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ふたたび、夏の国
みんなで甘いものを食べよう。
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黒い服で。雷鳴を連れて、何度も様子を見に来るので。
ザラームは夏の国では魔女扱いされていたという。
『もう、気が狂う寸前だった。その前にイチを見つけられてよかった』
ほぼ無意識のうちに、俺のことをさらって。
やっぱり無意識で冬の国まで飛んだ。
腕の中の俺の存在を感じたことで、やっと、正気を取り戻したらしい。
髪も髭も伸びっぱなしだったし。
真っ黒い塊みたいだった。
ここ数年は、俺を探す。
ただそれだけの存在になっていたようだ。
そこまで俺を求めてたと聞かされては、突き放せないよ。
◆◇◆
『280年前まで冬の国の国王をしていた、ザラームというものだ。イチとは300年前に契りを交わした』
ザラームの自己紹介に、みんなドン引きだった。
『さ、300年前……』
『それにしては若すぎでは? 魔女だからか?』
『あの、黒い魔女の正体が、これ?』
『冬の国の元国王? 黒の王なんていたのか』
『昔のオトコ登場……修羅場の予感……』
ちょっと待て、最後のは誰だ!?
『ああ、老化を誘う細胞を弄って、不老の身体になったんだ。印持ちならできると思うぜ?』
『マジで!? ぼくにも出来るかな?』
飛びつくハルさんだった。
とか言ってる間に。
「できたよー、サツマイモと栗のスイーツ」
アイスクリームと、スイートポテト味のアイスと、大学芋と、栗きんとんと、栗のモンブランだ。
今度かぼちゃも貰って、かぼちゃプリンも作りたいな。
考えてみれば、夏の国もずいぶん変わったんだなあ。
ラグナルと一緒に来た時は、ほぼ砂漠で。何にもなかったのに。
あれから400年くらい経ってるんだっけ?
◆◇◆
『やだ全部美味しい~。てかザっくんさあ、何で氷菓子の生産数増やさないわけ? なかなか手に入んないんだけど!』
ザっくんて。
ハルさん、もう318歳だよ? その人。
『イチが工場は増やすなと言ったんだ。その件については、俺に言うな。一応、冬の国の遊興施設の宿泊客にはサービスで提供してるぞ?』
俺がした、ナタデココの話がよっぽど怖かったようだ。
生産数を増やすのは慎重にしようね、って意味だったんだけど。脅しすぎたか。
まあそれで300年やって成功してるならいいか。
『やだーこの商売上手ぅ』
『いや、俺の手柄ではない。イチがほとんど考えてくれたからな』
ハルさんとザラームが仲良くなっている……。
『王子、こぼしてますよ』
ラクさんは、アブヤドの口元を拭いてあげている。
『んー、自分で拭けるって。ラクも食べなよ。ほら、美味しいよ?』
俺の息子、可愛いなあ。
ウルジュワーンは、相変わらず口を開けて待ってるし。
いい年してもう。
「はい、」
食べさせると、とても嬉しそうだ。
『うむ、美味い』
かわいい31歳である。
『いいなあ栗と芋……秋の国と取引できませんかね?』
『春の国とも可能なら、したいですね』
ダルさんもファっさんも、元気そうで何より。
「じゃあ後で聞いてみるね」
連絡先も教えてもらったことだし。
全部の国同士が、仲良くなれたらいいね。
考えてみれば、春、冬、秋全ての国の王って。
俺の子孫ってことになるんじゃないの?
春はラグナルと俺の子、冬は俺の曾孫トールとザラームの子で。秋は、ルークと俺の子。
夏は、次期国王が俺とウルジュワーンの子だし。
やったあ全国制覇だ。
うう。
浮気者じゃないし……。
◆◇◆
「そういえば、少子化ってどうなってるの?」
15年経ってたら、もっと減ってそうだけど。冬の国には人、いっぱい居たなあ。
さっき見た、秋の国も。
ウルジュワーンは怪訝な顔をして。
『少子化? 何の話だ? 人口は400年前から、じわじわ増えてきているというぞ?』
……へ? どゆこと?
むしろ人口が増加してる、って?
歴史が、変わっちゃってる……?
人口の増加は。
まず、春の国からじわじわと増えていって。そして、冬の国が栄えて、人が増えて。
秋の国も、国が栄えると同時に、人口が増えていったらしい。
何でも、その頃から、やたらカワイイ子が増えてきたという。
その余波で、夏の国の人口も、徐々に増えてきている、とウルジュワーンは言った。
外国から、”カワイイ”のが遊びに来ていて。
たいへんモテていると。
どうやらそれは、どこかの国王の子孫らしい、という話だ。
ザラームは、俺と出会ったのが300年前と言ってた。
ラグナルと俺の息子、シグルズが生まれたのは、その121年前。
つまり。
シグルズが大人になったあたりから、人口が増え始めたってことだ。
計算は、合う……よな?
俺が、過去へ行ったことで、現在が変わったのか?
でも、アイスのことや、自動人形とかは?
パラドックス的なもん?
自動人形とかは、ラグナルは天才だから、俺が行ってなくても発明してた可能性が高いけど。
◆◇◆
……ま、いいか。
これ以上考えたら、知恵熱出そう。
頭良くないんだから、考えるだけ無駄だ。
いい方に変わったんならいいじゃんってことで。
超絶美形の血筋に、平凡な俺の血が入って。
それで何かが変わって、人口が増えたっていうなら。それでいいや。
異世界に俺を運んだ神様も、それが目的だったりして?
