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二章 再会は胸を締め付ける
No,45 過酷な生活
しおりを挟む秋本はとにかく酷い男だった。定職にも就かず昼間から酒を飲みゴロゴロしている。
そんな男なのに何故か金回りだけは良かった。食うに困る様子もなく、祐二の事もそれなりに扶養している。
しかし祐二の生活は決して恵まれたものでは無かった。
面目上、義務教育として最低限の中学生ではいられたが、小遣いどころか着るもの食べる物の金さえ満足に与えられなかった。
わざわざ祐二を引き取っておきながら、秋本にはまるで親としての情を注ぐ様子が見られなかったのだ。
それどころか秋本は、何かにつけ祐二を折檻した。もはや理由など無かった。秋本には暴力を楽しむ様子さえ見受けられた。
体中にあざを作り、暗くすさんだ生活を送りながらも、祐二は必死に父親との暮らしに耐えて行こうとしていた。
幸い周りの人間は祐二に好意的あるいは同情的で、そのお陰でずいぶん助けられる事も多かったのだが、しかし祐二はそれに甘える事を恥とする折り目正しい少年に成長していた。
祐二には定期的な通院と携帯薬が必要だったが、そんな祐二を秋本は金食い虫と責め立て、無抵抗の祐二に暴力を振るうのだった。
しかし祐二は健気にも歯を食いしばり、涙を他人に見せる事なく、父親との暮らしに耐えて行こうとしていた。
中学生の祐二にも、多少は自由になる金銭が必要だった。
無理の利かない身体に生まれた祐二にとって新聞配達など務まる筈もないのに、中学生の身で他にどんな仕事があるだろう?それでも祐二は働くしかなかった。
事情を知った新聞販売店の店主が同情心から祐二を雇ってくれた。祐二も必死にそれを務めてはいたが、走れない祐二がたとえ朝一番に出発しても、配達終了は一番遅くなってしまう。当然、配達部数も収入も普通の少年達の半分にも至らなかった。
朝刊の配達のあと遅刻すれすれに登校し、放課後には夕刊を配る。そして疲れ果てて帰宅すれば父親からの折檻が待っているのだ。
(お父さんはどうして?何のために僕を引き取ったんだろう?)
──それは祐二とって常なる疑問だった。
秋本からは親としての情どころか祐二に対してのわずかな好意でさえ感じられないのに、わざわざ今になって引き取ろうとは、一体秋本にとってどんな意味が有ったのだろう。
その理由が判明するのはこの後ずっと先のことである──当時の祐二にはまだ知るよしもなかった。
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