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6 ヒビキとデート!!
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「え?恋…か…」
「そう、俺実は…好きな人がいて。プレゼントとかデートとかの相談のってほしいんだ…けどヒビキはその…好きな人とかいるの?」
緊張して言葉に詰まりながらも話をふってみた。
今日もオーティファクトに来店した俺はヒビキの時間を拘束していた。
いつもは個室で彼とふたりきりの時間を楽しむのだが、今日は個室は満員だったためオープンスペースを利用していた。
ここは周りが騒がしく声が届かないから、必然的に距離が近くなる。ヒビキは肩が触れそうなほど近くに寄ってくれた。
次からもオープンスペースでいいかもしれない。
「え、ノエル好きな人いるんだ!それは初耳。どんな感じの人なの?」
「優しくて温かい人」
少し照れながらもそう伝えると彼は微笑んだ。
「めっちゃいいじゃん」
「ヒビキは?」
うるさい心臓を抑えながら彼の返答を待つ。
「んー僕?ナイショ」
ヒビキは照れくさそうにそう言った。頬は少し赤く染まっているし落ち着きがない感じがする。
これは絶対にいる…。誰だ…?
その相手はもしかしたら自分ではないかと思ってしまうのは都合の良い解釈だろうか。
だって彼とはかなり仲良くなったと思う。出会ってから数ヶ月ほぼ毎日のようにお店に通い詰め連絡も取り合っている。
客というよりかは友人として接してくれている気がする。
だから最近はお金をむやみやたらに使おうとすると本気で注意してくるようになった。キャストとしては微妙かもしれないが人としては好感がもてる。
彼の好きな人…。もしもそれが自分だったらこの上なく嬉しいし一刻も早く付き合いたい。
もしもそれが自分以外の人間だったら…。考えただけでムカついてきた。俺はそいつを殺してしまうかもしれない。
好きな人の恋を応援できるのが本当の愛だなんていうのは綺麗事だ。
俺は絶対に無理。ヒビキが自分以外の人間と付き合うなんて耐えられない。考えただけでも死にたくなる。
「もしかしてお店の人?それとも…」
詳しく聞き出そうと思っていたそのとき、ボーイがやってきた。
「ヒビキ君、いつもの方。あちらのテーブルで指名です」
いつもの方…?
「うわぁまじかぁ。ごめんノエル、指名かぶっちゃったみたいだ。ちょっと行って来るね」
そうか、事前に予約していても指名がかぶることがあるのか。
でも前にカウンターで尋ねたところVIP、つまり金を積めばそちらが優先されると聞いていた。
ここ数ヶ月俺の時間は邪魔されることなんてなかった。なのに…。
ボーイが指差す方に視線を送るとそこには身なりのいい男が座っていた。なるほど、俺は彼を知っている。彼はコーデン・ライアン。最近有名な魔法ポーション会社の社長だ。年齢は28。一見穏やかそうに見えるがバリバリ仕事ができると有名になっていた。
あいつがなんでヒビキを?
「たぶん戻ってくるの結構先だよね」
時計を見ると彼と話してもう40分以上経っている。
「うーん…ごめん。まだノエルと話したかったんだけど」
「指名被ったなら仕方ないよ。それだけヒビキが人気になってきたってことだから嬉しいよ。行ってらっしゃい。また遊びに来るね」
「ありがとう!」
口ではそう言ったが本当は全部ウソだ。まず俺とヒビキの貴重な時間を奪ったあいつがムカつく。
前は全然指名つかないと言っていたのに…。彼が俺以外の人から気に入られているという事実に不安になった。
彼は席を立つと成金社長のところに行ってしまう。本当は戻ってきてほしい。
振り返って行きたくないって言ってほしい。
そう名残惜しい視線を送るが彼がそれに気づいてくれるはずもなく…。
しかしその瞬間、なんと彼が振り返った。そして早足でこちらに戻ってくる。
「え…?」
「そういえば一ついい忘れてたんだけどさ!この前ご飯食べに行くって約束したじゃん。それ、今夜とかどうかな。明日休みだから…いや、無理だったら別の日でもいいんだけ…」
「行く」
「え、いいの?」
「行ける。暇。今日は何時まで仕事?」
「えっと…10時まで」
「じゃあその時間にお店に迎えに行くね」
「まじか!ありがとう!めっちゃ楽しみ。お腹すかせとけよ。今日は僕のおごりだからさ。じゃあまた連絡するね」
そう言うと彼は今度こそ違うテーブルへ歩いていった。
俺は…。さっきの嫉妬心が嘘みたいに心が晴れていた。やったデート…。デート。デート。デート。でー…と。
店の外で会える!!
あの約束から少し経っていた。忙しそうだったからこちらからは誘わないようにしていたんだ。もしかしたら忘れてしまっているのではと心配してたけど。
思わず頬が緩む。どこに行こうか。何を話そうか。どのぐらい一緒にいてくれるのだろうか。もちろん変なことをするつもりはない。ただ少しでも彼と親密になれたらそれでいいと思った。
ボーイは俺がヒビキ目当てで来ていると知っているからか他のキャストをあてがおうとはしなかった。
そのままお会計へと進む。ちらりとヒビキを見た。すると彼は成金野郎と楽しそうにお喋りしている。どうせあんなのただの接客だ。そう思うことにした。
俺はレジで倍の料金を支払った。
「今日はヒビキがアフター誘ってくれたんでその分です」
そう笑顔で手渡す。これは決して賄賂ではない。また誘ってほしいから店を味方につけようなんて思ってない。決して!
