終生飼育は原則ですから

被保護編 337年

337年10月9-3

「お話を伺えてとても参考になりました。またお邪魔してもよろしいですか？」
「勿論です。いつでも歓迎いたしますよ」
「お時間を頂いてすみませんでした。帰りにお店を見せてもらってもよろしいですか？」
「勿論です。ご案内します」

　商品を見ながら話すが、彼女の知識には舌を巻いた。庶民？　なぜそんなに知っているんだ。
「グレス商会は王宮の厨房にも商品を卸してくださっているそうですね」
「はい。食料は主にうちが、備品についてはフラーニ商会が承っています」
「王宮の料理はおいしいと評判です。やはり食料は良いものなのでしょうか？」
「はい。気を配っております」
「お気遣いありがとうございます。やはり良い物は高くなってしまいますね」
　この女。

　思わず一瞬動きが止まるとオーサーが振り向き、私と目を合わせて微笑んだが、意地が悪く見えるのは私の受け取り方のせいか。
　王宮に入れる商品の値段は高く設定している。フラーニほどではないが、追求されれば言い逃れはできない。

　未熟か。彼女に比べれば私は大きくなる前の実だな。協力した方がいいと納得させ、敵になるなと宣言された。
　私は本心から微笑むことができた。商売相手としていい相手だ。