ショタ王子が第一王子なんて聞いてませんけど!?

疾矢

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3.隣国戦争

14.

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(ハイセンサイド)

「っ…」
目が覚めると見知らぬ天井が見えた。
俺は確か戦場に来ていたはず…寝泊まりしているテントの屋根と違うな…何故だ?

「あ、目が覚めたんですね」
「っ貴様は…」
マスクを着けた聖女候補が近くにいた。ばっと起きると目眩がして頭を抑える。

「っ」
「あ、無理しないで下さい」
「触るなっ」

俺の肩に触れてきた奴の手を払う。結構力が入っていた様でパンっと音が響いた。

「体に触れた事は謝ります。ですが、ハイセン団長は昨日大怪我をしてここに運ばれてきたんです。だから無理しないで下さい」
「昨日…?」

昨日?そう言えばこいつの事を考えていた時に近くに砲弾が落ちたんだった。あの時俺は死んだと思ったが生きていたんだな。
手や足を見たが昨日の傷がない。確か喋れない程全身火傷していた筈だが…

「信じられない…」
何故全部治ってるんだ?腕がいい治癒師がいるのか?

「俺の事を治したのは誰だ?」
「…迷惑でしたか?」
「誰だと聞いてるんだ。答えろ」
「俺ですけど…?」
困った様に眉を寄せた聖女候補が名乗り出る。
「貴様が…」
「はい。まだ痛む所がありますか?」
今度は心配そうな顔をして俺を見る。
「いや、痛む所はない」
「それは良かったです。外傷は治っていても大量出血しているのでこのまま今日は休んでいて下さいね」
「ふざけるな。俺は第一騎士団団長だ。俺が寝ていたら下の者に示しがつかない。今すぐここを出る」

布団を捲ってベッドを降りようとすると聖女候補に肩を押さえられた。

「ちょ、ダメですってば!ホワイト!」
「きゃん!」

近くにいた白い獣がベッドに飛び乗り元の大きな姿になった。俺の上にのし掛かり身動きが取れなくなる。

「くそ!やめろ!俺にこんな事して良いと思ってんのか!?」
「良いんです!俺は聖女候補として皆さんの体調を診る役目があるんです!病人は大人しく寝て下さい!罰でも何でも体調が戻ったら受けます。だから今は治療に専念して下さい」

俺に物おじせず大声で言い切った聖女候補に言葉が出ない。
意外と肝が据わっているのかもしれない。
だが言い返された事にイライラする。掴み掛かろうにも指先しか動かせない。

「ホワイト後宜しくね」
「きゃん」
「こら、待てっ!」
「しーっ。ハイセン団長他の患者さんに迷惑です。静かにして下さい」
「っすまん」

にこっと微笑み一度頷いた聖女候補は俺の側を離れ他の病人の治療へと赴いて行った。
何なんだ。あいつは。つくづくムカつく奴だ。


「ハイセン団長、昼食持ってきました~」
昼ごろ昼食を持った聖女候補がやって来た。
「それより早くこいつを降ろせ」

俺の上ですやすやと眠っている白い毛玉を指さす。その獣を聖女候補が撫でると獣は頭を聖女候補に擦り付けた。余程懐いている様だ。

「ホワイトもお昼にしよ?」
毛玉は嬉しそうに一声鳴くと少し小さくなった。そのお陰で俺が動ける様になる。

「ハイセン団長、一人で食べれますか?」
「舐めるな」
「はは、舐めてませんよ。ではどうぞ。残さず食べて下さいね」

聖女候補は、俺と毛玉に昼飯を置くと去って行った。
目の前に出されたのは温かいシチューとパン、生野菜だった。
生野菜があるのは珍しい。気怠い体を起こしスプーンを持ちスープを一口食べてみた。

うまい。温かいスープが身に染みる。パンもふわふわで出来立ての匂いがする。
周りを見てみると皆美味そうにかき込んでいた。
救護班の食事は別らしい。こんな上手い飯を外では食べた事がない。
正直ここの飯が羨ましいと思った。

「ハイセン団長、ご飯どうでしたか?」
昼食を食べ終えゆっくりしていた頃、聖女候補が戻って来た。毛玉が律儀に俺の足に乗っている為身動き取れない。

「…美味かった」
「はは、それは良かったです。夕飯も楽しみにしていて下さいね」
まるで自分が作っている様な口ぶりに遂質問してしまった。

「貴様が作ったのか?」
「はい、そうですよ?まあトミーとか皆んなに手伝って貰ってますから皆でですけど…」

こいつ、ご飯作れたのか。姉の聖女様は美食家の様でシェフに相談して肉料理メインで作ってもらってると言うが兄弟揃って食には詳しい様だ。
こいつの事はあまり好かんが、こいつがつくる飯は美味い。もう少しここに居るのも悪くない。
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