隣のマンションの白い壁

守 秀斗

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第13話:色っぽい格好で、警官に職務質問を受ける

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……………………………………………………

 いやらしい女。あんないやらしい格好で歩き回る。周りの迷惑を考えない変態女。ああいうう女が世の中をダメにする。うっとおしくてしかたがない。住んでいる家の場所はわかっている。そして、夜中に変態的な格好で歩いているのを目撃した。いっそのことそのいやらしい行動を撮影してネットに流すことも考えた。でも、そんなことをしたら自分が捕まるかもしれない。ネットなんて自分の住所連絡先付きでいろんなことを世界中に流しているってことを知らない人が多い。調べればすぐに警察に筒抜け。だから我慢。でも、イライラする。あの変態女に制裁をくわえる必要がある。見られたいんだろうな。見られて興奮している淫乱女。じゃあ、いっそ全裸にしてそれをデジタルカメラで撮影して写真を印刷、大量コピーしてばらまく。ネットでその画像を流したらすぐにこっちの身元がバレてしまう。全裸画像なんて流したら、即逮捕される。けど、紙でばらまいてもわからない。原始的な方法が一番効果的。

 変態女に制裁を!

……………………………………………………

 今日も、私は夜中に散歩。もちろん、ボンデージファッション。今回もかなりいやらしい格好。靴は黒いピンヒール、腕には黒いロンググローブ、脚は黒いニーハイソックス、もちろんガーターベルトで吊ってあるの。黒いショーツに黒いブラ。

 ああ、興奮するわ!

 全部、エナメルでテカテカ光っている。何でエナメルとかだと普通の布よりいやらしく見えるのかしらとまた考えてしまう。アインシュタインでもいいから科学的に証明してほしいわね。アインシュタインはもう亡くなったけど。

 さて、マンションの玄関から出ると、私はいつものように周辺を歩く。人通りはないわ。ホント、閑静な場所ねえ。深夜だからね。けど、私の頭の中では大勢の人にこのいやらしい格好を見られているの。視線で私のことを、ありとあらゆる行為、そう恥ずかしい行為をされてるの。私は一切、逆らえないの。私は奴隷になるの。そして、快感の渦に巻き込まれるのよ、ああ、すごく興奮してきたわ。濡れてきたわ。もうショーツを浸透してきたわ、ああん、太股を伝わって膝まで液が垂れちゃいそう。

 ああ、もう私をメチャクチャにしてほしいの。もう、いろんな行為で私を楽しませてほしい。大勢の男に人に取り囲まれる。拘束されるの。四つん這いにされるの。着ている下着は剥ぎ取れるの。何人もの男の人たちが私を貫くの。いっぱい注ぎ込まれるの。三つの穴全てに。好き放題にされるの。ああん、気持ちいいわ。

 そして、すごく開放的な気分にもなる。不思議ね。頭の中では拘束されてるのに、開放的な気分になるなんて。やはり誰か科学的に証明してほしいわね。まあ、「お前は単なる変態だ」で終わりそうだけどね。

 ああ、美しい私をメチャクチャにしてほしいの!
 きれいな私を好き放題にしてほしいの!

 ああん、たくさんいっぱい注ぎ込んでえ! 前の穴にも後ろの穴にも口にも。
 そして、私に強制してほしいわ、外でするの、あれもこれも。
 自分でさせられたり、前から後ろから出すの。

 それを見られて、辱めを受けて、私は興奮している。
 興奮して濡れたあそこを撮影されるの、後ろの穴がヒクヒクと動いているのも、ああ、気持ちがいいわ!

 そして、私が頭の中でいろんな妄想をしている、その時、背後に視線を感じた。誰かしらと振り向くけど誰もいない。ただ、街灯が光っている薄暗い閑静な住宅街の道路。気のせいかしらと思った、その時、前方の曲がり角から、自転車に乗って人がやって来た。ライトが私を照らす。よく見ると警官だ。

 あわわ、どうしよう。

 街灯の下で、慌てて、持っていたスプリングコートを着ようとするが、突然の出来事で、焦ってなかなか着れない。鈍臭い私。だから泳げないんだわ。そんな風にドタバタしているうちに私の目の前にやって来た、その警官が自転車を停めた。

「あの、ちょっとよろしいでしょうか」
「は、はい」

 何とかコートを着る私。でも、ボンデージファッションはバッチリ見られちゃった。気の弱い私。もうドキドキしている。変態行為で逮捕されちゃうのかしら。迷惑行為防止条例違反で逮捕かしら。会社にも親にもバレちゃうのかしら。えー、晒し者だわ、恥ずかしいわ。

「ここで、何をされてるんですか」
「……あの、家に帰ろうとしてまして」

 すると、その若い警官は無表情で言った。

「防犯活動で巡回してまして、気になったので、お声をかけさせて頂きました。一応、確認のため身分証明書などを見せていただければ」

 私はポシェットを探った。ああ、良かった。運転免許証があった。それを警官に見せる。すると、その警官は免許証を見て、ちょっと不審げな顔をした。

「えーと、酒井千里さんですね」
「はい、そうです」
「職業は」
「会社員です」

 しばらく無言の警官。

「あの、マスクを取ってくれますか」
「はい」

 私は警官の命令に従ってマスクを外した。警官が免許証の写真と照らし合わせている。また、ちょっと不審げな顔をする。そして、その免許書の住所の欄を指差した。

「あの、この住所だと、あなたの自宅とは方向が逆なんですけど」
「……その、えーと、喉が乾きまして、向こうにある自販機で水を買って帰ろうとしてたんです」
「はあ」

 何だか、じろっと私の顔を見る若い警官。私はますますおどおどしながら言い訳をする。

「あの、こんな格好してますけど、あるアニメのコスプレ大会に出まして、その後、飲み会があって、帰りがこんなに遅くなったんです……それで、今夜はものすごく暑くて、湿気もひどいので、ついコートを脱いでしまいました。すぐに着るつもりだったんですが、すみません……」

 こんな適当な言い訳が通じるかしら。こんな暑い夏にコートなんて着るわけない。だいたい普通の服に着替えるじゃないの。私はますますドキドキしている。しばらく免許証を見ながら黙る警官。そして、また私の顔を見ながら言った。

「そうですか。まあ、この辺りは犯罪はほとんど発生しないのですが、やはり女性の夜の独り歩きは危険ですよ」
「は、はい。わかりました」
「では、ご協力ありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい」

 警官は免許証を私に帰すと、また自転車に乗って行ってしまった。
 ほっとする私。

 そして、私は足早に急いで自宅のマンションに帰る。部屋に戻って、がっくりと床に膝をおろす。うわー、恥ずかしい。けど、他人に見られたいとか言っておきながら、実際に間近でボンデージファッションを見られると恥ずかしいなんて、私はアホじゃないかと思ったりする。おまけに住所も把握されてしまったんじゃないのかしら。

 もう、真夜中にボンデージファッションで外出なんてやめようっと。
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