神にもらった最強チートでやりたい放題

モデル.S

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第1章

噂話

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ギルドのカウンターで、健人たちは討伐証明となる魔石と素材を提出していた。

 受付のリナが目を見開く。

 「……すごい。すべて損傷なし。グレイハウンドのリーダー個体まで……!」

 「ま、俺たち、ちょっとだけ本気出しましたからね」
 リュカが得意げに言うと、ティナが肘でつつく。

 「ちょっと、調子に乗らないの」


---

 リナは魔石を一つずつ確認してから、真顔に戻った。

 「正式にBランク依頼達成を確認しました。報酬はこれになります」

 報酬袋の中には、銀貨と金貨が混ざった、これまでで最大の額。

 さらに――

 「今回の功績、ギルド内での“注目冒険者”に登録されるかもしれませんよ。
  名前、少しずつ広まってますから」


---

 ギルドを出た三人は、手応えと疲労を分け合うように歩いていた。

 「……やっとBランクらしくなってきたな」

 「でも、注目されるってことは、変な依頼とか、他のパーティとの関わりも出てくるかも」

 ティナの言葉に、健人は少しだけ空を見上げた。

 (俺たちの動きが、少しずつ“表に出て”きている)


---

 その日の夕方。
 街の広場で飲み物を買って休んでいた三人の前に――

 「……あなたたち、グレイハウンドを倒した冒険者ですか?」

 現れたのは、真っ白なローブを着た少女だった。

 年の頃はティナと同じくらい。小柄で大人しそうな印象、だが瞳は深く強い光を宿していた。

 「突然すみません。私、あなたたちに“お願いしたいこと”があるんです」


---
夕暮れの街。
 のんびりとした空気が流れる広場で、健人たちはちょっとした休息を楽しんでいた。

 そこへ、白いローブをまとった少女が現れる。

 「……あなたたち、グレイハウンドを討伐した冒険者ですよね?」

 年の頃はティナと同じくらい。
 だが、その瞳には、ただならぬ緊張と焦りがにじんでいた。


---

 「お願いがあります……! 私の村で、異常な現象が起きているんです。どうか、助けていただけませんか!」


---

 健人は少女の真剣な訴えを最後まで聞き、そして静かに答えた。

 「気持ちはわかるが、俺たちは“ギルドを通してない依頼”は受けない」


---

 「っ……でも、ギルドに行ったんです! だけど、時間がかかるって……!」

 「それが“当たり前”だ」

 リュカが鋭く言い返す。

 「ギルドの手続きってのは、信頼と安全のための仕組みだ。
  それを飛ばして誰かに依頼するってのは、“信用できない”って言ってるようなもんだぜ?」


---

 ティナも表情を柔らかくしながら続ける。

 「あなたの焦る気持ちはわかる。けど、ちゃんとした依頼なら、必ず誰かが動いてくれる。
  その中に、私たちが選ばれることもあるかもしれない。……そう信じて、待ってて」


