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一章 黄昏のパリは雪に沈む
………真夜中の追憶
しおりを挟む「アキ兄ちゃん……アキ兄ちゃん……」
「……ん?どうした?眠れないのか?」
「あのね、雪が降ってきた。
アキ兄ちゃんの布団に入ってもいい?」
「あのな祐ちゃん、もう11歳だろ?いつまでもそんな風に甘えて、どうするんだよ……」
「だって、雪の降る夜はいつも一緒に寝てくれただろ?
ん~ん、別に雪なんて降らなくても、いつも一緒に寝てくれたじゃない。
アキ兄ちゃん……何だかこの頃変だよ……せめて雪が降った夜くらい、前のように一緒に寝させて?」
「だめだ」
「やだ!今夜はアキ兄ちゃんの布団で寝る!」
「あ、あ、こら……!」
「へへっ、アキ兄ちゃんのお布団温か~い♪僕、今夜はこうして寝るからね」
「祐ちゃん……」
「アキ兄ちゃんの胸、何だか前よりずっと広くなったみたい。
ほら……こうしていると、アキ兄ちゃんの心臓の音が聞こえる」
「……ゆ、祐ちゃん!」
「い!痛いよ、アキ兄ちゃん。
そんなに強く抱き締められたら、痛すぎるよ……!」
「あ、ごめん……」
「ん~ん、アキ兄ちゃん、何だかこの頃強くなったみたい」
「祐ちゃん……俺は……
うん、だめだ……やっぱりおまえ、自分の布団で寝ろ」
「え?なんで?もう痛いなんて言わないから」
「もう二人ともでかくなった。
この布団に二人じゃ小さすぎて窮屈だし、手足がはみ出れば風邪をひく」
「だから、もっとくっつけば平気だよ」
「それじゃ俺が困るんだ。
安眠出来なきゃ明日が辛い。祐ちゃんだって身体が休まらないだろ?」
「……そうなんだね。
アキ兄ちゃんが寝れなくなったら大変だね。僕が我儘だった……」
「……祐ちゃん、とにかく明日も早い、自分の布団で寝ろ……」
「分かった……」
「…………」
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