昭和浪漫ノスタルジー「遥か彷徨の果ての円舞曲」

歴野理久♂

文字の大きさ
46 / 121
二章 再会は胸を締め付ける

No,38 白馬会

しおりを挟む

「優夜さんは使い捨てのウリセン・ボーイなんかじゃありません。きれいなだけじゃなく頭も良いし教養も有るし、言葉遣いだって僕は優夜さんに教わりました。
僕もいつかは優夜さんみたいに上客を付けて、将来はこの街でお店を始める資金を貯めたいんです。
だから豪田さんなら最高。
ステータスだけじゃなく、若くてカッコ良くて性格も素敵♡」
 玲央が明彦に身体を投げた。
──そんな玲央を、明彦はそっと優しく押し離す。

「玲央、ごめん……今、俺は優夜を捜すのに手一杯なんだ、許してくれ」
 玲央が屈託の無い笑顔を見せる。
「やっぱり豪田さんは簡単じゃないな。いずれきっと白馬会にも呼ばれますよ?」
「白馬会?それは……?」

「佐伯さんは都内にいくつもお店を持っていて、二丁目にも数件のお店を持っています。ウリセンの中でもあの Blue Birds はかなり上等な方で、だから僕も普段はあそこで待機してるんですが……でも優夜さんは Blue Birds にさえ顔を見せない。
そこで話は白馬会となりです」
「白馬会って、それも店なのか?」

「いいえ、佐伯さんは銀座にも一流のクラブを持っていて、馬賊ってお店なんだけど、ほら、銀座は土日は休業でしょ?
だから週に1回、そのクラブが休業の土曜日の夜だけ開かれる会員制の営業……って言うより、秘密の集会なんです。
Blue Birds になんて顔を見せない本物のVIPが集まるんですよ?そして、そこでは桁違いの専有契約が結ばれる……」
「優夜はそこで……」

「はい、スターです」
「なるほど……だからフランスの侯爵なんて浮世離れした契約が成立するのか……」
「え、侯爵?フランスに行ってるって話は聞いた事があるけど侯爵とは流石だな。一応僕も白馬会へは顔を出させて貰っているけど、まだまだ優夜さんの引き立て役ですよ。そんなに簡単に上客は付かない……」
 玲央はその華やかな容姿には似合わない憂いを見せた。

「ようするに、土曜の夜に行われるその白馬会に行けば優夜に会える……って訳だな」
「だから豪田さん、そんないきなり行ったって、簡単に中には入れて貰えないから……」
──などと話しているうちに、タクシーが目的地へと到着した。

「ここが佐伯さんの事務所の入ったビルです。僕はこのまま店へ戻りますから」
 玲央がさっと立ち上がり、明彦の降車をエスコートする。
「ありがとう、むき出しで失礼だけどタクシー代だから」
 明彦が玲央に万券を差し出すと、玲央はそれを静かに拒んだ。
「マスターから預かって来ましたから」
「それじゃ、その預かり分は玲央が貰っておいて?」
 そう言うと、明彦がすんなりとその万券を運転手に手渡した。
「お釣りはこの子に渡して下さい」
 何ともスムーズなやり取りだ。今や明彦も御曹司に相応しい所作を身に着けていた。
「ありがとうございます♡」
 玲央も素直に笑顔を見せる。遠慮も一回だけと言う粋な対応が板に付いている。
 
 玲央を乗せたタクシーが発車し、一人ビルを見上げる明彦だった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】禁断の忠誠

海野雫
BL
王太子暗殺を阻止したのは、ひとりの宦官だった――。 蒼嶺国――龍の血を継ぐ王家が治めるこの国は、今まさに権力の渦中にあった。 病に伏す国王、その隙を狙う宰相派の野心。玉座をめぐる見えぬ刃は、王太子・景耀の命を狙っていた。 そんな宮廷に、一人の宦官・凌雪が送り込まれる。 幼い頃に売られ、冷たい石造りの宮殿で静かに生きてきた彼は、ひっそりとその才覚を磨き続けてきた。 ある夜、王太子を狙った毒杯の罠をいち早く見破り、自ら命を賭してそれを阻止する。 その行動をきっかけに、二人の運命の歯車が大きく動き始める――。 宰相派の陰謀、王家に渦巻く疑念と忠誠、そして宮廷の奥深くに潜む暗殺の影。 互いを信じきれないまま始まった二人の主従関係は、やがて禁じられた想いと忠誠のはざまで揺れ動いていく。 己を捨てて殿下を守ろうとする凌雪と、玉座を背負う者として冷徹であろうとする景耀。 宮廷を覆う陰謀の嵐の中で、二人が交わした契約は――果たして主従のものか、それとも……。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

OUTSIDER

TERRA
BL
何故、僕らは出逢ってしまったんだろう。 裏社会の片隅で始まった、決して結ばれてはいけない二人の同居生活。 それぞれの思惑とは裏腹に、無慈悲に交差していく物語。 これは、孤独な世界で出逢った男達の抗えない愛の物語。 ■一話完結日常編ほのぼのパートと少しシリアスな本編があります。数組のカップリングがあるので章のタイトルに載っているお好みのカップリングから読んでみてください。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...