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二章 再会は胸を締め付ける
No,31 待ちわびていた報告
しおりを挟む1984年──東京。
経済は活発に動いている。街は間近に迫るバブル景気を予感させ、派手に色付いていた。
明彦──24歳。
オックスフォード大学を卒業後、日本に帰国して2年目のことだった。
豪田物産に入社以降、何かにつけ多忙な日々を送る明彦の元へ、今や明彦の正式な秘書となった藤代が、待ちに待った知らせを持って報告に上がった。
「明彦さん、例の件ですが、ようやく報告が上がって来ました」
「え?祐二のことで何か分かったのですか?」
藤代が懇意としている調査会社に祐二の件を依頼している事は認知していた。
ただ、今や表立って名前を出す訳に行かない明彦は、ひたすらその報告を静かに待つしかなかった。
「いえ、この件についてはよくご存知の通り、なかなか調査には難しい点が多いのです。
ただ、例の佐伯という男のことですが、都内にいくつか水商売系の店を持っているらしく、そのひとつ、新宿にあるブルーバーズと言う店が、どうやらその佐伯の経営らしいと言う事までは分かったのです」
「ありがとうございます。それだけ分かれば十分です。彼なら必ず祐二の居所を知っているはずだ」
「行かれるのですね、その店に……」
「もちろんです」
「その店がどう言う店か、ご説明しなければなりませんね」
「いいえ、僕は自分なりにも色々と調べましたし、その筋の事に関しては知識も得ました。
その店がどういう類の店なのか、今の僕には容易に察しがつきます」
「そうですか。やはりお 一人で行かれるのでしょうね」
「そのつもりです」
「その方が……きっとよろしいのでしょうね……」
藤代は明彦の机にそっと報告書を置くと、そのまま黙って背を向けた。
「藤代さん、本当にありがとうございました」
「どうか冷静に、慎重な対応をお願い致します」
藤代は背を向けたままそう言うと、静かに明彦の部屋を去って行った。
(帰国してからの2年間、ずっとこの時を待っていた!)
明彦は報告書を手に取り、冷静にその文書に目を通す。
(待っていろ祐二!俺が直ぐに迎えに行く!)
片時も忘れる事の無かった祐二への思い──明彦の胸は静かな決意に燃えるのだった。
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