42 / 121
二章 再会は胸を締め付ける
No,34 華やかな少年
しおりを挟む「先ほどは失礼致しました。私はこの店を任せられている熊田原と申します。オーナーも是非あなたにお会いしたいとの事です」
「え、そうなんですか?それは意外です……」
「オーナーは事務所におりますが近所なのでご案内致します」
熊田原は横に立つ玲央に命じた。
「玲央ちゃん、この方を事務所へお連れしてちょうだい。顔どころか名前まで売れるチャンスだわよ」
「あ、マスターありがとう!」
玲央が笑顔で明彦の顔を覗き込んだ。
「オーナーのところへご案内します。行きましょう」
当たり前のように明彦の手を取った。
(え?!)
優夜の微笑みが月のような輝きならば、玲央の笑顔は真夏の太陽のように煌めいていた。
(そんな、会ったばかりで手を繋ぐなんて……これがこの店の流儀なのか?)
明彦は玲央に手を引かれ「BLUE BIRDS」を後にした。
エレベーターに乗り込んでも玲央は手を離さない。何故か明彦もそれを振りほどく事が出来なかった。
「改めて自己紹介します。玲央と言います。これをご縁に、これからもよろしくお願いしますね♡」
「あ、うん……」
この会話がむしろタイミングとなり、明彦はそっと玲央から手を離した。
「オーナーのいる事務所はここから歩いて行けない事もないけど、でもお急ぎだろうからタクシーを拾いますね」
「ああ……そうだね」
玲央の笑顔が眩しい。それが水商売特有の媚だと分かっていても、今までそんな事に無縁だった明彦には十分刺激的だった。
中学から高校時代──同年代との付き合いが薄いままで社会人となった明彦には、こんな年若な美少年と接する機会が今までほとんど無かったから──。
ただ──玲央の玄人じみた物言いや身のこなしを目の当たりにしたとき(祐二も同じ事をしているのか?)と、憂えざるを得ないのも確かだった。
玲央は手慣れた様子でタクシーを拾い、明彦を奥の座席へとエスコートする。ありがとうと口ごもりながら、明彦がタクシーに乗り込んだ。
玲央は後から乗り込むとちゃっかり明彦の身体に密着し、明朗な口調で的確に行き先を運転手に告げた。どうやら中々に頭の回転の良い質らしい。
タクシーが発車し、人心地つくと玲央が話し始めた。
26
あなたにおすすめの小説
【完結】禁断の忠誠
海野雫
BL
王太子暗殺を阻止したのは、ひとりの宦官だった――。
蒼嶺国――龍の血を継ぐ王家が治めるこの国は、今まさに権力の渦中にあった。
病に伏す国王、その隙を狙う宰相派の野心。玉座をめぐる見えぬ刃は、王太子・景耀の命を狙っていた。
そんな宮廷に、一人の宦官・凌雪が送り込まれる。
幼い頃に売られ、冷たい石造りの宮殿で静かに生きてきた彼は、ひっそりとその才覚を磨き続けてきた。
ある夜、王太子を狙った毒杯の罠をいち早く見破り、自ら命を賭してそれを阻止する。
その行動をきっかけに、二人の運命の歯車が大きく動き始める――。
宰相派の陰謀、王家に渦巻く疑念と忠誠、そして宮廷の奥深くに潜む暗殺の影。
互いを信じきれないまま始まった二人の主従関係は、やがて禁じられた想いと忠誠のはざまで揺れ動いていく。
己を捨てて殿下を守ろうとする凌雪と、玉座を背負う者として冷徹であろうとする景耀。
宮廷を覆う陰謀の嵐の中で、二人が交わした契約は――果たして主従のものか、それとも……。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
OUTSIDER
TERRA
BL
何故、僕らは出逢ってしまったんだろう。
裏社会の片隅で始まった、決して結ばれてはいけない二人の同居生活。
それぞれの思惑とは裏腹に、無慈悲に交差していく物語。
これは、孤独な世界で出逢った男達の抗えない愛の物語。
■一話完結日常編ほのぼのパートと少しシリアスな本編があります。数組のカップリングがあるので章のタイトルに載っているお好みのカップリングから読んでみてください。
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる