよく混ぜて、ビニール袋に移したら鶏肉を入れて揉み込む。それを冷蔵庫に入れておいて、あとは焼くだけだ。付け合わせは野菜をどうにかしようかなあ。
「お、もうこんな時間か」
そろそろ行かないと。
ふふ、晩飯が楽しみだなあ。
今日は英単語の小テストがある。早々に解き終わってしまったが、先生が職員室にいったん戻ってしまったから、まだ終了の号令はかからない。
付け合わせの野菜、どうしようかなあ……
ガラガラッと扉が開く音がして、皆姿勢を正す。先生は廊下から教室に向かって言った。
「ごめんごめん、もうちょっとかかりそうだから、小テスト回収して、しばらく自習ね」
先生の言葉に、教室が少しざわめく。それはちょっと安堵のような、ラッキーというような、少し浮ついたざわめきだった。
小テストを回収し、先生は再び教室を出る。
さて、自習か。そしたら、来週の分の予習でもしておくかな。次のところ、量が多いんだよなあ。英文を写すの、結構骨が折れる。
いっそコピーして貼り付けたいくらいだ。というか、それでいい気もするのだが。
ごちゃごちゃ考えても何も変わらないので、さっそく手を付ける。書いている間は、とりとめもなく思考が巡る。
めんどくさいなあ、この単語前にも出てきてたけど、意味何だっけ、あ、こっちはさっきの小テストに出てきた、今日は天気がいいから体育は外だよなー、早く帰りたいなあ、タンドリーチキンの付け合わせは何にしよう。
野菜をどうにかしようとも思ったが、うーん……キャベツ、ニンジン、ピーマンがちょっとずつあるから、野菜炒めとか?
つるつるとした教科書のページをめくる。いろんな店でのコミュニケーションの例文が載っている。レストランのページにはうまそうな料理のイラストがいっぱいあって楽しい。英語の教科書のイラストって、なんか好きなんだよなあ。
こっちはファストフード店か。英語がよく似合うというかなんというか。フードワゴンみたいなのもいいよなあ。
「ん」
ハンバーガーにコーラに……フライドポテト。いい組み合わせだ。フライドポテト……食べたいな。タンドリーチキンに合うんじゃないか。
そうだ、帰りにフライドポテトを買おう。そうすれば後は鶏肉を焼くだけだ。
「ふふ」
おっと、つい笑いが。
……ま、誰も聞いてないか。自習時間というのは、往々にして賑やかなものである。
揚げたてポテトを一つ二つとつまみながら、仕込んでおいた鶏肉を焼く。
グリルで焼いていくので、焼きあがるまでについ食べてしまうのだ。ふわっと漂ってくるカレーの匂い、お腹が空いてしょうがないな。
いかん、このままだと全部食べてしまう。皿に移してテーブルに持っていっておこう。
「……もう一つだけ」
できるだけ長いのを選んで食べる。んー、ポテトってなんでこんなにおいしいんだろう。
「そろそろ焼けたか?」
おっ、いい色だ。しっかり焼けている。
皿に盛り付けて、あとはご飯も準備して……よし、いい感じだ。
「いただきます」
焼きたて熱々の鶏肉は、見るからにジューシーで、いい香りを漂わせている。川もいい感じに焼けているなあ。
パリッとした表面、香ばしい風味にカレーの程よいスパイシーさ。ヨーグルトの風味は控えめながら、マイルドな風味は感じられる。そうそう、タンドリーチキンって、うまいんだ。あ、からあげ風にしてもいいかもな。今度やってみようか。
そして、粉末のスパイスを使っていないと、なんとなく柔らかな風味になるような。なじみのある味というか、スパイスの香りが控えめで、食べやすい。
そして何より、ご飯に合う。
そりゃそうだ、カレーだもんな。カレーは白米との相性が抜群だ。
皮目のパリパリした感じと、もちもちした食感がいいなあ。ジュワッとあふれ出すうま味がまたご飯を進ませる。
フライドポテト……うん、思った通りだ、合う。タンドリーチキンの濃い目の味に、フライドポテトのサクサク感とほっくりして感じ、いもの風味がよく合う。
少し冷めてもまたいい味出るなあ。
フライドポテトでソースをぬぐってもうまい。カレー味の何かしらってよく見かけるけど、やっぱおいしいから色々カレー味にするんだろうなあ。
早起きは三文の徳とはよくいったものだ。少し早く起きたおかげで、うまい飯にたどり着いたし、一日ずっと楽しみでいられた。
明日は何を食べようかなあ……
「ごちそうさまでした」
「まだ時間あるな……」
今から学校に行ってもやることないしなあ。あ、そうだ。晩飯の仕込みでもしておこうか。冷蔵庫に何があったかな。
えーっと……野菜はどれもメインに据えるには中途半端な量しか残っていないな。鶏肉は一パックある。からあげ……うーん、絶対に足りない。調味料は一そろいあるし、あとはヨーグルトと……ああ、早く食べないといけないなあ。
そういえばカレールーも残ってたな。じゃあ、カレーにするか。デザートにヨーグルト、って給食みたいだ。
うーん、でもなんか違うもの食べたいような。
あ、そうだ。タンドリーチキンにしよう。カレールーもヨーグルトもちょうど使いきれそうだし。
そしたら、まずはカレールーを刻もう。粉末状のでなければならない、とかってに思い込んでいたが、どうやら、カレールーでも作れるらしいからな。
