幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります

ねこ鍋

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強襲と反撃ののろし

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【前書き】
最初は敵視点です


「暗殺に失敗しただと?」

 エリー=クローゼナイツの暗殺を頼んだ奴らが手ぶらで帰ってきた。
 高い金を払ったくせに失敗したという。
 報告に来た男は声色を変えないままに淡々と告げる。

「話では一介の冒険者ということだった。しかし我らの気配を事前に感知するとはただ者ではない。情報に誤りがあった」

「……ちっ」

 確かに一点こいつらに言わなかったことがある。
 それは、目標であるエリー=クローゼナイツは光の勇者であるということだ。

 そんなことを正直に伝えたら莫大な契約金を取られるか、最悪の場合、依頼を受けないだろう。
 だから黙っていたのだが。

「お前たちに殺せない者はいない。金さえ払えば一国の王ですら殺してみせる。そう豪語したのはそちらだろう。なのに口にするのは言い訳だけか」

「……」

「ふん。口答えもないということは、肯定するということだな。たかが冒険者も殺せないとは。所詮その程度か。プロが聞いて呆れる」

「……」

 男は肯定も反論も口にすることなく、ただ黙ってそこに佇んでいる。
 感情が見えないどころか、目の前にいるのに気配すら薄い。
 まるで壁に向かって話をしているようだった。

「まあいい。失敗なら契約通り依頼金は半額だ」

「所定の方法で渡してくれ」

 用件だけを告げると、足音を立てずに部屋を出て行った。

「……ふん。気味の悪い奴らだ」

 グチを吐いて捨てても、この部屋に聞く者は誰もいない。
 事は秘密裏に運ぶ必要があったため、すべて私ひとりで進めていたからだ。
 だからこの部屋にも誰も来ないように厳命してあった。

 それもこれも、急に光の勇者がやってきたと警備詰め所の所長から報告があったからだ。

 光の勇者が帰還したと聞いたとき、私の計画がバレたのかと思った。
 すぐにその可能性はなく、やつの帰還はただの偶然であると思い直したが、奴がいては計画に支障が出ることに変わりはない。
 だから秘密裏に処分しようとしたのだが……。

 まさか感づいて逃げるとは思わなかった。
 最前線の街から帰ってきたばかりなら疲れているはずなのに、全く警戒を解かないとは、さすが勇者というべきか……。

「感心してる場合ではないな」

 さすがにまだ私の正体に気がついているはずはないだろうが、逃げたということは自分たちの命が狙われていることには気がついてしまったということだ。

 勇者を敵に回しては面倒だ。
 ここからは慎重に行動しなければならない。
 取りあえずいったん隠れ家に身を隠すこととしよう。

 そうだ、急ぐ必要はない。
 奴らの泊まっていた宿屋からここまではかなりの距離がある。
 万が一こっちの正体に気がついていたとしても、すぐにここにやってくることは不可能だ。

「そうだ。まだチャンスは十分にある」

 言葉にすることで落ち着いてきた。

 隠れ家に逃げる時間は十分にある。
 奇襲には失敗したが、まだ手はいくらでもあった。
 どんなに強い光の勇者といえども、直接戦わなければどうということはない。
 一番強いのは力を持つ者ではない。
 権力を持つ者だ。

「最終的に笑うのはこの私だ」

 そのとき。
 窓の外に黒い影が現れ、いきなり窓を破って部屋の中に飛び込んできた。

「ギュアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ひいぃっ!!」

 獰猛な牙が目の前に迫る。
 部屋全体を震わせるような、巨大なワイバーンの咆哮がこだました。



 時間は少し戻る。

 エリーと共に宿屋で準備を整えていた俺たちのところに、窓から1匹の黒猫がやってきた。
 それは部屋の中で褐色の小さな女の子の姿になる。

「アイツらの居場所が分かったゾ」

 パンドラが教えてくれたその場所は、どうやらこの街の市長の館がある場所だった。

「なんで市長が俺たちの命を狙うんだ?」

 恨まれるようなことは何もしてないはず。
 首をひねる俺だったが、エリーは悩むそぶりもなく言った。

「そんなの知らないわよ。本人に聞けばいいでしょ」

「それもそうか」

 本来ならここから市長の館まではかなり距離がある。
 今から行ったところで、着く頃にはもう逃げているだろう。
 だけどシェイドの能力でこの部屋から彼のダンジョンにつながった。
 ダンジョンのどの部屋につなげるかは、シェイドが自由に決められるらしい。

 つまり。

「きゅあっ!!」

 部屋の中にはワイバーンのドレイクがいた。
 宿屋の部屋からつながったのは、ドレイクたちを隠していたダンジョンの部屋らしかった。
 ドレイクが嬉しそうにすり寄ってくる。

「1日ぶりだもんな。すまない。元気だったか?」
「きゅあっ、きゅあっ!」

 どうやら元気だったらしい。
 言葉はわからないけど、泣き声を聞けば元気なのはよくわかるよな。

 部屋にはグリフォンの2匹もいた。
 エリーがねぎらうように2匹を撫でている。

「ホネ、ニク。仕事の時間よ。役に立たなかったら焼肉だからね。しっかり頑張んなさい」

「グルアアアアアアアッッ!!!!」
「ガアアアアアアアアアッ!!!!」

 相変わらずエリーのところはブラックな労働環境だが、グリフォンの2匹は頼もしい咆哮を響かせた。
 あれはあれでひとつの信頼関係、なんだろうか?

 ともかくそういうわけで、俺たちはドレイクに乗って街の空へと飛び出した。
 歩いて行ったら時間がかかるが、空を飛べばあっという間だ。それに夜だから見つかる心配も無いしな。

 ちなみに部屋を飛び出す際に窓を破壊してしまった。
 ごめんなさい宿屋の皆さん。窓代は後で弁償しますから。



 というわけで、俺たちはパンドラの案内に従って市長の部屋へと直接飛び込んだ。
 エリーがさっそくグリフォンから飛び降りる。

「パンドラ、命令していた男ってのはコイツ?」

「そうだゾ」

 鳥になっていたパンドラが、女の子の姿になって部屋に降りる。

「ふーん。このアタシにケンカ売るなんていい度胸じゃない」

 エリーが太った男性を片手で持ち上げた。

「なっ、なにをするんだ! この私を誰だと思っている!」

「知らないわよ。そっちこそこのアタシを誰だと思っているの?」

「そんなもの知るわけないだろう! ……いや、まて。報告では、光の勇者はやけに美しい女ということだったが……」

「あら、お世辞をいって命乞いをしようだなんて、さすが政治家はやることが汚いわね」

「どっ、どうして……ここに……っ! というか、あれはモンスターではないか! どうして勇者がモンスターなんかを連れているんだ!」

「あー、説明が面倒ね。もういいわ。ホネ、ニク。ご飯の時間よ」

 そういって、グリフォンたちの方に市長を放り投げた。

「……へ?」

 2匹の鷲獅子が太った男性に向けて飛びかかる。

「グルアアアアアアアッッ!!!!」
「ガアアアアアアアアアッ!!!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!?????」

 市長の絶叫がこだました。
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