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肆ノ章:狂宴
第111話 突破口
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龍人が弓を構え、がしゃどくろに狙いを定める。その間に武装した颯真とレイは突撃を敢行し、亜弐香もまた素手で悠々とがしゃどくろに向かって歩みを進める。がしゃどくろは、周りに群がってくる化け猫達を腕の一薙ぎで蹴散らし、龍人の友人とプラス一名の方を睨んだ。果たして明瞭な意志があるのかは定かでは無いが、その態度からしてレイ達を優先すべき排除対象として認識をしたらしい。池から這い出たその姿には、足らしきものは見当たらず、匍匐のような形で動く。機動力こそトロいとはいえ、ちょっとした丘と見紛いそうな体躯である。気の向くままに暴れさせてはマズい。
颯真が自分の元に飛来した数機のドローンに指示を出し、変形をさせた上で携えていたライフルへと装着する。以前に使用したレールガンをさらに改良し、専用のドローンとの合体によって義翼に頼らずともレールガンの使用を可能にしたらしい。威力は大幅に落ちるものの、電力をドローンから供給する事で義翼のエネルギーを消耗せずに済み、何より軽量化によって取り回しを容易くすることに成功していた。 銃撃は致命傷にこそならないものの、がしゃどくろを怯ませ、苛立たせる事には成功していた。
レイは鉄の爪を携え、軽くジャンプを繰り返して足の具合を確かめる。そして暴れているがしゃどくろとの距離を詰めるために駆け出した。振りかざされる腕を容易く躱し、間隙をすり抜けるように移動し、やがて爪をひっかけてがしゃどくろの腕を走って昇っていく。恐ろしい体幹とバランス感覚、そして瞬発力であった。異変に気付いたがしゃどくろが振り払おうとするが、その頃には黒擁塵から刀を取り出し、巨大な眼へとレイは飛び掛かっていた。刃が眼球に突き立て、がしゃどくろが悲鳴と思わしき鳴き声を轟かせる中、黒擁塵から更に別の道具を取り出し始める。手りゅう弾であった。片手で刀にしがみついたまま口で引っ張ってピンを外し、切り口の中にそれをねじ込む。そして、そのまま手を放して落下の速度に任せて退避した。
爆発が起き、がしゃどくろが大きく怯む。その背後へと亜弐香は回り込んでいく。途中振りかざされた腕や、攻撃の余波で瓦礫が飛んでくるのだが、彼女は避ける事すらせずにその身一つで受けるか、或いは拳で叩いて弾くだけであった。危機感が無いように見えて、その実これが彼女にとっては手早い。先程の動きや力加減を見て既に確信していた。危険と判断するまでもない。やがて眼を潰されて怒り狂っているがしゃどくろの背後、末端の骨の一部に彼女は触れる。指先のみを摩変鋼によって硬質化させ、ひび割れを起こさせながら食い込ませる事で容易く掴む事が出来た。もはやこの状態では、向こうが藻掻いたところで簡単には手が離れないだろう。
そして想像通りであった。藻掻いてレイや颯真、その他の化け猫達を攻撃しようとしていたがしゃどくろの動きが止まる。亜弐香は片手で、動こうとするがしゃどくろの勢いを抑え殺していた。力任せに引き摺り倒そうとしても、彼女はよろける素振りすら見せようとしない。海に降ろされた錨の如く、巨体を繋ぎとめてしまっている。更にあろう事か、そのままゆっくりと腕を頭上に上げ始めた。がしゃどくろの体が浮き上がり、垂直に立てられたかのような姿勢になる。
「おいおいマジか…」
颯真がドン引きする中、亜弐香は愉快そうに突き上げた腕を、後方に振り向きながら勢い良く叩きつける。地は陥没し、亜弐香が手を放してやったことでがしゃどくろは体の各部にヒビが入れられながらも解放され、転がって倒れた。亜弐香は更に歩いて距離を詰めていき、起き上がったがしゃどくろは威嚇のように怒鳴るが、そこに最初程の気迫は無く、僅かながらに困惑と怯えがある。そのままがむしゃらに拳を握り、迫りくる一匹の鬼へ振りかざしてきたが、あまりにも相手が悪すぎた。
亜弐香は嬉々として片腕を硬質化させ、フェイントや即効性をかなぐり捨てたテレフォンパンチでそれを迎え撃つ。来ると分かっている攻撃に合わせるだけなのだから、この程度の動きで良い。向かって来る巨大な腕に対し、彼女は平然と拳を叩きつけ、それを砕いた。一撃である。がしゃどくろはのけぞり、再び苦痛を味わったかの様な苦しい叫びをひり出すが、すぐに立ち直った。信じられない事に、腕が再び再生を始めたのだ。
「がしゃどくろ…あんな力あったっけか ?」