「そう、俺実は…好きな人がいて。プレゼントとかデートとかの相談のってほしいんだ…けどヒビキはその…好きな人とかいるの?」
緊張して言葉に詰まりながらも話をふってみた。
今日もオーティファクトに来店した俺はヒビキの時間を拘束していた。
いつもは個室で彼とふたりきりの時間を楽しむのだが、今日は個室は満員だったためオープンスペースを利用していた。
ここは周りが騒がしく声が届かないから、必然的に距離が近くなる。ヒビキは肩が触れそうなほど近くに寄ってくれた。
次からもオープンスペースでいいかもしれない。
「え、ノエル好きな人いるんだ!それは初耳。どんな感じの人なの?」
「優しくて温かい人」
少し照れながらもそう伝えると彼は微笑んだ。
「めっちゃいいじゃん」
「ヒビキは?」
うるさい心臓を抑えながら彼の返答を待つ。
「んー僕?ナイショ」
ヒビキは照れくさそうにそう言った。頬は少し赤く染まっているし落ち着きがない感じがする。
これは絶対にいる…。誰だ…?
その相手はもしかしたら自分ではないかと思ってしまうのは都合の良い解釈だろうか。
だって彼とはかなり仲良くなったと思う。出会ってから数ヶ月ほぼ毎日のようにお店に通い詰め連絡も取り合っている。
客というよりかは友人として接してくれている気がする。
だから最近はお金をむやみやたらに使おうとすると本気で注意してくるようになった。キャストとしては微妙かもしれないが人としては好感がもてる。
彼の好きな人…。もしもそれが自分だったらこの上なく嬉しいし一刻も早く付き合いたい。
もしもそれが自分以外の人間だったら…。考えただけでムカついてきた。俺はそいつを殺してしまうかもしれない。
好きな人の恋を応援できるのが本当の愛だなんていうのは綺麗事だ。
俺は絶対に無理。ヒビキが自分以外の人間と付き合うなんて耐えられない。考えただけでも死にたくなる。
「もしかしてお店の人?それとも…」
詳しく聞き出そうと思っていたそのとき、ボーイがやってきた。
「ヒビキ君、いつもの方。あちらのテーブルで指名です」
いつもの方…?
「うわぁまじかぁ。ごめんノエル、指名かぶっちゃったみたいだ。ちょっと行って来るね」
そうか、事前に予約していても指名がかぶることがあるのか。
でも前にカウンターで尋ねたところVIP、つまり金を積めばそちらが優先されると聞いていた。
ここ数ヶ月俺の時間は邪魔されることなんてなかった。なのに…。
ボーイが指差す方に視線を送るとそこには身なりのいい男が座っていた。なるほど、俺は彼を知っている。彼はコーデン・ライアン。最近有名な魔法ポーション会社の社長だ。年齢は28。一見穏やかそうに見えるがバリバリ仕事ができると有名になっていた。
あいつがなんでヒビキを?
「たぶん戻ってくるの結構先だよね」
時計を見ると彼と話してもう40分以上経っている。
「うーん…ごめん。まだノエルと話したかったんだけど」
「指名被ったなら仕方ないよ。それだけヒビキが人気になってきたってことだから嬉しいよ。行ってらっしゃい。また遊びに来るね」
「ありがとう!」
口ではそう言ったが本当は全部ウソだ。まず俺とヒビキの貴重な時間を奪ったあいつがムカつく。
前は全然指名つかないと言っていたのに…。彼が俺以外の人から気に入られているという事実に不安になった。
彼は席を立つと成金社長のところに行ってしまう。本当は戻ってきてほしい。
振り返って行きたくないって言ってほしい。
そう名残惜しい視線を送るが彼がそれに気づいてくれるはずもなく…。
しかしその瞬間、なんと彼が振り返った。そして早足でこちらに戻ってくる。
「え…?」
「そういえば一ついい忘れてたんだけどさ!この前ご飯食べに行くって約束したじゃん。それ、今夜とかどうかな。明日休みだから…いや、無理だったら別の日でもいいんだけ…」
「行く」
「え、いいの?」
「行ける。暇。今日は何時まで仕事?」
「えっと…10時まで」
「じゃあその時間にお店に迎えに行くね」
「まじか!ありがとう!めっちゃ楽しみ。お腹すかせとけよ。今日は僕のおごりだからさ。じゃあまた連絡するね」
そう言うと彼は今度こそ違うテーブルへ歩いていった。
俺は…。さっきの嫉妬心が嘘みたいに心が晴れていた。やったデート…。デート。デート。デート。でー…と。
店の外で会える!!
あの約束から少し経っていた。忙しそうだったからこちらからは誘わないようにしていたんだ。もしかしたら忘れてしまっているのではと心配してたけど。
思わず頬が緩む。どこに行こうか。何を話そうか。どのぐらい一緒にいてくれるのだろうか。もちろん変なことをするつもりはない。ただ少しでも彼と親密になれたらそれでいいと思った。
ボーイは俺がヒビキ目当てで来ていると知っているからか他のキャストをあてがおうとはしなかった。
そのままお会計へと進む。ちらりとヒビキを見た。すると彼は成金野郎と楽しそうにお喋りしている。どうせあんなのただの接客だ。そう思うことにした。
俺はレジで倍の料金を支払った。
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