レトルトのカレールーを刻むこの感覚……独特で癖になる。肉でも野菜でも、他の何を切ってもこの感覚はなかなか味わえない。削る感覚に似ているだろうか。
これをヨーグルトと混ぜる……
「……あれ、おかしいな」
うまく混ざらない。混ぜても混ぜてもジャリッとしている。少しずつ溶けてはいるが、一向に混ざる気配がない。
「温めたらいけるか?」
レンジで温めてみよう。たぶん、うまくいくはず。
程よく温まったヨーグルトとカレー。混ぜてみる。お、さっきよりはうまくいっているんじゃないか。
混ざったらにんにくとしょうがを入れてよく混ぜて、ビニール袋に移したら鶏肉を入れて揉み込む。それを冷蔵庫に入れておいて、あとは焼くだけだ。付け合わせは野菜をどうにかしようかなあ。
「お、もうこんな時間か」
そろそろ行かないと。
ふふ、晩飯が楽しみだなあ。
今日は英単語の小テストがある。早々に解き終わってしまったが、先生が職員室にいったん戻ってしまったから、まだ終了の号令はかからない。
付け合わせの野菜、どうしようかなあ……
ガラガラッと扉が開く音がして、皆姿勢を正す。先生は廊下から教室に向かって言った。
「ごめんごめん、もうちょっとかかりそうだから、小テスト回収して、しばらく自習ね」
先生の言葉に、教室が少しざわめく。それはちょっと安堵のような、ラッキーというような、少し浮ついたざわめきだった。
小テストを回収し、先生は再び教室を出る。
さて、自習か。そしたら、来週の分の予習でもしておくかな。次のところ、量が多いんだよなあ。英文を写すの、結構骨が折れる。
いっそコピーして貼り付けたいくらいだ。というか、それでいい気もするのだが。
ごちゃごちゃ考えても何も変わらないので、さっそく手を付ける。書いている間は、とりとめもなく思考が巡る。
めんどくさいなあ、この単語前にも出てきてたけど、意味何だっけ、あ、こっちはさっきの小テストに出てきた、今日は天気がいいから体育は外だよなー、早く帰りたいなあ、タンドリーチキンの付け合わせは何にしよう。
野菜をどうにかしようとも思ったが、うーん……キャベツ、ニンジン、ピーマンがちょっとずつあるから、野菜炒めとか?
つるつるとした教科書のページをめくる。いろんな店でのコミュニケーションの例文が載っている。レストランのページにはうまそうな料理のイラストがいっぱいあって楽しい。英語の教科書のイラストって、なんか好きなんだよなあ。
こっちはファストフード店か。英語がよく似合うというかなんというか。フードワゴンみたいなのもいいよなあ。
「ん」
ハンバーガーにコーラに……フライドポテト。いい組み合わせだ。フライドポテト……食べたいな。タンドリーチキンに合うんじゃないか。
そうだ、帰りにフライドポテトを買おう。そうすれば後は鶏肉を焼くだけだ。
「ふふ」
おっと、つい笑いが。
……ま、誰も聞いてないか。自習時間というのは、往々にして賑やかなものである。
揚げたてポテトを一つ二つとつまみながら、仕込んでおいた鶏肉を焼く。
グリルで焼いていくので、焼きあがるまでについ食べてしまうのだ。ふわっと漂ってくるカレーの匂い、お腹が空いてしょうがないな。
いかん、このままだと全部食べてしまう。皿に移してテーブルに持っていっておこう。
「……もう一つだけ」
できるだけ長いのを選んで食べる。んー、ポテトってなんでこんなにおいしいんだろう。
「そろそろ焼けたか?」
おっ、いい色だ。しっかり焼けている。
皿に盛り付けて、あとはご飯も準備して……よし、いい感じだ。
「いただきます」
焼きたて熱々の鶏肉は、見るからにジューシーで、いい香りを漂わせている。川もいい感じに焼けているなあ。
パリッとした表面、香ばしい風味にカレーの程よいスパイシーさ。ヨーグルトの風味は控えめながら、マイルドな風味は感じられる。そうそう、タンドリーチキンって、うまいんだ。あ、からあげ風にしてもいいかもな。今度やってみようか。
そして、粉末のスパイスを使っていないと、なんとなく柔らかな風味になるような。なじみのある味というか、スパイスの香りが控えめで、食べやすい。
そして何より、ご飯に合う。
そりゃそうだ、カレーだもんな。カレーは白米との相性が抜群だ。
皮目のパリパリした感じと、もちもちした食感がいいなあ。ジュワッとあふれ出すうま味がまたご飯を進ませる。
フライドポテト……うん、思った通りだ、合う。タンドリーチキンの濃い目の味に、フライドポテトのサクサク感とほっくりして感じ、いもの風味がよく合う。
少し冷めてもまたいい味出るなあ。
フライドポテトでソースをぬぐってもうまい。カレー味の何かしらってよく見かけるけど、やっぱおいしいから色々カレー味にするんだろうなあ。
早起きは三文の徳とはよくいったものだ。少し早く起きたおかげで、うまい飯にたどり着いたし、一日ずっと楽しみでいられた。
明日は何を食べようかなあ……
「ごちそうさまでした」
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