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二章 再会は胸を締め付ける
No,54 役者志望の後輩
しおりを挟む「やれやれ、困ったな……。
それより健けんちゃん、そんなに玲央が気に障るなら健ちゃんこそ頑張って競ってみれば?
岡田会長って、本当は健ちゃんみたいに爽やかなスポーツマン・タイプがお好みなんだよ?」
「裕也さん冗談でしょ?何で俺が優夜さんのご贔屓に手を出せるわけ?本当に、何でこんなに無欲でナンバー・ワンしてられるのか俺には全然わかんねぇよ 」
「ご贔屓って言ったって僕が指名を独占できる訳じゃないし、それはあくまでも岡田会長次第だし。
健ちゃんもそろそろちゃんとした専有契約を結んでおかなくちゃね。まあ、だけど本人にその気がないんじゃ仕方がないけど」
「いいんですよ俺なんて。普通に優夜さんのヘルプをしてりゃ、よそのバイトよりは格段に稼げるんだし」
「健ちゃん、役者になるって夢が有るんだろ?養成所にしたって劇団にしたってお金が掛かるばかりで収入になんてならない。
バイトに明け暮れていたんじゃ歌のレッスンもダンスのレッスンも通う時間が無くなるだろ?
僕は健ちゃん、絶対に才能あると思うよ?それに健ちゃんカッコいいもん。だから健ちゃんはお金の事なんかに煩わされずに、一生懸命稽古だけしてればいいんだ。
お客はね、そのためのパートナーなんだよ。成功するその日まで、健ちゃんを親身に見守ってくれる恋人だと思わなくっちゃ」
「優夜さん……そんな、俺たち決して褒められた事してる訳じゃないのに、なんだか優夜さんの話を聞いていると心が洗われるよ」
「洗われるなんてそんな……。
確かに僕たち、人に言えるような仕事はしてない。でも健ちゃんは夢に向かって頑張ってる。
僕なんて健ちゃんみたいに目標が有る訳じゃないし、他に何も出来ないから……」
自分も既に20歳を超えてしまった。こんな歳まで生きられるとは本当に思っていなかった。
そして、いつまでもこんな生活が続く筈もない──。
優夜の胸には数々の思いが渦巻き、将来の目標を持つ健が生き生きと輝いて見える。
「 健ちゃん、応援してるから、きっと夢を叶えるんだよ」
「優夜さん、俺、上京してから生活に困って、どうしようもなくてこの商売に飛び込んでしまった。すねてやけになっていたけど、でも優夜さんに会えて本当に良かった」
「健ちゃん、佐伯さんが健ちゃんを白馬会に呼ぶのはね、不特定多数のお客に顔を売らせたくないからなんだよ?」
「え?」
「つまりね、将来役者として成功した時、あれ?あいつ二丁目で売ってた子じゃない?なんて噂が立たないように」
「ほんと?佐伯さん、俺の事そこまで考えてくれてる?」
「そうだよ、あれで佐伯さん、結構僕達のこと考えてくれているよ。だから玲央に負けずに上客付けなきゃ!」
「優夜さ~ん!」
感情の起伏の激しい健は感動のあまり優夜に抱き付かんばかりの勢いだった。そしてそんな建を見ながら優夜は思った。
(健ちゃんが羨ましいよ、健ちゃんには夢が有るから……。
僕には何も無い。ただ生きるので精一杯。今日までただ流されて来ただけ……)
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