これに関しては、流石の亜弐香も首をかしげたくなった。元来の気質は共謀ではあるものの、かなり臆病で墓地の地中で隠れて過ごす事も多いというがしゃどくろが暴れているというのも不思議であったが、あのような身体の修復を行えるというのは尚の事耳にしていなかった情報である。やはり、籠樹達に何かされた可能性があった。いずれにせよ、生半可な攻撃ではどうしようもないらしい。
「よし、これで決める」
その戦闘の最中、龍人は弓を空に向けて構えていたが、やがて空に浮かぶ雲たちに狙いを構えたままニヤリと笑った。
颯真が自分の元に飛来した数機のドローンに指示を出し、変形をさせた上で携えていたライフルへと装着する。以前に使用したレールガンをさらに改良し、専用のドローンとの合体によって義翼に頼らずともレールガンの使用を可能にしたらしい。威力は大幅に落ちるものの、電力をドローンから供給する事で義翼のエネルギーを消耗せずに済み、何より軽量化によって取り回しを容易くすることに成功していた。 銃撃は致命傷にこそならないものの、がしゃどくろを怯ませ、苛立たせる事には成功していた。
レイは鉄の爪を携え、軽くジャンプを繰り返して足の具合を確かめる。そして暴れているがしゃどくろとの距離を詰めるために駆け出した。振りかざされる腕を容易く躱し、間隙をすり抜けるように移動し、やがて爪をひっかけてがしゃどくろの腕を走って昇っていく。恐ろしい体幹とバランス感覚、そして瞬発力であった。異変に気付いたがしゃどくろが振り払おうとするが、その頃には黒擁塵から刀を取り出し、巨大な眼へとレイは飛び掛かっていた。刃が眼球に突き立て、がしゃどくろが悲鳴と思わしき鳴き声を轟かせる中、黒擁塵から更に別の道具を取り出し始める。手りゅう弾であった。片手で刀にしがみついたまま口で引っ張ってピンを外し、切り口の中にそれをねじ込む。そして、そのまま手を放して落下の速度に任せて退避した。
爆発が起き、がしゃどくろが大きく怯む。その背後へと亜弐香は回り込んでいく。途中振りかざされた腕や、攻撃の余波で瓦礫が飛んでくるのだが、彼女は避ける事すらせずにその身一つで受けるか、或いは拳で叩いて弾くだけであった。危機感が無いように見えて、その実これが彼女にとっては手早い。先程の動きや力加減を見て既に確信していた。危険と判断するまでもない。やがて眼を潰されて怒り狂っているがしゃどくろの背後、末端の骨の一部に彼女は触れる。指先のみを摩変鋼によって硬質化させ、ひび割れを起こさせながら食い込ませる事で容易く掴む事が出来た。もはやこの状態では、向こうが藻掻いたところで簡単には手が離れないだろう。
そして想像通りであった。藻掻いてレイや颯真、その他の化け猫達を攻撃しようとしていたがしゃどくろの動きが止まる。亜弐香は片手で、動こうとするがしゃどくろの勢いを抑え殺していた。力任せに引き摺り倒そうとしても、彼女はよろける素振りすら見せようとしない。海に降ろされた錨の如く、巨体を繋ぎとめてしまっている。更にあろう事か、そのままゆっくりと腕を頭上に上げ始めた。がしゃどくろの体が浮き上がり、垂直に立てられたかのような姿勢になる。
「おいおいマジか…」
颯真がドン引きする中、亜弐香は愉快そうに突き上げた腕を、後方に振り向きながら勢い良く叩きつける。地は陥没し、亜弐香が手を放してやったことでがしゃどくろは体の各部にヒビが入れられながらも解放され、転がって倒れた。亜弐香は更に歩いて距離を詰めていき、起き上がったがしゃどくろは威嚇のように怒鳴るが、そこに最初程の気迫は無く、僅かながらに困惑と怯えがある。そのままがむしゃらに拳を握り、迫りくる一匹の鬼へ振りかざしてきたが、あまりにも相手が悪すぎた。
亜弐香は嬉々として片腕を硬質化させ、フェイントや即効性をかなぐり捨てたテレフォンパンチでそれを迎え撃つ。来ると分かっている攻撃に合わせるだけなのだから、この程度の動きで良い。向かって来る巨大な腕に対し、彼女は平然と拳を叩きつけ、それを砕いた。一撃である。がしゃどくろはのけぞり、再び苦痛を味わったかの様な苦しい叫びをひり出すが、すぐに立ち直った。信じられない事に、腕が再び再生を始めたのだ。
「がしゃどくろ…あんな力あったっけか ?」
これに関しては、流石の亜弐香も首をかしげたくなった。元来の気質は共謀ではあるものの、かなり臆病で墓地の地中で隠れて過ごす事も多いというがしゃどくろが暴れているというのも不思議であったが、あのような身体の修復を行えるというのは尚の事耳にしていなかった情報である。やはり、籠樹達に何かされた可能性があった。いずれにせよ、生半可な攻撃ではどうしようもないらしい。
「よし、これで決める」
その戦闘の最中、龍人は弓を空に向けて構えていたが、やがて空に浮かぶ雲たちに狙いを構えたままニヤリと笑った。
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