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第六章
1 チェリーの出産 1
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☆
おれのお腹ははち切れそうになっている。
アスビラシオン様はおれのお腹を撫でる。
こんなに膨らんだお腹が、ちゃんと萎むのか心配になるほどだ。
どうやら出産が近いようで、お腹がキュッと痛くなってきた。
おれの誕生日なのに、それどころじゃないようだ。
出産予定日は、おれの誕生日あたりとは聞いていたけれど、まさか誕生日に陣痛がくるなんて想像もしていなかった。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
陣痛が来る度に、おれは練習していたように、呼吸法で痛みを紛らわす。
まだ陣痛の間隔が、遠いので、生まれるまでに、時間がかかるだろうと、宮殿のお医者様が言っていた。
「大丈夫か?」
「本当に産まれてくるのかな?」
アスビラシオン様は笑顔だ。
すごく嬉しそうな顔をしている。
おれは不安だらけなんだけど……。
「食事は食べられそうだね?」
「うん」
「ここに運んでもらうか?」
「ダイニングに行くよ。赤ちゃんが降りてくるように、歩いた方がいいんだって」
「それなら、ゆっくり歩いて行こう」
「うん」
アスビラシオン様は先に立ち上がると、おれの手を取った。
ゆっくりと立ち上がると、ずっしりとお腹が重い。
手を繋いでもらって、ゆっくりと廊下を歩いて行く。
ラウ様とカナル様もおれの歩みに合わせて、ゆっくり歩いてくれる。
そういえば、ラウ様とモモの結婚式だったはずなのに、おれの陣痛が始まってしまったので、ラウ様は急遽、結婚式を延期して、おれの一大事に備えてくれた。
「ラウ様、結婚式に申し訳ございません」
ラウ様は微笑んでいる。
「国の一大事に、王宮にいなくては王太子の側人の役目を果たせません。どうぞ気にせず、出産に集中なさって下さい」
モモは怒っているかもしれないけれど、確かにおれの出産は、国の一大事かもしれない。
生まれてくるのが男の子なら、第一王子になる。
お世継ぎの誕生だ。
女の子なら第一王女になる。
アスビラシオン様は、どっちが生まれてもいいと言ってくれたけれど、国王陛下はお世継ぎを望んでいるようだ。
ちょっとプレッシャーだよな。
階段を降りる前に、また陣痛が来て、おれはアスビラシオン様にしがみついて、また痛みが治まるまで、呼吸法で痛みを紛らわす。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
アスビラシオン様が腰をさすってくれる。
そうなんだ。
陣痛が始まったら、腰が痛くなってきたんだ。
さすってもらえると、すごく助かる。
「うん、もう大丈夫」
「そうか?」
ゆっくり階段を降りていく。
お腹が大きいから、階段がよく見えないんだ。
降りるときは、危険だよな。気をつけないと……。
やっと階段を降りると、ダイニングに到着した。
椅子に座ったら、また陣痛が来た。
温かなご飯が目の前にあるのに、おれはまた呼吸法で痛みを紛らわす。
赤ちゃんはおれと同じ誕生日になるのかな?
