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二章 再会は胸を締め付ける
No,41 佐伯との対峙 ③
しおりを挟む「豪田さん、状況を冷静に考えて下さい。『他人』の私が行き倒れていた見ず知らずの彼を保護し、高額な治療費を負担し、そのうえ何の収入の術も持たぬ彼をその後もずっと無償で養い続けていれば貴方はご満足だったのですか?『他人』とはそんなに優しく、都合良く動いてくれるものなのでしょうか?」
──他人など何の当てにもならない。
冷たい世間の風にさらされてきた孤児である明彦には、佐伯の言うひとつひとつに納得せざるを得なかった。
「祐二は……祐二はあんな仕事を嫌がらなかったのですか?」
「勿論、抵抗は有ったでしょうね。しかし彼は孤児であり、あまつさえ病弱だったにも関わらず、自立心と高い誇りを持った少年でした。
『他人』である私に負担をかけ、また言われ無き善意を無償で受けるに良しとしなかったのでしょうね。しかし、だからと言ってあの子に何が出来たでしょう?病後で未成年で保証人もいない。そんな彼に出来る仕事は?」
「確かに……そんな境遇の祐二にはアルバイトも難しい……」
「当時、彼は何とか治療費だけでも返済したいと強く望んでいました。私はそんな彼の折り目正しさに感心したくらいです」
「確かに祐二はそう言う奴です。だからいつも、僕は祐二を放って置けなかった」
「行き場の無かった彼を取り敢えず私の家へおいてやった。そしてあの子なりに仕事探しをしたようですが、その結果は十分お察しがつくでしょう?
その上彼が稼がなければならなかった金額は何のハンデも無い普通の若者でも困難な金額だった。
こういう言い方は何ですが、どの道まともなやり方ではどうにもならなかったでしょうね」
明彦には、もう佐伯に返す言葉が無かった。でも、だからと言ってあんな仕事を許容する事は出来ない。
(男に身体を売るなんて、絶対に祐二の本意である筈がない!)
──そう思う明彦の耳に佐伯の言葉が突き刺さった。
「豪田さん……実はこの仕事は、あの子が自分から希望して始めたのですよ」
「え?まさか!」
「私の家で暮らしていて、鋭敏なあの子はやがて私の生業について気付き、その知識も得た。
あの子はあの子なりに考えたのでしょう。第一に私から受けた恩と負債をきれいに返済したかった。その為にはどうするべきか?
彼はある時、自ら私の仕事を手伝いたいと申し出ました。
たとえ身は持ち崩そうとも、その心根は気高いものです。ひいては決してすさむことの無いその人品と、類まれなる資質が成功をもたらした」
「成功?……なのですか?」
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