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二章 再会は胸を締め付ける
No,36 玲央の思惑
しおりを挟む「僕ね、優夜さんと関係の有る人なら間違いなく上客だと思って、正直言うと打算で豪田さんに近付いたんだけど……」
「玲央くん?」
「ふふっ、何だか本気で好きになっちゃいそう」
「お、おい、何を言い出すんだ。俺は優夜の事で佐伯氏に話が有って、それでこの街にやって来たんだ。男を漁りに来た訳じゃない」
そんな明彦の慌てた口振りが玲央には益々好ましく感じられたのかも知れない。
「それでもいいじゃない?
人と人との縁なんて、どこで何を切っ掛けに生まれるのか分からないものでしょ?
相手が豪田さんならお商売抜きで付き合っても楽しいかも。いや、むしろ僕の方が貢いちゃったりして?まさかの三流ホステスに転落しちゃったりして?ふふっ♡」
玲央の言葉はどこまでが本気なのか分からない、いや、その全てが修飾された営業トークなのかも知れない──と、そのくらいの判断はうぶな明彦にもすれすれ可能だった。
「玲央くん、君のお世辞はこの耳に心地良く受け止めておくよ。
で、そこまで言っくれる君にだから聞いておきたい。優夜の事で、何か知っている事を話してくれないか」
「やっぱり話はそこに至るんですね。いいですよ、ただし条件を聞いて貰えますか?
今後誰の前でも僕のことを玲央と呼び捨てにしてくれること、そして僕が豪田さんと専有契約を結ぶかも知れない候補者であるって、吹聴しても構わないと言うこと」
「でも、俺は君とは……その、契約なんて無理だけど」
「事実はどうでもいいんです。
大切なのは、僕が豪田さんのようなVIPと親しく繋がっていると、周りにそう知らしめる事が肝心なんです」
「なるほど、良く分かった」
──玲央と言う少年。中々一筋縄では行かないらしい。
「優夜さんは僕の目標なんです。僕は優夜さんを目指してる」
「目指すって……だって、あの、そんな褒められた商売じゃないだろう?」
「豪田さん、そんな素人の常識みたいなところから始めるんじゃ、この話は朝まで終わらないよ?
御曹司様には分からないだろうけど、下々の人間には色々な事情があるんです。僕だって……普通に育っていればちゃんと高校くらい通いたい」
「……ごめん。俺が狭量だった」
「いいですよ……僕の環境なんてあの店にいた他のボーイ達に比べれば幾分マシな方だし、豪田さんが聞きたいのは僕の身の上話なんかじゃない。
優夜さんの話をしますね」
明彦は言葉も無く、黙って玲央を見ながら頷いた。
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