そう思うと、ちょっとは頑張ろうと思えてくる。
誕生日以外はいっぱいあるのに、たった1日の誕生日に合わせて生まれてくれるなんて、まるでプレゼントのようだ。
おれが陣痛で痛みを紛らわしている間は、アスビラシオン様はおれの腰を撫でながら、おれの事をじっと見てくれる。
おれ、すごく愛されているよね。
「もう大丈夫」
「それなら、今のうちに食べなさい」
「うん」
おれはスープから飲んで、朝食をきちんと食べた。
食後のプリューンもちゃんと食べて、お茶も飲む。
今日のご飯も美味しかった。
せっかく降りてきたので、外の庭園に散歩に出かける。
この世界は真夏と冬はなくて、春と秋のような気候だ。
暑くはないが、肌寒く感じる事はある。
過ごしやすい気候であるけれど……。
貴族の間では、半袖を着る事はない。半袖自体、売っていないのだ。
庭園には春の花と薔薇の花が絶えず、咲いている。
美しい庭園の中で、また陣痛が来て、呼吸法で痛みを紛らわす。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
アスビラシオン様に掴まって、陣痛が治まるまで、じっと待つ。
いつも同じコースを散歩するだけで、お昼になりかけていた。
頑張って歩いたので、陣痛の間隔も短くなってきた。
昼ご飯は、軽く食べて、パンは部屋に持ち帰ろうとしたら、後でお届けしますとメイドに言われた。
王太子妃がパンを持って歩いていたら、確かにみっともないかもしれない。
自分の部屋に、やっと戻ると、おれは陣痛が激しくなって、アスビラシオン様にしがみついて、泣き出しそうになっていた。
男の子は痛みに弱いんだよ。
医師の診察があって、なんと医師は、また散歩に出かけて下さいと言ってきた。
子宮口が開いていないと言う。
「陣痛が10分間隔になってきたら、戻って来てください」
鬼か!
今でも十分痛いのに、もっと痛くなるまで、散歩をして来いだなんて……。
「チェリー、頑張ろう」
「……うん」
母親になる試練だと思えば、ここは頑張りどころだ。
アスビラシオン様に手を引かれて、おれはまた散歩に出かけた。
すぐに陣痛が来て、アスビラシオン様にしがみつく。
カナル様が陣痛の間隔を調べてくれている。
「陣痛の間隔は、15分ですね」
「あと5分って、どれくらい歩いたらいいんだろう?」
「チェリー、いざとなったら、抱き上げて戻るから、ここは頑張ろう」
「……うん」
アスビラシオン様に励まされ、おれはまた歩き始めた。
階段を降りて、庭に行く。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
庭で涙目になって、アスビラシオン様にしがみつく。
「うう、痛いよ」
「よしよし」
アスビラシオン様はおれの腰を撫でている。
おれのお腹ははち切れそうになっている。
アスビラシオン様はおれのお腹を撫でる。
こんなに膨らんだお腹が、ちゃんと萎むのか心配になるほどだ。
どうやら出産が近いようで、お腹がキュッと痛くなってきた。
おれの誕生日なのに、それどころじゃないようだ。
出産予定日は、おれの誕生日あたりとは聞いていたけれど、まさか誕生日に陣痛がくるなんて想像もしていなかった。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
陣痛が来る度に、おれは練習していたように、呼吸法で痛みを紛らわす。
まだ陣痛の間隔が、遠いので、生まれるまでに、時間がかかるだろうと、宮殿のお医者様が言っていた。
「大丈夫か?」
「本当に産まれてくるのかな?」
アスビラシオン様は笑顔だ。
すごく嬉しそうな顔をしている。
おれは不安だらけなんだけど……。
「食事は食べられそうだね?」
「うん」
「ここに運んでもらうか?」
「ダイニングに行くよ。赤ちゃんが降りてくるように、歩いた方がいいんだって」
「それなら、ゆっくり歩いて行こう」
「うん」
アスビラシオン様は先に立ち上がると、おれの手を取った。
ゆっくりと立ち上がると、ずっしりとお腹が重い。
手を繋いでもらって、ゆっくりと廊下を歩いて行く。
ラウ様とカナル様もおれの歩みに合わせて、ゆっくり歩いてくれる。
そういえば、ラウ様とモモの結婚式だったはずなのに、おれの陣痛が始まってしまったので、ラウ様は急遽、結婚式を延期して、おれの一大事に備えてくれた。
「ラウ様、結婚式に申し訳ございません」
ラウ様は微笑んでいる。
「国の一大事に、王宮にいなくては王太子の側人の役目を果たせません。どうぞ気にせず、出産に集中なさって下さい」
モモは怒っているかもしれないけれど、確かにおれの出産は、国の一大事かもしれない。
生まれてくるのが男の子なら、第一王子になる。
お世継ぎの誕生だ。
女の子なら第一王女になる。
アスビラシオン様は、どっちが生まれてもいいと言ってくれたけれど、国王陛下はお世継ぎを望んでいるようだ。
ちょっとプレッシャーだよな。
階段を降りる前に、また陣痛が来て、おれはアスビラシオン様にしがみついて、また痛みが治まるまで、呼吸法で痛みを紛らわす。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
アスビラシオン様が腰をさすってくれる。
そうなんだ。
陣痛が始まったら、腰が痛くなってきたんだ。
さすってもらえると、すごく助かる。
「うん、もう大丈夫」
「そうか?」
ゆっくり階段を降りていく。
お腹が大きいから、階段がよく見えないんだ。
降りるときは、危険だよな。気をつけないと……。
やっと階段を降りると、ダイニングに到着した。
椅子に座ったら、また陣痛が来た。
温かなご飯が目の前にあるのに、おれはまた呼吸法で痛みを紛らわす。
赤ちゃんはおれと同じ誕生日になるのかな?
