私だけが、あなただと知っていても…

秋風 爽籟

文字の大きさ
29 / 31

3章 8話 元のこと

しおりを挟む
運動会の前日、保育園に行くと…

元はもう来ていた。



「遅くなってすみません…」



「いえ、僕もさっき来たばかりですよ」



元は、そう言いながら…

手を止めず…テントを組み立てていた。



「私は、何をしたらいいんですかね?」



「じゃ、一緒に組み立てをしましょう」



二人は、無言でしていたが…

作業に慣れた頃…



「今日は、お子さんはどうしてるんですか?」



と、元が聞いてきた。



「あっ、実家で見て貰ってます。うちは母子家庭なんで…」



「えっ、そうなんですか…うちも父子家庭なんで…実家に見て貰ってます…」



恥かしそうに、元は言った…



「そうだったんですね…奇遇ですね…っていうのも変ですね…」



「はははっ、梓さんって面白いですね」



「良く言われます…天然だって」



「そうなんですね。でもいつも息子さんと楽しそうだなって見てました」



「笑ってたいと思うんです…息子には、悲しい思いをさせたくないから…」



「そうですね。僕も見習わないと…」



そうこうしているうちに、準備も終わり…



「今日は、この辺りで…では、また明日もお願いします」



先生がそう言って…お開きとなった。



「じゃ、また明日…」



「また、明日…」





梓は、少し元に近付けたような気がした…

元は、シングルだったんだ…

良かった…

ん?良かった?

もしかしたら…恋人がいるかもしれないじゃん…

浮かれてる場合じゃなかった。



運動会当日…

保育園でも、元を見かけた…

狭い園庭での運動会…

元と目を合わしてしまう。



運動会には、両親が見に来てくれた。

光が走る姿…何度見ても感動してしまう…



無事に運動会も終わり…



「光、今日は頑張ったね。偉かったよ。お母さん、運動会の片づけがあるから…じいじの家で待っててね」



「うん!」



元も、お母さんに湊くんを預けている様子だった。



先生も一緒に、片づけをする…

普段はあまり見ない、お父さんたちも手伝ってくれて…

案外、早く終わってしまった…



「じゃ、帰りますか?」



そう、元に言った。

すると…



「梓さん、良かったらご飯でも食べに行きませんか?ダメですかね?」



元が、そう言ってくれた。



「全然、大丈夫です。行きましょう」



梓は、すぐ母に



―――ママ友とランチに行くことになったから、光のことお願いします



って、送っておいた。



「どこに行きますかね?僕、こういうの疎くて…」



「じゃ、駅前のファミレスに行きますか…」



「そうしましょう」



ファミレスに向かいながら…

お互いの子どもの話をした。



―――湊のことが聞けて、嬉しい



ファミレスに着いたけど、結構混んでいて…

並んでる間に、聞いてみた。



「元さんは、何歳ですか?」



「僕は、32歳です」



「年上なんですね。私は29歳です」



そうか…今度の元は年上なんだ…



そうしていると、名前を呼ばれて…

席に着いた…



「梓さん、何にしますか?」



梓は、優柔不断だ…

メニューを何度も見る…



「ごめんなさい…なかなか決められなくて…」



「全然いいですよ。ゆっくり決めて下さい」



一生懸命にメニューを見る梓を見て

元が、クスッと笑った…



「いや、本当に決められなくて…」



「構いませんよ…」



「よし!私、これにします」



「はい」



元が、さっとボタンを押し…

店員さんに、注文してくれた。



「聞いてもいいですか?」



元が、真面目な顔で言った…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴方の幸せの為ならば

缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。 いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。 後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから

えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。 ※他サイトに自立も掲載しております 21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

欲しいものが手に入らないお話

奏穏朔良
恋愛
いつだって私が欲しいと望むものは手に入らなかった。

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

犠牲の恋

詩織
恋愛
私を大事にすると言ってくれた人は…、ずっと信じて待ってたのに… しかも私は悪女と噂されるように…

処理中です...