---

 少女はしばし唇を噛んでいたが――やがて、深く頭を下げた。

 「……わかりました。ギルドに行って、正式に依頼を出します。すみませんでした」

 そのまま少女は足早に立ち去っていった。


---

 「……珍しく冷たかったな、ケント」

 リュカがぼそっとつぶやくと、健人は目を閉じて言った。

 「誰かを助けるためにも、“守らなきゃならない筋”ってのがある。
  それを無視したら……“助ける資格”すら無くすこともあるからな」


---

 その夜。
 ギルドから一通の緊急依頼が届いた。

 > 依頼人:アイリス=レフナ
 > 内容:緊急調査依頼

 リナが封筒を渡す際、少しだけ笑った。

 「あなたたちを名指しで指定してきたわよ。……よっぽど信頼されたのね」


---
谷あいに広がる静かな村――レフナの村。
 麦畑と風の音、遠くで鳴く小鳥たち。
 けれどその空気は、どこか不自然に淀んでいた。

 「……この空気。普通じゃないわ」
 ティナがつぶやく。

 「魔力が……流れてる。けど、それがどこにも“満ちていかない”」


---

 迎えに出たアイリスは、緊張した面持ちで彼らを出迎えた。

 「来てくれて……ありがとうございます」

 「話はギルドから聞いた。案内を」


---

 案内されたのは村の裏手、林の奥――古びた井戸だった。

 「この井戸の下に……古い術式があるんです。
  数日前から、そこから“地の力”を吸うような気配が広がっていて……」

 「吸う……?」

 リュカが眉をひそめた。


---

 健人が井戸を覗き込み、
 手をかざして魔力の流れを感じ取る――

 微細な“吸引”の流れ。

 地脈から上がってくるはずの魔力が、途中で“引きずられ”るようにして別方向へ流れている。

 「……確かにあるな。これは“吸収型”の術式。
  周囲の魔力を集めて、どこかへ転送している」


---

 「昔の文献に、“土地が痩せた時代”って記録があるんです。
  村の長老は、“またあれが始まった”って……」

 アイリスの目がわずかに揺れた。

 「術式そのものは、もう誰も操作してないはずなんです。
  でも、最近になって急に“力を強め始めた”んです」


---

 「誰かが再起動したのか、あるいは――自動的に活性化したか」

 ティナが手帳を開きながら記録する。

 「もし吸収先が“蓄積式”だったら……いずれ飽和して、“暴走”するかも」


---

 「井戸の底に行こう」
 健人が言う。

 「術式を視て、何のために作られたか、誰が作ったか――調べる必要がある」

 リュカとティナがうなずく。

 アイリスは少し顔を上げて言った。

 「私も、案内させてください。……これは、私たちの村の問題ですから」


---
井戸の底へと降りる健人たち。

 古びた石段の先、地下に広がっていたのは、自然と人工が融合したような空間だった。

 土と石に囲まれた広間。その中心には――
 **魔力の流れを集中させる“転送陣の核”**が、脈動するように赤黒く輝いていた。


---

 「……これは、放っておいたら本当に暴走する」
 ティナが魔力の波を見て顔を強張らせる。

 「それだけじゃねえな……来るぞ」
 リュカが武器を抜いた、その瞬間――

 ガガガッ……!

 魔法陣の中から浮かび上がるように、黒い甲殻に包まれた“獣”が姿を現した。

 術式守護獣――デヴォーラ・アーク。

 四足の巨大な怪物。腹部には術式の断片が組み込まれており、動力そのもののように見えた。


---

 「ここを守ってる……術式そのものに組み込まれた存在だ!」
 健人が剣を抜くと同時に、獣の咆哮が地下を揺らす。


---

 【戦闘シーン(抜粋)】

 ・獣の魔力衝撃波をティナが《プロテクション・シェル》で受け止める
 ・リュカが背後から斬撃→動きが硬い場所を見抜いてピンポイント攻撃
 ・健人は真正面から魔力を逆流させる一撃で術式の核を“切断”


---

 数分後、地面に巨体が崩れ落ちる音とともに、術式の輝きが静かに消えた。

 「……止まった。これで、魔力の吸収は止まったはず」
 ティナが息を整えながら言う。

 アイリスはその場にしゃがみ込み、心からの安堵を見せた。


---

 地上に戻ると――

 村の中央に、華美なローブをまとった魔法学園の役員たちが集まっていた。

 「これは……学園の紋章……」
 ティナが目を丸くする。

 「ふむ、なるほど。術式は停止済みか」
 中央にいた男が一歩前に出る。

 「我々は、魔法学園の研究上層部の者だ。
  この村に存在した“自動魔力吸収陣”の遺構について、調査・研究のために正式な使用許可を求めに来た」


---

 村人たちは戸惑い、怯えた様子。
 その目には、「また何か始まるのでは」という不安がにじんでいた。


---

 健人は黙ってその場を見つめていた。

 (――術式を破壊しなかったのは、あえてだ。だが……それが“誰かに使われる”可能性もある)


---
村の集会所。
 魔法学園の上層部――貴族の血を引く重鎮たちが、悠然と椅子に腰掛けていた。

 「……この村に存在した術式は、我々の研究対象と極めて親和性が高い。
  ついては、この場所と資料を“学園の管理下”に置かせてもらいたい」

 長身の男が、まるで当然のように言った。
 周囲の村人たちはうつむき、誰も言い返せなかった。


---

 「……学園の人間には、逆らえないってことですか」
 ティナが低くつぶやくと、アイリスも悔しそうに拳を握る。

 「……はい。もし反発すれば、村は“保護対象”ではなくなる。
  道も商隊も、魔法の医師さえ来なくなるでしょう」


---

 だが――

 「それでも、村に“見返り”を交渉すべきだ」

 沈黙の中、ケントが口を開いた。

 「この土地をただ明け渡すのではなく、“技術協力に対する利益配分”を。
  魔石供給の優先権、学園からの派遣医師の常駐、作物用の魔法肥料……条件を並べろ。
  向こうは譲らないが、損もしたくないはずだ」


---

 村長が顔を上げた。

 「……できるのか、そんなこと……?」

 「やるしかない。村が黙って搾り取られる未来は、誰も望まない」


---

 その後、ケントの提案をもとに、
 **“村の土地と遺構の管理は学園に委ねるが、村民の生活を保障する条項”**をいくつも提示した。

 最初は渋っていた貴族たちも、
 ケントの冷静な説明とアイリスの必死な訴え、村の古文書による根拠により、
 最終的に――条件付きで“提案を受け入れる”形となった。


---

 交渉後、ケントは外の静かな夜風を受けながら、空を見上げていた。

 (……あの術式。あれは止まったけど、同じ技術はもう“研究されてる”)

 (そして――未来で暴走が起きた時、神は“事故ではない”と言っていた)


---

 つまり――

 誰かが意図的に暴走させた。
 そしてその誰かは、“既に術式の知識を持っている”


---

 「止めるには……まず“その誰か”を見つけなければならない」

 ティナとリュカが、少し離れた場所からケントを見ていた。

 「考えごと?」

 「……ちょっとな。次にやるべきことが、見えてきた気がする」


---

 ケントの瞳には、静かだが確かな覚悟が宿っていた。

 (暴走を起こしたのが誰なのか――
  その正体を突き止め、止めるために。
  俺は“内部”へ入る。正面から、堂々と)


---
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