逆転スキル【みんな俺より弱くなる】で、勝ち組勇者パーティーを底辺に堕とします

鬱沢色素

文字の大きさ
40 / 43
四章

40・デートスポットで幼馴染みに復讐をする

しおりを挟む
「ここを覚えてるか、フェリシー?」

 俺が殴りまくったせいで、顔が赤黒く腫れているフェリシー。
 道化のような顔をしたそいつに、俺はそう問いかけた。

「ここは……」
「おいおい、覚えてないのかよ。俺達の思い出の場所なのにな」
「あ……」

 フェリシーは言葉を発しようとするが、唇も腫れているため上手く発音出来ないみたいだ。

 ざまあみろ。
 まあ、俺としてはこいつが覚えていようが覚えてまいが、どっちでもいいんだがな。


 俺達が訪れたのは通称『獄園崖ごくえんがけ』と呼ばれる場所である。
 顔を上げて真っ直ぐ見ると、そこには雲一つない青空と、宝石が散りばめられているような海が広がっている。
 しかし一転、視線を下げると断崖絶壁になっているのだ。

 とはいっても眺めがよく、観光地にもなっている。
 俺達の生まれ故郷から歩いてでも十分来られるので、小さい頃はよく来ていたものだ。


「お前と一緒によく来たよなあ。ここに」
「…………」

 フェリシーが口を閉じる。

 こいつが猫を被っていたことに、まだ気づけていなかった俺の愚かな時代。
 フェリシーとは、よくここにデートとして訪れていたのだ。

「覚えているか? ここを見て、お前がなにを言ったのかを」
「……覚えてない」
「まあそうだろうな。お前は『キレイ! あなたとこんな光景を見られて、とっても嬉しい!』って言ってたんだ」

 こいつに騙されていた俺は、それを聞いて胸が弾んだものだった。

 あーあ。
 今思えば愚かすぎて、吐き気をもよおしてくる。

「あの頃、俺はお前のことが好きだった」

 それは遠い思い出のように感じられた。

 太陽のような笑顔。
 突き抜けるような明るさ。
 確かに……あの時、俺はお前のことが好きだった。

「アルフ……」

 フェリシーが口を開く。

「アルフ。もう一度、はじめようよ。私達の恋物語をさ」
「…………」

 俺が黙っているのを見て、もしかして悩んでいると思っているのだろうか?
 ここを好機と見て、フェリシーの口が饒舌に動く。

「やっぱり昔のように戻ろうよっ。私も反省したんだ。今思えば昔の方がずっと楽しかったように思う」
「…………」
「アルフ? だからいいでしょ? 私を抱きしめたいでしょ? 私と口づけしたいでしょ? あの勇者は間違いだった。言うなれば私は被害者……可哀想なお姫様を、あなたの手で救ってあげて?」

 とフェリシーが俺を見上げる。
 わざとなのか、胸元のシャツが開けられ豊満な谷間が見えた。

 彼女の顔がだんだんと近付いてくる。
 俺はそいつの顔を見て、


「は? まだお前そんなこと言ってんのかよ」


 と少し手を伸ばして、思い切り後ろへと押したのだ。

「え?」

 虚を突かれたようなフェリシーの表情。
 彼女の後ろには……。

「ああああああああ!」

 フェリシーはそのまま断崖絶壁へと落ちていった。
 獄園崖に悲鳴が響き渡る。

 はははは!
 最高だ!
 間抜けな悲鳴を上げながら、落ちていったぞ!

「さて……様子を見に行くか」

 俺は違うルートから、獄園崖を下っていき、そこで倒れているフェリシーの元へと辿り着いた。

「う、う……」

 フェリシーは息絶え絶えながらも、なんとか生きていた。
 まあここから突き落としても、この高さだったら死なないと思っていたから予想通りだ。

 簡単に死なせるなんてつまらない。
 こんなところで終わらせる気もなかった。

「今までのお前だったら、いくら崖から突き落とされても魔法を使えたのになあ? 空も飛べたのになあ? 弱くなっているお前では、昔当たり前のようにしていたことも出来ない」

 フェリシーの前髪をつかんで持ち上げる。

 うわっ!
 ただでさえブサイクの顔が、さらに腫れ上がってモンスターのようになっている!

 さらによくよく見ると、手足が変な方向に曲がっている。
 まるで子どもに壊されたボロボロの人形にも酷似していた。

「昔に戻りたい? お前はなにを言っているんだ? あの時、お前がなにをしてくれたか覚えているよな?」

 勇者にボコボコにされている俺を見て、こいつはこう言ったのだ。

『もう私に話しかけてこないでね! 負け組がうつるから!』

 ってな。
 今でも瞼を閉じるたびに、あの時の記憶が甦る。

 加害者がなんとも思っていないようなことでも、被害者にとっては業火に焼かれているような苦しみなのだ。
 この苦しみを、俺がこのままにするはずはない!

「アルフ」
「ん? どうした、イーディス」

 付いてきていたイーディスが屈んで、フェリシーを興味津々に見る。

「これ、まだ死んでないの?」
「死んでない死んでない。まあもうまともに動くことも出来ないけどな。試しに触ってみたらどうだ?」
「うん、そうしてみる」

 イーディスが何気なく、フェリシーの折れている右腕を少しだけ持ち上げた。
 すると。

「ああああああ! 痛い痛い痛い痛い!」

 フェリシーが泣き叫んだ。
 まるで赤ん坊のようだ。
 どうやらまだ痛覚は残っているらしい。
 これは愉快だ。

「おいおい、イーディス。それだけだったら、まだ分からないだろう? こうなっても人間ってのは生きられるもんなんだ。後学のために、もっと触っておいたら?」
「うん。アルフの言う通りのする」

 イーディスはベタベタとフェリシーの体を触っていく。

「ああああああああああああああ! 止めて止めて痛い痛い痛い痛い! そこっ! 触るの止めて! お願いお願いお願いお願いお願い!」
「はははははは!」

 いい気味だ。
 最早、ボロボロになったフェリシーの全身には、壮絶な痛みが襲っているに違いない。
 イーディスがフェリシーに触るたびに、彼女が獣のような咆哮を上げる。

「…………」
「おっ? 痛みで気絶しちまったか?」

 それじゃあつまらない。
 それに俺はからな。
 死なないように、貴重な回復ポーションを彼女に使ってあげる。

「い、痛い……ご、殺じで……」

 フェリシーが意識を取り戻した。

 殺して?
 なにを言ってるんだ。
 こんなもので殺すわけないだろうが!
 簡単には死なせない。

「さて。獄園崖はもう飽きたな。次のデート場所に行こうぜ」
「ま、まだ終わらないの……こんな残酷なこと……?」
「おいおい、お前はなにを言ってるんだ。デートはまだはじまったばかりだろ。それに残酷なこと? 楽しい楽しいデートの間違いじゃないか!」

 フェリシーの首根っこをつかんで、無理矢理立たせる。
 彼女は生まれたての子鹿のようにしながらも、ぷるぷると両足を震わせて立ち上がった。
 それを見ると、愉快すぎて笑いが止まらなかった。

「さて……次はどこに行こうかなあ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...