隣のマンションの白い壁

守 秀斗

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第4話:港で自撮りする

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 次に、私は港に行ってみたの。
 しかも、夜中に。

 港ってロマンチックじゃないの。
 そう思わない。

 なんとなく幻想的で。
 そして、その幻想的な風景に相応しいのが美人の私なのよ。
 本当の美人の私に相応しいわ。

 ナルシス女、もうどうしようもないこのナルシス変態女、地獄に落ちろ! 

 あら、またもや罵声が聞こえてきたわ。
 でも、私が美人なのは千パーセントの事実なのよ。

 千パーセントってお前はバカかって?
 バカですよー!

 港には私の愛車の中古の軽自動車で来た。でも、港と行っても、近くの河川港。海じゃないわよ。本当は東京湾に行きたかったけど、ちょっと遠いからやめた。
 
 そこで、車の中で着替える。着ている水着は、青いビキニ。この前、ホテルのプールで自撮りしてみたら、あら、なかなかきれいに撮れてるじゃない。美人でスタイル抜群の女が映っていたわ。惚れ惚れしちゃうわね。

 自分から美人でスタイル抜群の女とか言うなって?

 そう、私はナルシストね。でも、いいじゃないの。実際、きれいなんだから。自宅では自撮りに熱中。それをネットに投稿の日々。顔変換ソフトで顔を変えて投稿。さらに美人にして。元々美人だけど。元が美人だから、超美人になる。そう、私はすごい美人。

 だから、自分で美人とか言うなって?

 すみません。
 でも、きれいなのよ。自宅で自分の顔を鏡で見て、一日中、うっとりしている時もあるわね。

 もう、呆れた。どうでもいいよ、一日でも一週間でも一月でも一年でも百年でも見続けて、ついでに餓死してしまえって?
 ひどいこと言うわね。

 前にも言ったけど、自撮りして、投稿名も男性にして、男性がAI画像とかを投稿しているって感じにしている。でも、実際は私の本当の姿態を見られてるのよ。ああ、興奮するわ。大勢の人たちが私の美しい体を見てるのよ。ああん、もうネット上で私は視線で乱暴されてるの、ああ、気持ちいいわ!

 興奮したり、気持ちいいって、お前変態だろって?

 だから、変態じゃなくて、性の探究者よ。何度も言うけど。とにかく、気持ちがいいの。見られたいの。百億回でも言うけど、若くて美人できれいでセクシーで美しい体の私を見てほしいの。

 私は注目されたいのー!
 ああ、何回も言っちゃうわ。とにかく若い私のきれいで美しい体を見てほしいのよ、ああ、全人類に見てほしいの。

 お前、本当のナルシストだなって?

 だから、何度も言うけどいいじゃないの、事実きれいな体なんだから。
 また、自分からきれいって言ってしまったわね、女性たちから猛反発くらいそう。

 でも、自宅だけじゃあ、つまらなくなってきたからホテルとか行ったんだけど。で、今回は夜の港を背景にしたら、カッコいい、セクシーな画像が撮影できるんじゃないかしらって思ったの。そんなわけでやって来たの。河港だけどね。

 みんな、私のセクシーな姿を見てー!
 美しい芸術品であるこの私を見てー!

 大声で叫びたくなるわね。
 しつこいかしらね。

 でも、誰もいないわね。そこで、いろんなポーズを撮影。スマホを三脚台に載せて、リモコン操作で撮影。フラッシュが焚かれる度になぜか興奮する私。何か興奮しちゃうのよねえ、フラッシュの光を浴びたり、音が鳴るのを聞くと。なぜかしらね。誰か科学的に証明してほしいわね。ああん、興奮しちゃうのよ。でも、女って見られたいのよねえ。私だけかしら。違うわよねえ。

 皆さんも見てもらいたいんじゃないの。

 お前だけだよって?
 そうかしら。

 さて、調子に乗って、いろんな水着に着替える。ああ、もっともっと過激な衣装でも撮影したくなってきた。通販サイトを見るといろんなセクシーな衣装が売ってるじゃない。私が買えるのはみんな中国製で安物ばかりだけど。もっと購入してみようかしら。そんなことを考えながら、また自撮り。

 フラッシュを浴びるとさらに興奮。

 画像をチェックすると陶酔したような表情の私が映っている。
 淫らな私。
 いやらしい行為をしているような私。

 実際にしたくなってきたわ、ああ、どうしようかしら。
 誰もいないし。

 もう、頭の中は妄想でいっぱい。
 大勢の男に人たちに弄ばれるのよ、ああ、気持ちよさそう。
 汗まみれになって、しまくるの。

 妄想まみれの私はますます興奮する。
 ああ、やばい、このまま、本当にこの場所でしちゃいそう。
 どうしようかしら、手が股間にのびていく。
 まずいわ。
 でも、我慢できない。
 けど、まずいわ。

 私が迷っていると、車が一台やって来た。
 数人の男たちが降りる。
 すっかり正気に戻る私。

「ねーちゃん、一人で何やってんだよ。そんなエロい格好で。なんだよ、変態か、あんた」

 中年のおじさんたち。
 でも、何だか一般人と違う怪しげな雰囲気。
 やばい、私、襲われるの。
 さっきまでは頭の中で襲われたけど、現実で襲われたくないわ。
 実は気が弱い私は怖くなって、声が出ない。

「俺たちと遊ばないか、他の場所で。楽しいことしようぜ。あんたを満足させてやるよ。そんな格好してるのって欲求不満なんだろ」

 ニヤニヤ笑いの男たちに囲まれる私。ああ、どうしよう、男の人に見られるのは気持ちいいけど、好き勝手に乱暴されるのは嫌だわ。私が震えていると、何とタイミング良くパトカーがやって来たわ。誰か知らないけど、私が絡まれているのを見て通報してくれたんだ。ああ、助かったわ。

 パトカーからお巡りさんが二人降りてきて、男たちに注意してる。まあ、今のところ、単に私に話しかけただけだし、結局、お咎めなしで男たちはまた自動車で帰っていった。どうやら、ヤクザとかじゃなくて単なる飲み会帰りの会社員みたい。ヤクザなら、そのまま逮捕の可能性もあったようねこういう時って。ヤクザさんたちも、まだ何もしてないのに逮捕されちゃうんだから大変ね。

 さて、私は警官にお礼を言った。

「助けてくれてありがとうございました。誰かから通報があったんですか」
「そうなんですよ。河の港で怪しげなことをしている女の人がいるって、通報がありましてね」

 あら、怪しげな方は私だったの。その後、お巡りさんにもお説教をくらってしまった。こんな夜中に変な格好で女一人で自撮りなんかするなって。すっかりしょんぼりと自宅マンションに帰る私。ああ、イライラする。

 別に変な格好じゃないわよ!
 芸術よ、芸術品よ!

 家の中で、もう裸になって自撮りする私。でも、これを投稿したら、アカウント抹消されちゃうわね。だからあきらめる。

 ああ、ますますストレスが溜るわ。
 ストレス解消でますます自分でする行為が激しくなっていくの。

 私、おかしいかしら。
 おかしくないわよね。

 けど……おかしいかしら、やっぱり……。

 ああん、もう一回、やっちゃおうっと!

 でも、何で妄想では気持ちがいいのに、現実ではすごく怖いのかしら。
 誰か科学的に証明してほしいわね。
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