ザラームは夏の国では魔女扱いされていたという。
『もう、気が狂う寸前だった。その前にイチを見つけられてよかった』
ほぼ無意識のうちに、俺のことをさらって。
やっぱり無意識で冬の国まで飛んだ。
腕の中の俺の存在を感じたことで、やっと、正気を取り戻したらしい。
髪も髭も伸びっぱなしだったし。
真っ黒い塊みたいだった。
ここ数年は、俺を探す。
ただそれだけの存在になっていたようだ。
そこまで俺を求めてたと聞かされては、突き放せないよ。
◆◇◆
『280年前まで冬の国の国王をしていた、ザラームというものだ。イチとは300年前に契りを交わした』
ザラームの自己紹介に、みんなドン引きだった。
『さ、300年前……』
『それにしては若すぎでは? 魔女だからか?』
『あの、黒い魔女の正体が、これ?』
『冬の国の元国王? 黒の王なんていたのか』
『昔のオトコ登場……修羅場の予感……』
ちょっと待て、最後のは誰だ!?
『ああ、老化を誘う細胞を弄って、不老の身体になったんだ。印持ちならできると思うぜ?』
『マジで!? ぼくにも出来るかな?』
飛びつくハルさんだった。
とか言ってる間に。
「できたよー、サツマイモと栗のスイーツ」
アイスクリームと、スイートポテト味のアイスと、大学芋と、栗きんとんと、栗のモンブランだ。
今度かぼちゃも貰って、かぼちゃプリンも作りたいな。
考えてみれば、夏の国もずいぶん変わったんだなあ。
ラグナルと一緒に来た時は、ほぼ砂漠で。何にもなかったのに。
あれから400年くらい経ってるんだっけ?
◆◇◆
『やだ全部美味しい~。てかザっくんさあ、何で氷菓子の生産数増やさないわけ? なかなか手に入んないんだけど!』
ザっくんて。
ハルさん、もう318歳だよ? その人。
『イチが工場は増やすなと言ったんだ。その件については、俺に言うな。一応、冬の国の遊興施設の宿泊客にはサービスで提供してるぞ?』
俺がした、ナタデココの話がよっぽど怖かったようだ。
生産数を増やすのは慎重にしようね、って意味だったんだけど。脅しすぎたか。
まあそれで300年やって成功してるならいいか。
『やだーこの商売上手ぅ』
『いや、俺の手柄ではない。イチがほとんど考えてくれたからな』
ハルさんとザラームが仲良くなっている……。
『王子、こぼしてますよ』
ラクさんは、アブヤドの口元を拭いてあげている。
『んー、自分で拭けるって。ラクも食べなよ。ほら、美味しいよ?』
俺の息子、可愛いなあ。
ウルジュワーンは、相変わらず口を開けて待ってるし。
いい年してもう。
「はい、」
食べさせると、とても嬉しそうだ。
『うむ、美味い』
かわいい31歳である。
『いいなあ栗と芋……秋の国と取引できませんかね?』
『春の国とも可能なら、したいですね』
ダルさんもファっさんも、元気そうで何より。
「じゃあ後で聞いてみるね」
連絡先も教えてもらったことだし。
全部の国同士が、仲良くなれたらいいね。
考えてみれば、春、冬、秋全ての国の王って。
俺の子孫ってことになるんじゃないの?
春はラグナルと俺の子、冬は俺の曾孫トールとザラームの子で。秋は、ルークと俺の子。
夏は、次期国王が俺とウルジュワーンの子だし。
やったあ全国制覇だ。
うう。
浮気者じゃないし……。
◆◇◆
「そういえば、少子化ってどうなってるの?」
15年経ってたら、もっと減ってそうだけど。冬の国には人、いっぱい居たなあ。
さっき見た、秋の国も。
ウルジュワーンは怪訝な顔をして。
『少子化? 何の話だ? 人口は400年前から、じわじわ増えてきているというぞ?』
……へ? どゆこと?
むしろ人口が増加してる、って?
歴史が、変わっちゃってる……?
人口の増加は。
まず、春の国からじわじわと増えていって。そして、冬の国が栄えて、人が増えて。
秋の国も、国が栄えると同時に、人口が増えていったらしい。
何でも、その頃から、やたらカワイイ子が増えてきたという。
その余波で、夏の国の人口も、徐々に増えてきている、とウルジュワーンは言った。
外国から、”カワイイ”のが遊びに来ていて。
たいへんモテていると。
どうやらそれは、どこかの国王の子孫らしい、という話だ。
ザラームは、俺と出会ったのが300年前と言ってた。
ラグナルと俺の息子、シグルズが生まれたのは、その121年前。
つまり。
シグルズが大人になったあたりから、人口が増え始めたってことだ。
計算は、合う……よな?
俺が、過去へ行ったことで、現在が変わったのか?
でも、アイスのことや、自動人形とかは?
パラドックス的なもん?
自動人形とかは、ラグナルは天才だから、俺が行ってなくても発明してた可能性が高いけど。
◆◇◆
……ま、いいか。
これ以上考えたら、知恵熱出そう。
頭良くないんだから、考えるだけ無駄だ。
いい方に変わったんならいいじゃんってことで。
超絶美形の血筋に、平凡な俺の血が入って。
それで何かが変わって、人口が増えたっていうなら。それでいいや。
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