私だけが、あなただと知っていても…

秋風 爽籟

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2章 5話 就職

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それから、岳との関係は変わらず…

梓は、大学を卒業した。



兄は、父に言われて…取引先の人と政略結婚させられた。

父には逆らえないもんな…

私も、結婚するしかないのかな…



元とは、まだ会えない…

元は、何処でどうしているのだろう。

なんでいつも会えないのか…

このままだと私は、結婚するしかなくなるよ…



久しぶりに、律に会った。



「久しぶり!律どうしてた?」



「俺は、変わらず…彼女が何人もいる生活を送ってるよ。梓こそ、就職は決まったってライン貰ったけど…最近どうなんだよ?」



「律は、相変わらず女泣かせだね…呆れてものが言えないよ…それがさ、言ってなかったけど…婚約者に会ったんだよ」



「前に言ってた奴か?どんな人だった?」



「それが…思ったよりもいい人だったんだよね…就職できたのも、その人のおかげなんだよ」



「そうなんだ?いいじゃん。結婚すれば?」



「ま、このままいけば結婚するしかなくなる…。どうしたらいいと思う?」



「梓は、結婚したくないのか?」



「うん…」



「と言ってもな。逃げるしかないんじゃない?」



「やっぱ、そうだよね…」



「俺も、もうすぐ政略結婚になりそう…」



「マジでー。お互いに苦労するね」



「ま、俺は政略結婚を楽しむさ。結婚したって女作ればいいわけだし…」



「律は、最低だ!」



律といるのは、本当に楽だ…

さすが、私のお兄ちゃんだっただけあるわ。



それから、梓の入社式が来た。



梓は、編集部ではなく…

営業部の所属になった。

ま、こんなもんか…

でも、いつか編集部に行きたい。



営業部の人達は、いい人ばかりだ…

ま、変な人も数人はいるけど…

とりあえずは、ここで頑張るしかない。



残業も結構あって…

父から…



「今日も、帰りが遅いな…お前の会社は大丈夫なのか?」



と言われることもあったけど…

梓は、充実感を感じていた。

外回りをする時は大変だけど、成果が出ると…

楽しいと思う。



岳との関係は保ちつつ…

1年が経った。



兄から子どもが生まれたと連絡があった。

仕事が終わって…病院に行ってみると…

兄の子どもが輝いていた…



―――前世の誰なの?



って思いながら見てみると…



最初の人生の二男だった。



―――そうか、今度は兄(渉)の子どもとして生まれたんだね



―――可愛がってもらうんだよ。



兄の、お嫁さんは育ちのいい人で優しい…

この人になら、二男を任せられる…



二男は、たくみと名付けられた。



叔母の所にいる駿も、もう高校卒業だ。

大きくなったな…



こうして、いつも会える環境にいるのは、ありがたい。



それから、数年経っても…

元とは会えなかった…





岳が、珍しく…会って話がしたいと言ってきた。

会社の近くのレストランで食事をする。

岳は、なんだか元気がない…



「今日は…どうしたんですか?急に…何かありました?」



岳が重い口を開いた…



「父が、そろそろ結婚しろと…うるさいんです。梓さん、僕はこれまで梓さんを見守ってきて…貴女は素晴らしい人だと思っています。仕事を続けたいなら続けてもいいです。僕と結婚して貰えませんか?」



岳の言葉を聞いて…

梓は、ついにこの日が来たか…と思った。
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