そう思うと、ちょっとは頑張ろうと思えてくる。
誕生日以外はいっぱいあるのに、たった1日の誕生日に合わせて生まれてくれるなんて、まるでプレゼントのようだ。
おれが陣痛で痛みを紛らわしている間は、アスビラシオン様はおれの腰を撫でながら、おれの事をじっと見てくれる。
おれ、すごく愛されているよね。
「もう大丈夫」
「それなら、今のうちに食べなさい」
「うん」
おれはスープから飲んで、朝食をきちんと食べた。
食後のプリューンもちゃんと食べて、お茶も飲む。
今日のご飯も美味しかった。
せっかく降りてきたので、外の庭園に散歩に出かける。
この世界は真夏と冬はなくて、春と秋のような気候だ。
暑くはないが、肌寒く感じる事はある。
過ごしやすい気候であるけれど……。
貴族の間では、半袖を着る事はない。半袖自体、売っていないのだ。
庭園には春の花と薔薇の花が絶えず、咲いている。
美しい庭園の中で、また陣痛が来て、呼吸法で痛みを紛らわす。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
アスビラシオン様に掴まって、陣痛が治まるまで、じっと待つ。
いつも同じコースを散歩するだけで、お昼になりかけていた。
頑張って歩いたので、陣痛の間隔も短くなってきた。
昼ご飯は、軽く食べて、パンは部屋に持ち帰ろうとしたら、後でお届けしますとメイドに言われた。
王太子妃がパンを持って歩いていたら、確かにみっともないかもしれない。
自分の部屋に、やっと戻ると、おれは陣痛が激しくなって、アスビラシオン様にしがみついて、泣き出しそうになっていた。
男の子は痛みに弱いんだよ。
医師の診察があって、なんと医師は、また散歩に出かけて下さいと言ってきた。
子宮口が開いていないと言う。
「陣痛が10分間隔になってきたら、戻って来てください」
鬼か!
今でも十分痛いのに、もっと痛くなるまで、散歩をして来いだなんて……。
「チェリー、頑張ろう」
「……うん」
母親になる試練だと思えば、ここは頑張りどころだ。
アスビラシオン様に手を引かれて、おれはまた散歩に出かけた。
すぐに陣痛が来て、アスビラシオン様にしがみつく。
カナル様が陣痛の間隔を調べてくれている。
「陣痛の間隔は、15分ですね」
「あと5分って、どれくらい歩いたらいいんだろう?」
「チェリー、いざとなったら、抱き上げて戻るから、ここは頑張ろう」
「……うん」
アスビラシオン様に励まされ、おれはまた歩き始めた。
階段を降りて、庭に行く。
「はあ、はあ、ふう、ふう……」
庭で涙目になって、アスビラシオン様にしがみつく。
「うう、痛いよ」
「よしよし」
アスビラシオン様はおれの腰を撫でている。
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