昭和浪漫ノスタルジー「遥か彷徨の果ての円舞曲」

歴野理久♂

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二章 再会は胸を締め付ける

………沈む夕日の追憶

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「祐ちゃん、俺、来たよ」
「アキ兄ちゃん、えへっ、さっきは我儘言ってごめん」

「ん~ん!俺が悪かった。豪田家との養子話を押し通したりして。でも、ここで会えて良かった」
「だって、どんなに凄いケンカをしてもこの秘密の入江に来れば仲直りって、約束していたじゃない。
僕だって悪かった。ただ寂しいってだけでアキ兄ちゃんの思いを否定した」

「祐ちゃんの気持ちは分かってるよ。でも、俺は……」
「もういいよ。僕だってアキ兄ちゃんの気持ちは分かってる。それなのにケンカなんて嫌だよ。だからこの入江で待っていた」

「ああ、今まで何度もケンカして、そしてここで仲直りしたよな」
「うん、ケンカした後はさ、どっちが先にここで待っているか、まるで競争のようだったね」

「本当にそうだ、そして今日も祐ちゃんに負けちゃったな。ケンカして頭冷やして後悔して、俺、いつも大急ぎでここに来るんだ。なのにいつも祐ちゃんが先に来ている」
「それはね、アキ兄ちゃんが頑固で意地っ張りだからだよ。僕はね、アキ兄ちゃんとケンカしちゃうと直ぐにとっても悲しくなっちゃうんだ」

「祐ちゃん……」
「僕たちこんなに仲好しなのに、どうしてケンカしちゃうんだろう?」

「あはっ、それは祐ちゃんも頑固で意地っ張りだからだよ」
「えへっ、そうだね、僕もアキ兄ちゃんと同じだね。僕たち、きっとこれからも沢山ケンカをするんだろうな」

「ああ、でも俺は、必ずここに来て祐ちゃんの来るのを待っているよ」
「それは僕のセリフだよ」

「約束しよう。この先どんなに酷いケンカをしても、この秘密の入り江では仲直りするって……」
「そうだね、約束するよ?
ずっとずっと大人になっても、秘密の入江は仲直りの入江だね」

「そうだよ、祐ちゃん。
ほら、夕日が海を染めてる」
「きれいだね。凄いくらいにきれいだね」

「ああ、この入江から眺める夕日は最高さ」
「アキ兄ちゃん、この秘密の入江で夕日を眺めるのも、もうこれで最後になるかも知れないんだね」

「いや、そんなことはない。 
俺はいつか必ず帰ってくる。祐ちゃんの待つこの町にいつか必ず!」
「アキ兄ちゃん、約束だよ?
僕は、アキ兄ちゃんが迎えに来てくれるのをずっとずっと待っているから」

「ああ、だから祐ちゃんも身体を大切にするんだ。無理はするなよ」
「うん……そうだね……
僕……アキ兄ちゃんの(ことが好きなんだ……)」

「え?なに?波の音で聞こえないよ?」
「うん、あのね、僕はアキ兄ちゃんのことが大好きだ!って言ったんだ」

「ああ、俺も祐ちゃんのことが堪らなく大好きさ!
俺たち、兄弟じゃないか」
「うん、そうだね……
僕たち兄弟なんだよね……」


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