幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります

ねこ鍋

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女神の報酬

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「調子に乗って申し訳ありませんでした……」

 巨大な漆黒の竜が俺に向けて頭を垂れている。
 その頭だけで俺と同じくらいの大きさがあるんだから、目の前まで来られると威圧感がすごい。
 口からもチロチロと黒い炎が漏れ出しているし。
 仲間になったフリをして油断したところを襲ったりとかしないよね。

 それにしてもずいぶん態度が急に変わるものだな。
 本当に同じ魔竜なんだろうか。

「竜にとっては力こそが正義だからな」

 そう言ったのはシェイドだ。

「生きた年数や血統は関係ない。強い奴が種の頂点に立つ。そうやって栄えてきた種族だ。マスターが圧倒的な力を示したため、忠誠を誓ったのだろう」

 なるほど。そういうものなのか。
 それをきいてエリーが怒った。

「なによそれ。こいつアタシには何にも変わりないんだけど、つまりアタシが弱いって言いたいわけ?」

 食ってかかるエリーに、魔竜が鼻を鳴らす。

「以前はたかが人間の幼子と油断しただけだ。光の勇者の力を得ていると知っていれば、初めから叩き潰してやったわ」

「へえー、まるで本気を出せばアタシに勝てるって言ってるように聞こえるんだけど?」

「愚かな人間にもわかるよう説明してやったというのに、それでもまだ理解できぬのか」

「決めたわ。殺す」

「ちょうどいい。かつての恨み晴らしてくれる」

「二人とも、そこまでにしてね」

「わかりましたご主人様」
「了解した、我が主よ」

 エリーと魔竜がそろってピタリと動きを止める。
 この二人が本気の喧嘩なんてしたら、かろうじて残っている山が跡形もなくなってしまうよ。

 ちなみに言ってなかったけど、魔竜は当然のように俺の奴隷となっていた。
 もちろん<奴隷化>スキルの力だけど、シェイドの話を聞く限りだとスキルの力がなくても服従してたかもしれないな。

「だけどずっとここの山に置いておくわけにもいかないよなあ」

「主の命とあらばどこにでも行きます」

「とはいえこの巨体じゃなあ」

 魔竜の大きさは俺たち人間の十倍ほどはある。
 こんな巨大な竜が飛んできたら、どの国に行っても大混乱になるだろう。
 かといってシェイドのダンジョンに閉じ込めておくのもさすがにかわいそうしな。

 ブラン王は、魔竜が復活したと聞いただけで討伐依頼を出している。
 俺がいれば人間を襲わないとはいえ、やはり人間と魔竜の共存は難しいだろう。

 シェイドがいうには、魔竜が入れるくらいのダンジョンを作ることはできるといっていたが。

「地下深くまで穴を掘ってそこに永遠に封印しておきましょう。永遠の孤独を味わうといいわ」

「貴様にできると思うのか?」

「やられないとわからないのかしら?」

 再び剣呑な雰囲気になる二人。
 いや魔竜は人じゃないから1人と1匹か。そんな細かいことはどうでもいいか。
 シェイドが淡々と告げる。

「かつて私がいた辺境の地なら、まだ人間の手は及んでいない。そちらで暮らせばいいだろう」

「確かにそうだな。あっちは高レベルモンスターが多いせいで人間派ほとんど近づかないし。魔竜が暮らすにはちょうどいいかもな」

「感謝する、我が主よ。もし我が力が必要なときは遠慮なく呼ぶといい」

 そう言い残して辺境の地へと飛び立っていった。
 巨大な黒竜が空を横切っていったと各地で大騒ぎになるだろうが、まあそれくらいなら許してもらおう。



 魔竜を倒した後、俺たちの故郷に帰ってきた。
 魔竜の封印地からそう遠くない場所だ。
 復活した魔竜は退治し、光の勇者も凱旋してきた。
 みんな諸手を挙げて歓迎。
 というわけでもなかった。

「なんで帰ってきたんだイクス……!」
「しかもエリーも一緒じゃないか!」
「なんてこった! うちの商売もようやく軌道に乗り始めたばかりなのに……」

 なんでって言われてもな。
 俺の家があるからなんだけど。

「この村も滅ぼした方がいいんじゃない?」

 エリーがそんなんだから、町のみんなもあんな態度なんじゃないかな。



 その後、色々あったがみんなで俺の家へとやってきた。
 エリーの家は勇者の家族ということで、聖王都の首都に引っ越していたから、もう家は残ってないんだよな。
 俺の家は、昔から俺以外は誰もいない。
 部屋も余ってるから、この人数でも十分泊まれるだろう。

 そういうわけで。
 夜、俺とエリーは同じ部屋で泊まっていた。

「なんか俺の部屋でエリーと一緒ってのも不思議な気分だよな」
「イクスはどこでも変わりないでしょ」
「いや、俺の部屋ってのはやっぱり特別感あるだろ。その俺の部屋にエリーがいるんだぞ。ガマンなんて出来るわけないだろ」
「………………もう、わかったわよ……。アタシだって、別に嫌じゃないし……」
「エリーは可愛いなあ」
「~~~~~!! もうバカ!!」

「イクス=ガーランド。エリー=クローゼナイツ。今回はよくやってくれました」

「きゃああああああっ!!」

 エリーの悲鳴が室内に響き渡る。
 部屋の中に、いつのまにか神聖な光が満ちあふれていた。

「アンタは相変わらず人の部屋に無断で入ってくるのね!」

 エリーの叫びを気にした様子もなく、女神様がほほえみを浮かべる。

「戦争を止めていただきありがとうございます。おかげで大勢の犠牲者が出る未来を回避できました」

「それは良かったです」

 色々頑張ったからな本当に。
 そうやって女神様の口から戦争を回避できたと聞かされると、ようやく上手くいったんだなと実感がわいてくる。
 大変だったけど、それだけのかいはあったかな。

「そういう御託はいらないわ」

 手早く着替えたエリーが女神様相手に傲慢に言い放つ。

「ただでこんな事するわけないでしょ。世界を救ったら新しい力をくれるって約束だったわよね。まさか忘れたとは言わせないわ」

 いや俺は、世界が滅ぶかもしれないと言われたらただでするけどな。
 それでも力をくれると言われれば、もちろん欲しいけど。

 女神様は美しい顔で目を伏せながらも、静かにうなずいた。

「いいでしょう。このたびの働きは勇者と呼ぶにふさわしいもの。望む力をひとつだけ与えましょう」

 エリーがさっそく満面の笑みを浮かべた。

「ふふふ。そうこなくっちゃ。実はどうするか迷ってたのよねー。<聖なる炎>でまとめて焼くのは捨てがたいじゃない。でも<星獣召喚>で蹂躙するのも面白そうだし。他にもたくさんあるのよね。……あっ、そうだ! 決めたわ。願い事を3つにする魔法をちょうだい!」

「そのような魔法はありません」

「なんでもっていったじゃない!」

「なんでもではありません。そもそも願いを増やすことはあなたの願望。それは魔法ではありません」

「ちっ、使えないわね。だいたいひとつにしろって言われても、うーん。悩むわね……」

 エリーはさんざん悩んでいた。
 まあ欲しい魔法はたくさんあるだろうからな。
 ひとつだけ選ぶのは難しいだろう。

 だけど、俺の望みはとっくに決まっていた。

「俺が先に決めてもいいですか」

「もちろんです。イクス=ガーランド。望みを言いなさい」

 女神様に向けて、俺はその望みを口にした。

「<ギアス>を解除する魔法をください」
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