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しおりを挟む私、リリアナ・クルホワイトはトゥーリンドという小国の子爵令嬢です。 が、今は家を出て隣国の寄宿学校に通っています。
それは、小さな国に留まらず見聞を広げてほしい、という両親の……建前で、大きな国で良い家柄の男を捕まえて来い、というのが本音でしょう。
13歳で家を出てはや3年、お父様、お母様……
「――ごめんなさい……!」
そういった男性はまだ居ません。
まあ? 薄らとなら居なくも―――すみません、見栄を張りました、影も形もございません。 もう16なのに……。
かと言って、学校の男の子達とは結構仲良くしています。 ただその、こっちで出来た親友の女の子、フランカと遊ぶのがとても楽しくて……。 でも、
―――向こうは婚約者居るんですけどね。
「他国の人間というアウェイが……きっとそれがいけないのよ!」
こんな苦しい言い訳、普段の私ならしないけど……。
何故私がこんなに追い詰められているかというと、それは妹から送られてきた手紙を読んだから。
私と同様に13歳から他国の学校に飛ばされた双子の妹、エルマからの手紙にはこう書いてあった。
寮の女の子達と毎日楽しくやっていて、最近では近くの貴族達が通う男子校の生徒達と仲良くなったと。 週末はその男の子達の邸でパーティー三昧、その中の一人と良い感じらしい。 それも相手は大公侯爵の令息ですって。
………あはっ、あははははっ!
「――女子校に負けた……ッ!こっちは共学なのに……」
顔も身体も、声までそっくりな双子の姉妹なのに何故こんな差が……!
「……でも」
良かった、かな? 少し心配していたの。 エルマは我儘な所があるから、周りと上手く付き合っていけるのかって。
言っておきますが、これは断じて負け惜しみではありません。 だって、あの子の我儘の一因は私にもあると思うから。
――とはいえッ!
『もうすぐ婚約者を家に連れていけるかも、姉さんの先を越してごめんねっ』
これは……
「さすがに凹むわね……」
――ま、いっか。 私は私で今の生活を楽しんでるし、焦る事もないしね。
そして、冬の休暇で実家に戻った私は、久しぶりに妹と再会したのだった。
◆◇◆
「それでね、レオーネはパーティーで他の男の子が私に話しかけるとすぐ不機嫌になるのっ」
「うんうん、そうかぁ。 いや~、まさか大公侯爵の令息を捕まえてくるとは! さすがエルマは私の娘だな!」
「何言ってるんです、あなたじゃなくて美人な私に似たからよっ」
「ははっ、こりゃ母さんに手柄を譲った方が良さそうだっ!」
……お父様、お母様、これは見聞を広げる為でしたよね? 建前とは知ってましたが露骨過ぎません?
「それで、リリアナの方はどうなんだ?」
「そうね、やっぱり本国では得られない大国の学ぶべき所を感じるし……」
「――そうか、そりゃ良かった。 で、エルマ、そのレオーネ君はカッコイイのか!?」
「もちろんっ! まるで絵本の王子様が飛び出してきたみたいに美形なの!」
――こら、見聞は興味無しか。
その夜、久しぶりにエルマと並んだベッドに入って話していると、
「ふぅん、姉さんも楽しそうにやってるんだね、婚約者は見つからなくても」
「まぁね」
ひと言余計よ。
「じゃあさ、しばらく学校交換しない?」
「――は? どういうこと?」
「だから、私が姉さんの学校に行って、姉さんは私の学校に通うの」
……この子、何言ってんの。
「私達そっくりだからバレないって!」
「そういう問題じゃないでしょ? 大体私の方が髪長いし……」
「そんなの切ればいいじゃない」
「っ……」
ふざけるな、と言ってやりたい所だけど、実は私にはエルマの我儘をきいてやる負い目がある。 だから今回もまた、断りきれずにこの意味不明な提案に乗ってやらなければならなかった。
大体好きな人と良い感じなら、何でこんな離れ離れになるような事を言い出したのか。 妹の考える事はホントよく分からない。
「じゃ、決まりね!」
「……はぁ」
それがわかったのは、妹のエルマとして女子寮に行ってからだった。
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