私だけが、あなただと知っていても…

秋風 爽籟

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プロローグ

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あずさは、平凡なサラリーマンの家庭に生まれた。

梓には、5歳上の兄がいる。





父は、明るい人で…お酒が好きで付き合いも上手な人だった。

母は専業主婦で、誕生日やクリスマスにはケーキを焼いてくれて、梓の服を作ってくれる。そんな家庭的な母だった。

兄は、シャイで梓と仲良く話をしたり、一緒に出掛けてくれるような兄ではなかった。





梓が、中学生になった頃…

兄は高校生で、バイクを乗り回して…よく警察から電話が入っていた。

5月のある朝、母は突然倒れて…3日後に亡くなってしまう。





母が亡くなった後、父はご飯を作ってくれたり…一生懸命やってくれていたのだが…

父は、次第に帰りが遅くなっていった…

そして梓も、寂しさから友達を家に招いて、たばこを吸ったり遊び歩くようになる。

勉強をしない梓は、高校も定時制しか行けなかった。





そして、16歳のある日…

元夫のわたると出会い…恋に落ちる。

でも…渉は、チンピラだった。

知り合って5か月で、逮捕された渉は刑務所に行ってしまう。

待つと決意した梓は、高校を中退してアルバイトをしながら渉を待った。





18歳になって妊娠した梓は、渉と籍を入れた。

19歳で長男を産み…幸せになれると思っていたが…

それからも、渉は刑務所を行ったり来たり…

それと同時に、離婚したり結婚したりを繰り返した。

32歳の時に、二男を身ごもり…

もしかしたら渉が変わってくれるかもしれないと思いながら出産した。





でも、渉は変わらなかった…

そればかりか、渉は女遊びもするようになってしまった。



ずっと…なんとか渉を更生させたいと思っていた梓だったけど…

プツンと糸が切れてしまい、離婚を決意する。





離婚しても、やり直したいという渉…

別れられないでいる梓だったけど

渉に女がいて、しかも子どもまでいることを知り…

渉が逮捕されたことを、きっかけに完全に別れることにした…





渉と完全に別れた梓は…





ネットの掲示板で、誰かと知り合おうとした。



新しい出会いを求めて…

サイトに登録した。





そして…

39歳ではじめと出会う。





元は、6歳年下だった。

真面目な人で感じがいい人だ。

離婚したばかりだという。

梓は、元のことをすぐ好きになった…

そして…中学生のようにドキドキするような恋をした。





梓は、渉とのこともすべて話をした。

元は、「今までよく頑張りましたね」

と言ってくれ、梓を受け入れてくれた…





元は、気持ちが不安定で…

すぐ別れようと言う。

一度は、本当に別れた2人だったけど…

3か月後…元の誕生日にメールをしたのをきっかけに…

また、付き合うようになった。

そして、ケンカを繰り返しながらも

静かに二人は愛を深め…

半同棲になる…





元には、元奥さんが引き取った二男と同い年の男の子がいた。

その子の養育費も払っていて、会うことも度々あった。





梓と元は、結婚しようと思ってもきっかけがなかった…

家を買うことを、きっかけにして

出会って、7年後に47歳で再婚した。





元が、渉のことを忘れさせてくれた…

生活の安定も、元のおかげだ…

私は、元と出会わなかったら、どうなっていたか分からない…

元は、二男のことも可愛がってくれる…





再婚して、数年経った頃…

渉が、自◯して亡くなった…

長男の頼みもあって、渉を見送った。





そのことも全部、元は受け止めてくれた。





元は、梓のおかげで楽しいことを知ったと…

梓と一緒にいるのが楽しくて…

仕事に行っても早く帰りたくて仕方がないと言ってくれる。





2人は、歳を重ねるごとに仲良くなっていった。

2人で旅行に行ったり、ドライブしたり…

ライブに行ったりと…穏やかな老後を送った。





元は、自分が先に死んだら

何も出来ない梓が困るから…

自分は、梓より後に死にたいと、常々言っていた。





そんな、元の想いが通じたのか…

梓の方が、先に死の瞬間を迎えていた。





梓は、今までの人生を振り返った…

私は、元に会えて本当に良かった…

幸せだったけど…



―――もし生まれ変われるなら、もう一度元と愛し合いたいと願った…



そして…

梓は、亡くなった…

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